第11話
「だから違うって言ってるじゃん!」
「っ……じゃあ! 【linK】じゃないっていうならクラスの皆に言ってもいいよな?」
「え?」
「ほくろのこと」
ぎくりと肩が跳ねた。
ほくろの位置は誤魔化せない。よく見たら誰にだって分かってしまう。
ふと土井ちゃんの顔が脳裏によぎる。きっと嫌われる、がっかりされる。
嫌なイメージに思わず片手で小指を覆うと、それに気付いた沢里はしょんぼりと眉を下げた。
「ごめん、脅すつもりじゃなかった。でも本当のことを教えてほしい。……【linK】、だよな?」
こちらの顔色を伺うように問われる。
私はしばらく呼吸を止め、大きく息を吐いた。もう認めざるを得ない。
「……だったらなんなの」
「一緒に歌いたい」
思いもよらずストレートな頼み事に呆気にとられる。
ユニットだのコーラスだのは意味が分からなかったが、彼の望みをようやく理解した。
けれど私の心は動かない。
「嫌よ」
「ええっ!!」
「私はもう誰とも歌わない」
「もう……ってことは前に誰かと歌ってたのか?」
「う」
思い切り断ったはずがカウンターをくらう。
「関係ないでしょ。ほくろのことは……言いたいなら言えばいい」
「【linK】、」
そう突き放すと捨てられた子犬のような目をする。
私は確信した。この人はほくろのことは言わない。そういうことができない人だと。
そのまま黙って教室を出ると「俺は諦めないから!」なんで声が聞こえてきた。
多分今日は運勢最悪の日だったんだろう。
トン、トン、トン、
頭の中でリズムが鳴る。
それは扉を叩く音に似ていた。




