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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十五、【サマーライブ】
116/134

第116話


「続いては今回の目玉! 高校生ゲスト【linK & haru.】!」


 わっと沸き上がる歓声に引っ張られるようにステージに上がる。まず目に入ったのは、目の前に広がる人の海。思わず呼吸を忘れるくらいに熱く盛り上がっている。


 暑い、熱い。腹の底に響くような観客の声と、突き刺さる視線が心地よい。隣に立つ沢里を見ると、頬を染め早くも感極まった表情をしていた。


 招待席を見ると、タオルを振り回す義父とカメラを構える透流さん、そしてじっとこちらを見つめている母の姿を見ることができた。


 そして中学時代の部活の同期の姿も視界に入る。途中まで仲のよかった五人だ。その表情はどこか硬く、無意識に私の体も緊張で軋む。


「凛夏ーーー!!」


 そんな時に聞こえてしまった大絶叫。ふとそちらを見ると顔を真っ赤にした土井ちゃんが宣言どおりとびきりの変顔をしてくれている。


 危ない、この場でなかったら爆笑しているところだった。


 そしていい感じに緊張が解けた私は、沢里に目配せをしてマイクを取った。


 【linK】として、そして私として初めて、観客に、そしてリスナーに語りかける。


「皆さんはじめまして。【linK & haru.】です。


 いつもネットで応援してくれてありがとうございます。


 今日初めて皆さんの前に姿を見せたのは、私たちがどんなに音楽を愛していて、


 どんなに歌うことが好きかを知ってもらいたいと思ったからです。


 今から歌う曲は、初めて【haru.】と一緒に歌った曲で、私にとって特別な歌です。


 それでは聴いてください。


『本当の自分』」


 沢里のギターの音で、会場が静まり返る。コードに歌を乗せて、今、私たちは本当の自分に戻る。


 音楽が好き。


 歌が好き。


 誰にどんな目で見られようとも、自分の気持ちを抑えられない。


『【linK】が本当の私なんだと思う』


『どっちも同じリンカだから』


 キーボードは軽やかに鳴り響き、ギターも楽しげに弾んだ音を出していた。


 確かに演奏しているのに、時間が止まってしまったかのような気分になる。


 本番の最中なのに、まるで練習室で二人きりで歌っているよう。


 沢里と二人、ただ声を合わせる。沢里の視線と呼吸を感じながら歌う。


 脳裏に浮かぶのは今日までの思い出たち。


 そのほとんどが沢里に埋めつくされている。


 沢里の声をずっと聴いていたい。


『一緒に歌いたい』


『私と一緒に歌ってほしい』


 このまま時間が止まればいいのに。






「がんばれ、凛夏!」





 どこかから、懐かしい父の声が聞こえた気がした。


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