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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十五、【サマーライブ】
115/134

115話


 ▽


「さあ今年も夏を迎えるためのステージが始まります! Sawa Sonicここに開幕―!」


 司会者のスタート宣言にわっと歓声が上がる。私たちは控え室に残ってスマホで中継を観ながら、会場の人の多さに圧倒されていた。


「すごい……! こんなに人が集まるんだね」


「ああ、いよいよ始まりだ!」


 司会者のあいさつもそこそこに、早速一番目の演奏者が舞台に上がる。


 ハイテンポな曲が響き渡り、ただひたすらに会場の熱気が伝わってきた。


 控え室で待機するアーティストたちもどこかテンションが上がっている気がする。


 もう一度スマホに目を落とし、客席を注視する。チケットを渡した人たちは、前の方の招待席に座っているはずだ。残念ながら中継では確認できないが、誘った全員がそこに座っていることを信じたい。


 祈るように手を合わせ、その時を待つ。沢里はイヤホンをしてひたすらに音を確認している。名前を呼ばれるまで心を平静に保つのは難しいし、その方法は人それぞれだ。


 時々体が固まらないように肩をたたき合ったり、軽くストレッチをする。


 合唱部の仲間とも本番前によくやっていた。思い出すのは全国の舞台、悪夢の始まりの日。


「リンカ? 顔怖いぞ」


 沢里に突っ込まれ、私は慌てて顔を揉む。


 今は昔とは違う、沢里が居てくれるのだから。いくらあの時を思い出そうが、絶好調の私たちはもう止まらない。


「大丈夫か?」


「驚くほど大丈夫」


 悪夢の終わりはあっけない。自分でも醒めたことに気が付かないくらいに。いつの間にか悪夢は沢里と一緒に見る夢にかき消されてしまった。


「長い夢だったな」


 私の呟きに沢里は首を傾げていた。


 何組かが歌い終えた頃、太陽は真上に位置してさんさんと光を降らせていた。私と沢里は目と目を合わせて頷く。


「【linK & haru.】、スタンバイお願いします」


 スタッフの声に返事をして、舞台裏へと向かう。


 その際に柾輝くんがそっと席を外すのが見えた。きっと客席側から見守ってくれるのだろう。


「よし、行こう」


「ああ!」


 沢里と拳を合わせて、静かに息を吸う。


 ついにここまで来た。


 絶対にできないと思っていた。


 もう二人なら何も怖くない。


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