114話
「は、はい。あなたがMasakiさん……ですよね。【linK】のコーラスをしていた」
「あ? まあそう言われたらそうだな」
「あのっ俺、Masakiさんに負けないくらい【linK】のことを支えますから!」
沢里の突然の宣言に柾輝くんと一緒にぽかんとしてしまう。
「き、急にどうしたの沢里?」
「宣戦布告?」とヒョウ柄さんに突っ込まれると、沢里ははっと我に返ったようで、「生意気言ってすんませんっ」と頭を下げた。
「でも俺本気っす!」
「ほんとどうしちゃったのよ沢里……」
ゴールデンレトリバーがオオカミに挑もうとしているようにしか見えない。
コーラスのことで柾輝くんと張り合っているのならお門違いだ。沢里はもう私のコーラスではなく、隣に立ちともに主旋律を歌う相棒なのだから。
そう言おうとすると、なにかを察した様子の柾輝くんが私たちの頭にぽんと手を乗せて言った。
「【linK】、【haru.】。お前らのステージ楽しみにしてる」
「はい!」
「あ、うん。お互い頑張ろうね」
【モルフォ】がサワソニに出演するなら、きっと義父も喜ぶに違いない。そして、母は柾輝くんのバンドを初めて見ることになる。最近の母の様子から、怒って帰ってしまうなんてことはないだろうが少し心配ではある。
奇しくも同じステージに息子と娘が立つことになろうとは。天国の父も考えていなかっただろう。
離れていく柾輝くんの背中を眺めていると、隣から沢里の咳払いが聞こえてきた。
「喉の調子おかしい?」そう聞くと複雑そうな顔をされてしまったので、とりあえずのど飴を与えておこうと思う。




