第102話
すっかり濡れねずみになってしまった私は土井ちゃんの家で着替えを貸してもらい、暖かいココアまでごちそうになっている。土井ちゃんはスマホで【linK】の曲を流し、この歌詞がどうのここの音がどうのと語っていて、私は自分がどれだけ幸せ者であるかを噛みしめた。
その後私はぽつりぽつりと【linK】のことと、家のこと、過去のことを語った。土井ちゃんはそれを黙って聞いてくれた。
そして沢里のことを話すと急に天を仰いで頭を抱えてしまったのでドキリとする。
「あー悔しい! 沢里も気付いてたんだ! しかも沢里が【haru.】って……もしかして放課後二人でしょっちゅう消えてたのは曲作ってたから?」
「ご、ごめん」
「あーもう許す! だって、新曲めちゃくちゃよかったもん。でも急にどうして教えてくれる気になったの?」
「あっそうだった! あのね、今度ライブに出るの。土井ちゃんをどうしても呼びたくて、でもその前に黙ってたことを謝りたくて」
「ライブ?」
サワソニのことを説明すると「毎年やってるフェスじゃん! すごいね!」と無邪気な笑顔で返される。私はまた泣きそうになって、ココアで温まった顔をカーディガンの袖で隠して誤魔化した。
土井ちゃんには二枚のチケットを渡す。元々土井ちゃんの分として確保していたものと、柾輝くんの分だ。
「一人じゃ寂しいかもしれないから、誰か音楽好きな人がいたら一緒に来て」
「分かった!」
土井ちゃんの笑顔に心がすっと軽くなったのを感じた。私はなにをためらっていたのだろう。土井ちゃんは中学時代の仲間とは違い、ちゃんと私の声を聞いてくれる人だと分かっていたのに。
「めっちゃ楽しみ! 応援してるからね」
「ありがとう。土井ちゃんは私の大切な親友だよ」
「へへっ。なにさ急に。私も凛夏が大切だよ」
顔を見合わせて笑い合う。ふと窓の外を見ると、雨はもう上がっていた。




