113話
まさか柾輝くんもサワソニの出演者だったなんて。そういえばライブのスケジュールなどは全て沢里にまかせっきりだったので、私は他の出演者を知らない。
そして私たちはsawaさんのゲスト枠なので、柾輝くんも知りえなかったというわけだ。
私は自分の顔が喜びで緩んでいくのを感じていた。
柾輝くんと同じ舞台に立てる。柾輝くんに私たちの生演奏を聴いてもらえる。
そんなの興奮せざるをえない。一度諦めたがやはり嬉しいものは嬉しい。
「いやいやいや、んな嬉しそうな顔すんな! 大体なんでお前がサワソニに出れるんだよ!? 俺たちだってインディーズの選抜に選ばれてようやく今年初めて出れるってのに!」
「それはsawaさんに出ろって言われたから……」
「エッ!?」
ピシリと石化する柾輝くんの代わりにモヒカンさんが口を開く。
「じゃああなたたちが今日のゲスト?」
「はい、そうです」と沢里が答えると、柾輝くんたちは驚いて顔を見合わせた。
「じゃあMVP狙っちゃったりするの? だったらライバルね」
「MVP?」
首を傾げると柾輝くんが呆れたように説明してくれる。
「今日の出演者の中からMVPに選ばれたアーティストはsawaさんにプロデュースしてもらえるんだよ」
「そうなんだ」
「そうなんだってお前……」
がっくりと肩を落とす柾輝くんの背をお仲間がぽんぽんと叩いている。そんな反応をされても知らなかったものは知らなかったのだから仕方がない。
それにしても嬉しい。胸が躍る、ワクワクする。柾輝くんの歌を聴ける、沢里と一緒に歌う姿を、一歩踏み出した私の歌を聴いてもらえるのだ。
ふと柾輝くんの目が私の後ろでじっと黙っている沢里を捉えた。そういえば沢里をほったらかしにしていた。はっとして沢里の腕を取り、柾輝くんの前に連れ出す。
「あ、紹介するね。こっちが……」
「お前が【haru.】か」
柾輝くんの問いに沢里は神妙な顔で頷く。




