108話
「あーおかしい! だって私たち、同じことしてるんだもん。私も沢里の前の学校の人ライブに呼んじゃった! 勝手にごめん!!」
「ええっ!?!?」
今度は沢里が目を白黒させる番だ。
それは沢里がいない隙を狙って、沢里のお母さんに会いに行った日。
沢里には内緒で前の学校の音楽コースの人に連絡を取れないか相談したのだ。
すると沢里のお母さんが音楽コースの先生に連絡を取ってくれて、無事にチケットを五枚送ることに成功した。
「マジ?」
「マジ。どうしても沢里の姿を見てもらいたくて。だからおあいこだね」
私たちは顔を見合わせて、同時に吹き出した。
二人で涙が出るほどけらけら笑って、笑いすぎて苦しくなって、練習室の床に転がった。
「はー、まあチケット渡したってだけで、本当に来てくれるかは分からないけど」
「ああ、それはこっちもそうだ。いや、でも、なんだよもー! 絶対怒られると思ってたからギリギリまで黙ってたのに!」
「私も今日言おうと思ってたんだよ。これだけ一緒に歌ってたら考えることも似てくるのかな」
「じゃあ俺が今考えてること分かる?」
沢里はむくりと上半身を起こして問う。
「んー、ライブが終わった後のこと考えてる」
「あたり」
降参とでも言うようにお手上げする沢里。明日のライブを終えたら。気が早いとは思うが私も考えている。
もう【linK】として顔を出して歌うことにためらいはない。あれほど中学の時の仲間に【linK】であることを知られたくなかったのに、もうどうでもよくなってしまった。
毎日のように罪悪感に苛まれ、誰かと歌うことすらできなかった自分はもういない。
沢里の隣で歌うことが私のなにより大切なこと。
明日が終わって一緒に歌う理由がなくなっても、きっと歌が私たちを繋ぐ。
「なにも心配いらないよ。一緒に歌おう」
「――リンカは不思議だな」
「え?」
「俺を歌わせるために、神さまが出会わせてくれたみたいだ」
それはこちらの台詞だ。きっと私の方が先に沢里のことをそう思っていた。
沢里の幸せそうな笑顔を見ていると、自分の気持ちが分からなくなる。
明日が早く来てほしいのに、まだもう少しだけ、このままでいたいと思うなんて。
「ライブが終わったら俺たちどうしてるんだろう」
「さあ、どうせ歌ってるよ。だって私たちだもん」




