第101話
「ちょっとちょっと、びしょぬれじゃん! 水浴びにはまだ早いって!」
冷えて震える唇を無理やり開く。駆け寄って傘に入れてくれる土井ちゃんの腕をぎゅうと握り、私は息を吐いた。
「私が【linK】なの」
呆れるほどそのままの言葉が震える息にのる。
伝えることとその順序を散々考えたというのに、現実は思うようにいかない。
「黙っててごめんなさい……」
縋るように土井ちゃんの腕を掴み、顔を伏せる。濡れた髪から落ちる雫が頬を伝って、そのまま首元に消えた。土井ちゃんの傘が水を弾くリズムと地面を打つ雨音が踊る。
いつまでそうしていただろう。長く感じるがほんの一瞬かもしれない。土井ちゃんはそんな空白の後にゆっくりと口を開いた。
「うん、知ってた」
「え……」
「そうじゃないかなと思ってた」
予想だにしない返答に私は顔を上げて目を剥く。土井ちゃんは腕を掴む私の手を外し、そのまま私の小指のほくろをそっと撫でた。
「あ……」
「そうだったらいいなと思ってた」
そう言って目尻を下げて笑う私の親友は、最初から全てお見通しだったのだ。ぶわりと視界がにじむ。
「怒らないの? ずっと黙ってて、土井ちゃんが【linK】のこと話してるのをニヤニヤしながら聞いてたんだよ?」
「【linK】のことが好きで、凛夏のことも大好きだから怒らないよ。でも私から【linK】なの? って聞くのはなんか違うなと思って。だから、言ってくれてありがとう」
「土井ちゃん……!!」
涙が雨と混ざって頬を濡らす。困ったように笑う親友は片手を私の背に回す。
一本の傘の下で、私たちは雨に濡れないようにぎゅっと抱きしめあった。




