111話
「よろしくお願いします!」
忙しなく動いているスタッフさんにあいさつし、指示どおりの場所で声を出す。
私も沢里も普段と同じ声を出せている。このまま楽器と合わせることができれば大丈夫だ。指は散々車の中で動かしてきたので温まっている。
そうこうしているうちにリハーサルを始めると言われ、私たちはすぐに舞台裏に移動した。
「緊張してる?」
「考えてる暇ないかも」
「当日ってこんなに忙しいんだな」
薄暗い舞台裏に着いてすぐに入場と退場の段取りを教わり、すぐにマイクテストが始まる。
二人縦に並んで、合図とともにステージへと駆け上がった。
ぱっと開けた視界には、どこまでも青い空が映る。観客のいないだだっ広い空間には、数人のライブスタッフが話し合いながらこちらを確認していた。
本番はこの会場いっぱいの人に見られながら歌うのだ。
思わず沢里の方を見ると、妙に硬い表情をしているものだからこちらも焦ってしまう。
「じゃあ二人とも音出してー」
その指示に従ってギターとキーボードを鳴らす。
屋外では音の聞こえ方がいつもと異なる。このリハーサルでそれを把握して、本番に繋げなければならない。
私たちは楽器の確認をしながら無事に一曲歌い、リハーサルを終えた。
「よし、歌えるな!」
「うん。大丈夫そう、調子いいよ。沢里は?」
「バッチリ問題ない。指も動くし」
あっという間のリハーサルだったが、とりあえず今のところ主だった問題はなさそうだ。硬かった沢里の表情も歌い終わると和らいだ。自分の調子がいいと分かって安心したのかもしれない。
ひとまず安堵し控え室の扉を開けると、他の出演者たちが集まり始めていた。中にはテレビで見たことのあるグループもいて、私はごくりと息を飲む。
やけに注目を集めているのは制服のせいかもしれない。どう考えてもこの中に高校生は私たちしかいない。




