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WORLD 光ノ書  作者: PEN
9/53

少女の依頼

 朝、騒がしい音でユリスは目を覚ました。

 その音を聞きユリスは部屋を出て食堂を見下ろす。

 そこにはレイラが慌てて仕事をしている所だった。

 

 ユリスは中央にある螺旋階段をおりレイラに話しかけた。

 「手伝うよ 何すればいい?」

 「あっユリスさん、いえ大丈夫です。

 少し寝坊しちゃって」

 少女は頭に寝癖をつけたまま無邪気な笑顔を返した。

 ユリスはテーブルにおいてある布を取りテーブルを拭き始める。

 「ああ、大丈夫ですから」

 「手伝わせて、私こういう事はよくやってたから」

 ユリスはそう言い作業を進めた。

 

 「それじゃあお願いします」

 レイラは根負けしたようで厨房へと入っていった。

 ユリスはテーブルを拭き終わると他にやる事は無いかと厨房へと向かう事にする。

 

 そこではレイラが台に届くように木の空箱を足場にして火を扱い、炒め物をしていた。

 「何これ?」

 ユリスは厨房にある焼き場を不思議そうに見る。

 焚火を家の中で…

 炎が出るところはまるで中華鍋のように丸く沈んでおりその中に数個赤い小さな石が置いてある。

 これはフィアナが使っていたものだ。

 レイラがユリスを見てあまりにも不思議そうに見ていたので笑った。

 「ああ、これですか? これは魔石ですよ 見た事無いですか?」

 レイラはそのうちの一個を取り出し軽く台で叩き火のついていない釜の場所に投げ入れた。

 するとたちまち炎が現れメラメラと燃えだす。

 「すごい」

 レイラはクスリと笑顔をこぼしながら炒めものを再開する。

 

 すると戸口から誰かが入ってくるベルが聞こえた。

 どうやら人が来たらしい。

 「あっ」

 ユリスはレイラが握っていたフライパンを掴んだ。

 「私がやっておくから行っておいで」

 レイラはその後、少し戸惑っているのかユリスをじっと見つめてから、頷いた。

 「うん、ありがと」

 レイラは笑顔で木の台から元気に飛びおり店の食事場に向かった。

 「今日もありがとうございます。

 もう少しでできるので少しお待ちください」

 「いいよ、ゆっくりで」

 食事場から声が聞こえた、この声はどうやらフットが来たらしい。

 

 さらに料理の匂いを嗅ぎつけてか上から数人の足音が聞こえた。

 「よう、レイナちゃんおはよ」

 この声はべスターの声だ、キャラバンの人達もこの宿に止まっていたらしい。

 レイナがまた慌てた様子で厨房に入ってきて皿を取りユリスの横においた。

 「ここでいい? 母さ…あっ、いいですか?ユリスさん」

 ユリスが見るとお皿を眺め、なんだか嬉しそうに笑っているレイラの姿がそこにあった。

 その料理を盛り付けユリスとレイナは一緒になって料理を運んだ。

 「ユリスさんもいたのか。

 こう並ぶとまるで親子だ」

 べスターはおかしそうに笑い、食べ物が運ばれると美味しそうだと手をこすり、食べ始めた。

 フットはユリスに軽く手を上げたどうやら挨拶のつもりらしい。

 

 他のキャラバンの人達含む全員が食べ終わったあと、ユリスとレイラの二人は食器を厨房へと運び、ユリスが食器を洗いレイラが水を拭き取り棚へと皿を片付けていた。

 「あの…ユリスさんお願いがあるんですけど」

 レイラが棚に目をやり背を向けたまま言った。

 「なに?」

 それにユリスは優しく返事を返す。

 「今日、一緒に隣の村まで来てくれませんか?…お金は払います」

 「お金は無くてもいいよ」

 ユリスは最後の食器を置き手を拭くとレイラの頭をなでた。

 ……

 

 ユリスは門の前でセアムに荷車をフットとに手伝ってもらいながら一緒につけていた。

 「これでいいだろ、しかしこんな馬車は見たことがないな」

 フットはセアムと荷車を見た。

 門の前にはユリス達の他にも壊れたキャラバンがありその周りを大きな二頭の動物が草を食べている。

 準備が終わりキャラバンの生き物を見ていると足元の方から声が聞こえた。

 「すいませんお待たせしました」

 見るとレイラが慌てた様子で走って来てペコリとユリスの前で頭を下げていた。

 …

 「あーそうだ、ついでで悪いんだが木の板も頼む、キャラバンの修理を頼まれててな。

 それと宿の留守番は任しとけ」

 とフットがセアムをポンポン叩きながらレイラとユリスに向かって言った。

 「わかった」

 「わかりました」

 ユリスとレイラが一緒に答え、その後ユリスはレイラを持ち上げ荷台に乗せる。

 「ふわっ、一人でも大丈夫ですから」

 断っていたがどこか嬉しそうにレイラの声は高く聞こえた。

 レイラを乗せユリスはセアムの背にサッと飛び乗った。

 「行こう、セアム!」

 セアムはオオーんと遠吠えをし速度を少しずつ上げながら走り出す。

 「嬢ちゃんレイラを頼んだぞ」

 手を振るフットとナバト村の姿は早くも見えなくなった。

 風が髪や頬にあたって行くのを感じ景色は早々と過ぎていく。

 レイラはひょこっと顔を出し外の景色を眺めた。

 「早い、ほんとに早い」

 レイラは無邪気な笑顔でキラキラと目を輝かせ興奮している様だ。

 ユリスはそれを見て少し笑った。

 普段は隠しているレイラの年相応の反応がようやく見れた気がする。

 「すごいでしょ、これでもまだ遅いくらいだよ。

 セアムが私や荷車を考えず本気を出せばこの三倍くらい出せるかな」

 ユリスがセアムが森の中を走っている姿を思い出しそう付け足し話を続ける。

 「あと、ユリスさんじゃなくてユリスとかお姉ちゃん とかで良いよ」

 「お姉ちゃん…」

 ユリスはレイラの喜んでいる様子の中にほんの少し、どこか寂しさを見たような気がした。

 山と平原の景色を進みつづけ森林を抜ける。

 やがて大きな川が見える場所に出た。

 川は広大でゆっくりと水が流れている、その川には船が浮かびその上では漁師が網を引いている所だ。

 ユリスはこれ程大きな川を見た事が無かった。

 その川を滑るように移動する船はユリスの興味を引くには十分のものだ。

 川を見渡すと下流の方に村が見える。

 村からは何筋かの煙が立ち上り、人が生活している事を語っていた。

 …

 村につくと門は開いており見張りであろう老婆が近づいてきた。

 「変わった馬車だねー…」

 「おばさん!」

 レイラはセアムが止まるや飛び降り、老婆のもとまで走った。

 「おや、レイラちゃんじゃないか」

 飛びつくレイラを優しく抱きしめ頭を撫でる。

 ユリスもまたおりて老婆に近づく。

 老婆はそれに気付き、顔を上げ口を開いた。

 

 「あんたを知ってるよ、金色の髪に大きな狼 あのコボルト共をやってくれた冒険者さんだね…確か名前は…ユリスだったかね」

 ユリスは老婆が自分の事知っているのに少し驚いた。

 「えっ、は…はい多分私の事だと思います」

 ユリスは少し自信がなかったがそう答えた。

 「おばさん、今ユリスお姉ちゃんは私の宿に泊まってくれてるんだよ」

 レイラは誇らしげに胸を張って言った。それに老婆は微笑んでレイラの頭をなでた。

 「そうかい、あんたの噂はそのうち都市のマーレ位には広がるはずさ。

 あのコボルトを倒すために何度も冒険者が来たが全員てんでだめさ。

 と…こんな所で立ち話も何だ、村にはいんな」

 そう言い、老婆は手招きしユリス達を村に入れた。

 ユリスとレイラはその後、老婆の家で昼食を取り、旅の疲れを癒やす事にした。

 出された食事は焼き魚で身がふっくらとしておりとても美味しかった。

 「川から魚が取れるからね新鮮でうまいんだ。

 気に入ってくれたかい」

 老婆は食事が終わったユリス達に向かって話した。

 ユリスはうなずきお礼を言った。

 「うん、美味しかった。

 ありがとう、おばさん」

 レイラもそれにつづいて礼を言い少し話をした後この家を出た。

 レイラは宿の食料品を揃えるため食品が売っている店に入り、

 ユリスはそれを見届けたあとフットの頼みを思い出して木の板が売っている店に向かった。

 木の板を買い、担いでユリスはセアムの荷車まで運び乗せる、そこにはすでに食材が載せられているがレイラの姿はない。

 「セアム、レイラはどこに行ったの?」

 先程の老婆にもらったのか、焼き魚を食べているセアムを見ながらユリスは聞いた。

 セアムは鼻をくいっと向けどこに行ったのかをユリスに教えてくれる。

 「ありがと」

 ユリスはセアムが指した方向に歩いて向かった。

 するとその方角にあった酒場の中から喧騒が聞こえてきた。

 「んだぁ、このガキ俺がこの店で飲み食いして何が悪いってんだ」

 中を見ると顔に傷のある男が小さい少女に向かって怒鳴っているのが見えた。

 「違う、問題はあんたの態度が悪いって言ってるの‼

 ここはあんたの為だけにある店じゃない、あんた一人酔って暴れて恥ずかしくないのかって聞いてる‼」

 レイラだ、レイラは今まで聞いた事もない強い言い方と剣相で男を見ていた。

 その周りでは数人の大人達がオロオロと周りを囲んでいる

 ユリスが男とレイラその間に入ろうとした時

 顔に傷を持つ男に我慢の限界が来たようで拳を振り上げレイラに向けて振り下ろそうとした。

 急ぎユリスは振り下ろされる腕を掴み止めた。

 「子供に、なにしてるの?」

 ユリスの青い瞳は射抜かんと男を凝視しその瞳の中から怒りがひしひしと伝わって来るように感じた。

 「うっ」

 ユリスの手に自然と力が入り男が怯んだ。

 男はもう片方の手でユリスの髪をを掴もうとしたがユリスが男の腕をひねって足を蹴飛ばし男をねじ伏せた。

 「痛え、くそ、女が 離しやがれ」

 ユリスはそれ以上聞きたくないとグイと男の腕を上げ痛みで黙らせた。

 「ユリスお姉ちゃん、私は大丈夫だから」

 あまりに男が痛がるためレイラは慌ててユリスの手に抱きついた。

 ユリスははっとし周りを見た。

 「姉ちゃんこんなやつ相手にする事はないぜ、後は俺らがやっとくからここを離れな」

 近くにいた男が縄を持ってきてそういい顔に傷のある男の腕をユリスの代わりに掴んだ。

 

 ユリスはレイラを外へと連れて行き振り向いた。

 「なんで、あんな危険な事をしたんだ」

 ユリスはレイラに目線を下げてしゃがんで合わし自分でも驚くほど強く言い放ってしまった。

 レイラははっとした表情をした後   両の瞳から涙が溢れ出させユリスに抱きついた。

 「ご…ごめん、ごめんなさい」

 ユリスはレイラの震える両肩に手を置き頬に流れる涙を指で取り、腰に手を回し、絹製のハンカチを取り出して顔を拭いた。

 「本当にレイラが無事で良かった」

 ユリスは微笑みレイラの頭を撫でた。

 そこへ酒場の中から声が聞こえ人が出てきた。

 「おい、姉ちゃんそのへんにしてやってくれ。

 確かに危ない事をしたが間違っちゃいない。

 俺らがやるべきだった事だ」

 そう言いながら出てきた人に顔を向けユリスは聞いた

 「あの人は?」

 「あいつはしばらくここで縛って村から放り出してやるよ」

 そう言い男はユリスだけに聞こえるように小声で続けた。

 「最近顔を出すようになった奴なんだが冒険者ってわけでも無いらしい。どうやら、ヌサルのとこの下っ端らしい」

 ユリスはよくわからなかったが話を合わせて頷いた。

 「そう…あとは任せてもいい?」

 男が頷くのを見てユリスはレイラを抱き上げてセアムのもとに向かった。

 ユリスはレイラと共にセアムの背に乗りレイラを自分の前に座らせた。

 「セアム、お願い」

 セアムは走り出し、もときた道を戻る様に走り出した。

 

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