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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十五、【サマーライブ】
117/134

117話


 ▽


 爆発が起こったような大歓声に、私ははっと我に返った。


 鳴り止まない拍手と声援に、曲を歌い終えてしまったことに気付く。


 頭が真っ白でなにも考えられない。


 ただ分かることは、観客の放つとてつもない熱と、隣で沢里がボロボロと涙を零していることだけだった。


 また泣いてる。そう言おうとした瞬間、沢里にがしりと肩を組まれ、そのまま一緒にお辞儀をさせられた。


 そうだ、歌い終わったなら舞台からはけなければ。


「リンカーーー!!」


「ハルーーー!!」


 名残を惜しむかのような呼びかけにゆるゆると手を振って、私たちは舞台裏へと下がった。


「ちゃんと、歌えた、よね?」


 ぽつりと自分自身に問いかける。しまったと思った。途中から周りが見えていなかった。沢里だけを頼りに歌っていた。でもミスはなかったはずだ、そう無理やり納得する。


 体が熱い。終わってしまった。息苦しい。最後まで歌えた。


 沢里と一緒に。


 ぐるぐると巡る思考とともに目頭が熱くなってくる。


 沢里は腰に手を当て上を向きながらまだ泣いている。


 さすがに泣きすぎではないかと思い顔を覗き込むと、そのままその大きな体に抱き込まれてしまった。沢里の体も熱い。全力疾走した後のように心臓が跳ねているのが分かる。


「ありがとうリンカ、俺と歌ってくれて。リンカがいるから俺は本当の自分でいられる。ただの沢里初春として歌えるんだ」


 熱い体と穏やかな声に包まれて、とうとう私の両目からも涙が流れた。


「こちらこそありがとう。私に、人と歌う幸せを思い出させてくれて」


 沢里の大きな体をぎゅっと抱きしめ返す。暑くて仕方がないけれど、どうしようもない多幸感にただ身を任せる。


 二人で馬鹿みたいに泣いて、しばらくして恥ずかしくなって、肩を並べて舞台裏から逃げるように立ち去った。


 私たちは歌い切った。全力で。


 後悔はない。


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