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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十四、【シンキング・アバウト・ユー】
107/134

107話


 ▽


「いよいよ明日だね」


「なんか長かったような短かったような」


「密度は濃かったよね。絶対に無理だと思ってたのに、沢里と一緒に歌えるようになったんだから」


「それなー」


 放課後の練習室。沢里と二人で根詰めて歌うのもこれで最後かもしれない。感慨にふけりながら明日への意気込みを口にして気合いを入れる。


「私、腹くくった。本番なにがあっても歌い切る。沢里は?」


「俺ももちろん、全力を尽くす。リンカの隣で歌うのにリンカに恥かかせるわけにいかないからな」


「まだそんなこと言ってるの? もし失敗しても恥なんて思わないし、カバーし合えばいいんだよ」


「そうだなあ」


 沢里はそう言って目を閉じ、しばらく黙ってしまう。集中しているのかもしれないと思い見守っていると、ふと声をかけられる。


「なあリンカ、腹くくったんだよな?」


「ん? うん」


「なにがあっても歌い切るんだよな?」


「うん。なによ急に」


 目を開けた沢里はやけに真剣な表情でこちらを見つめる。私もつられて口を引き結ぶ。


「なら、今のうちに言っておく。明日のライブ、お前の中学時代の部活仲間にチケット渡してある」


「え……」


 ぱんっと両手を合わせて頭を下げる沢里。


「勝手なことして悪かった! でも、どうしても今のリンカの姿を見てほしかったんだ。お前は呼ばないって言うから、俺が――」


「ち、ちょっと待って! チケット渡したって、一体どうやって!?」


 突然のことに頭が追いつかない。沢里が私の中学時代の同級生と簡単に接触できるとは思えないからだ。


「リンカのお父さんに手伝ってもらって……」


「お、おとうさんに?」


 聞くと串カツを食べに行ったあの日、ちゃっかりSNSのIDを交換していたらしい。


 義父の協力の下、中学の部活の顧問を通してチケットを渡してもらったのだと言う。


 開いた口が塞がらないとはこのことだ。悪いことをした時の犬みたいに身を縮こませている沢里を見て、私は急におかしくなって笑ってしまった。


 偶然にも、お互い考えることは同じだったのだ。


「ふ、あはははっ」


 急に笑い出した私を怪訝な目で見る沢里に、息も切れ切れに説明する。


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