祝宴
目を覚ますと木の天井があった。
起き上がろうと体を動かそうとした……が、体に走った痛みで起き上がれなかった。
「寝てて大丈夫ですよ」
声のする横を見るとセーラがりんごの皮を向きながら微笑んでいるのが見える。
その手にはおそらくこの前のものだろうは包帯が巻かれていた。
「セーラ…っつう」
腕を伸ばそうとした突如、腕に激痛を感じ手を戻した。
腕を痛くない様に上に曲げて顔を下に向けて見ると、腕には木が添えられ包帯が巻かれている状態となっている。
「ユリスさん、大丈夫ですか!?」
セーラはりんごを持ったままユリスを心配そうに見て顔を近づけた。
「これは?」
ユリスは腕の包帯を見ながら問いかけた。
「それは…」
「包帯と添え木だ、至るところが打撲に骨折、一体どんな無茶をしたらそんな事になるんだ」
その疑問にはセーラの話を遮り、奥から来た男が答えた。
「触るなよ、腕の損傷が酷かったから、以前君に依頼して採取してもらった薬草を塗って固定してある」
入ってきたのはナバト村の医者、メド・ウェルだ。
メドは水の入ったコップを持ち部屋に入ってきた。
「水、飲むかい?」
メドがユリスに聞いた。
それにユリスはうなずく。
水があると分かると急に喉が乾いたのを感じる。
水の入ったコップはセーラの手に渡されセーラがユリスの口元まで運び、ゆっくりと飲ませてくれた。
水が全身に満たされて行くのを感じユリスは生きているという実感に改めて感謝した。
水を一息に飲み終えた時にメドが申し訳なさそうな顔でユリスに向かって話し始めた。
「すまない、私は魔術があまり得意では無くてね。
街に出れば治療できる、腕のいい治療師がいるんだが」
メドはバツが悪そうにユリスから目をそらし棚を見て話を続けた。
「だが、ポーションがある」
そう言い棚から一つの赤い液体の入った丸いフラスコを慎重に取り出した。
「それは?」
「話すよりこうした方が早い」
メドはそのフラスコの蓋をポンっと開け一滴ユリスの腕に垂らした。
すると腕の痛みが引いていく感覚がした。
とても心地がいい。
「すごい」
「ああ、ただガロンがかかる」
ガロンは人達が使っている通貨だ。
「三十エルクつまり三ガロンだ」
ユリスはそれを聞きうつむいた。
まだお金は五エルクしか持っていなかったからだ。
その様子を見てメドはふっと笑った。
「その点は問題ない。
君がこなした依頼の報酬が五十エルクあるからな」
ユリスは顔を上げメドを見た。
「これだ」
そう言うとユリスの寝ているベットの上にジャラジャラと音を鳴らしおいた。
「あいにくガロンは持ち合わせていなかったらしい」
ユリスはポカンとそれを見つめた。
以前こなしたクエストでは銀貨が五枚だけだった。
しかし今回は袋いっぱいに銀貨、エルクが詰まっている。
ユリスは迷うことなくメドを見て頷いた。
「お願いします」
赤色の液体がユリスにかけられた。
すると再びカラダの痛みが不思議と消え去り心地のいい感触が肌を撫でていくのを感じる。
それが、かけ終わるとユリスは手を握り両腕を見て痛みがないことを確認した。
メドは普通に手を握るユリスを見てフラスコの中の残った液体を中で揺らし置いた後、ユリスの包帯を外しだした。
包帯から圧迫感と熱が開放される。
現れた腕は以前と変わっていない。
メドは腕が大丈夫か確認し頷く。
「大丈夫そうだな」
メドはそう言い、ユリスに残りのポーションが入ったフラスコをユリスに渡した。
「もう大丈夫だ」
そう聞きユリスはベットから降り先程貰ったポーションをメドに返した。
「これは皆で使って」
ユリスはセーラの包帯で巻かれた腕を見た。
メドはなら自分が使えと、ポーションの蓋を開け渡した。
セーラはそれを察知しこんな高価な物をと断ったがユリスが決して譲らないと折れ貰う事にし少し腕に掛けた。
ユリスはそれを終えると腕を伸ばす。
まるで錆びついて動きが硬くなった体を久しぶりに動かしているようだ。
体を伸ばすと体から錆が落ちていくように感じる。
ユリスはここで立っているだけではなんだか物足りなくな感じ、窓越しの外を見た。
早く外に出て空気をお腹いっぱいに吸い込みたい。
「二人共ありがとう」
ユリスはメドとセーラに向き感謝を言い
外に向かおうとあるき出した。
「待て、そういえば宿屋のレイラが君にと」
そう言い、メドはベットの柱にかけてある雑に彫られた木の馬を取りユリスに渡しす。
「お守りだそうだ」
ユリスは笑顔でそれを受けとり、それがまるで宝物かのように見つめたあとポッケにしまおうとした。
しかしいつもあるはずの場所にポケットが無い。
「それと、君の装備だがレイラに頼んで宿の部屋に置いてある」
ユリスはそれで気づいた今ユリスの服はセーラが着ていたものだ。
鏡の前に移動しくるりと周り自分を見てみる。
普段来ている軽装備とは違い軽い。
スカートは違和感だったが可愛いと思った。
今のユリスは村の誰が見ても町娘と口を揃えて言うだろう。
「うわぁ」
「すみません今はそれしか無かったもので」
セーラは恥ずかしいような申し訳ないようなですぐに顔をそらす。
「セーラ、私似合ってるかな?」
ユリスはそう微笑んで嬉しそうにセーラに見せた。
そうしてユリスは外への扉を開けた。
直接ユリスの顔に太陽の光がかかりとても眩しく太陽を手で隠した。
ユリスは胸いっぱいに空気を吸い込み再び腕を伸ばした。
ユリスが気持ちよく村の中を歩いているといつもは閑散としている酒場が今日はなぜか賑わっている。
「まさか、あのクエストをこなせる冒険者がこの村に来てくれるなんてな」
中を見ると大きな男の声が聞こえ近づくに連れ更に様々な声が聞こえてきた。
「ははは、それでな、私は思ったんだ。
むちゃだってな。
それがどうだ仲間全員救出、その上コボルトの集落を崩壊だ。
はは…」
「やったのはあの金髪のお嬢ちゃんなんだろ?
俺は最初っから分かってたね、こりゃあただもんじゃあないって」
その喧騒を聞き何事かとユリスは酒場に入ってみた。
すると一人が気づきまた一人と次々ユリスを見てより一層、酒場が騒がしくなった。
「おー噂をすれば英雄様が来た」
「こっちにきなよ」
「いや、こっちに是非話を聞かせてくれや」
酒場の中には門番のフットに続き村の面々があれやこれやと騒ぎ出した。
その中にはキャラバンの一団も加わっており、団長べスターが揉めている人達を上手く掻き分けスタスタと歩いて来てユリスの肩に手を回し、否応なくキャラバンの一団がいる席まで連れて行かれ、座らされた。
「あんたは命の恩人だ、俺たちの席で好きなものをいくらでも頼んでくれ」
よく見ると団長のべスターは顔が赤くし、酒に酔っているようだった。
ユリスはそこに座る面々を見回した。
それをキャラバンの一団もまたユリスの顔を見ている。
「えっと…」
ユリスが何かを言う前に後ろからフィアナが後ろから忍びよりユリスの肩を叩いた。
「ふぁ」
驚いて口から変な声が漏れる。
「よお ユリス、その様子だと腕は無事治ったみたいだな。
あの後、お前は気絶しちまってたから正直心配してたんだ。
特に腕はボロボロでな」
フィオはそう言いながら横に座っていたベルナードをむりやりにどけ、そこに座った。
「たく、人をなんだと思ってやがる」
ベルナードはぶつくさと言いながら空いた椅子に移動し座った。
フィオはそれを無視し紹介を始める。
「さっきのがベルナードだ、うちで鍛冶しをやってる」
フィオが指さした先程の男性は手を上げそれにいやいや答えた。
「んで、今お前を連れてきたのが団長のべスター」
べスターはよろしくなと笑顔で言いビールを口に運んだ。
「そしてペッグ爺さん」
呼ばれた老人はフォッフォと笑い白長い髭をなでた。
「んで最後にそこのちっこいのがヘッズだ動物使いをやってる」
ユリスが誰も座っていないと思っていた場所に顔が出てきて、よろしくっと元気な返事が帰ってきて驚いた。
ユリスは再びそれぞれの顔を見たあと口を開く。
「私を介抱して下さりありがとうございました」
ユリスが頭を下げるのを見て面々は口々に、頭を下げるのはこちらの方だと、それぞれが礼の言葉を口にし頭を下げた。
「なんだ? どうゆう状況」
ふと声がしたほうを向くと入ってきて全員が頭を下げている状況に可笑しいと笑っているノエルがいた。
「ノエル、あの時はありがとう」
ユリスはノエルが助けてくれた事を思い出しながら再び頭を下げた。
ユリスの感謝の言葉にノエルは顔をしかめ目をそらす。
「いや、俺は何もやってない」
ノエルはそうつぶやき、空いた椅子を持ってきて座った。
ユリスはノエルを見て何処かおかしいと感じ少し心配して見た。
宴会はユリスが加わった事により、それからとても盛り上がった。
団長のべスターとベルナードは飲み比べをし、フィオは全員の前で踊り、魔術師であるペッグは魔術を見せてくれた。
その魔術で生まれた小さな炎のドラゴンが空を舞い火を吐いている。
ユリスはそれを見ていると何処かからか声が聞こえたような気がした。
「ユリ…に…て…」
言葉にならない断片的な声…なんだか不思議と落ち着くような声、しかしなぜか不安にさせる。
ユリスはあたりを見渡すが声の主は分からずその声は周りの喧騒に飲まれ消えた。
そんな事もありながらも、宴会はとても速く時間が過ぎていきユリス達の仲は深まり、気づけば外はもうすでに夜中になっていた。
…
宿屋に戻るとレイラが一人座っていた。
ユリスが声をかけようとすると、話しかける前にレイラがこちらに気づいて、こちらに走って来た。
その目には大粒の涙を浮かべている。
ユリスはその事に驚いたがその前にと膝をかがめレイラを胸に受け止めた。
レイラはしばらくそのまま、ユリスの服を濡らした。
「どうしたの?」
しばらくしてからレイラが落ち着いたのを感じ話しかける。
「ユリスお姉ちゃんもう平気なの?」
ユリスは笑い大丈夫だと見せた。
レイラはまだ少し涙を流していたが すぐに冷静を取り戻したかのようにユリスから少し離れ。
「お帰りなさい」
そう笑顔で言った。