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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十四、【シンキング・アバウト・ユー】
105/134

105話


 ▽


 家で一人、母の作った夕食を黙々と食べる。その時間は家族のことを考えることが多い。


 ポテトサラダのじゃがいもは粗めに潰した方が好き。

 母の作る料理で一番おいしいと思う。


 小さい頃よく食卓に並んだ素朴な小鉢。柾輝くんの嫌いなミニトマトを食べてあげたら、それを見た母が怒って柾輝くんの口にミニトマトを突っ込んでいた記憶。


 母はもう忘れてしまったのだろうか。


 懐かしい味のポテトサラダを口に入れ、ふと考える。


 家族にはもうライブのチケットを渡した。柾輝くんは残念ながら予定が合わなかったけれど、義父、母、透流さんは招待しようと思っていた。


 義父は「野外ライブなんて久しぶりだよ」と言ってにこにこしながら受け取ってくれた。


 透流さんには「息もれが治ったか確認させてもらおう」なんて言われてしまったが、観に来てくれるようでよかった。


 問題は母の反応だ。義父と透流さんがチケットを受け取るのを見て、同じように受け取ったまではよかったのだが。


「そう……」


 たったそれだけ言い残して自室に閉じこもってしまった。


 前は好きにしろと言ったじゃないか。私はそのそっけなさに驚きを通り越して怒りを覚え、拳を震わせて母に突撃しようとしたが、あえなく義父に止められてしまった。


「大丈夫、ライブには必ず連れて行くから。そっとしておこう」


 そう優しく諭されては私も引き下がるしかなかった。


 父の弾くギターを聞きながら幸せそうに笑っていた母は、どうしたら戻ってきてくれるのだろう。


 私は知っている。母が部屋で時々父の歌を聴いていることを。売れない歌手だった父が出したCDを、繰り返し。


 母は音楽が嫌いではないはずだ。柾輝くんと大喧嘩をして、後に引けなくなってしまっただけに違いない。


 過去の母と柾輝くんの争いを知っているからこそ、母には私たちが音楽を愛していることを認めてほしい。


 ライブで歌っている姿を見れば少しは分かってくれるのだろうか。


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