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WORLD 光ノ書  作者: PEN
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フィアナ

 マーレ街道の中央付近にあるコボルトの集落。

 ユリスとフィアナはそのまま何もせずコボルト達の動向を見ていた。

 コボルト達はまるでお祭り騒ぎのように騒いでいる。

 その中心に人が四人、そしてその四人は一つの、地面に埋められた丸太に縛られ身動きが取れずにいた。

 「あー、このままだと燃やされでもすんのかな」

 フィアナが頭をかきながらまるで他人事の様につぶやいた。

 「ところで、あんたこんな所でなにしてんだ?」

 フィアナはユリスにそう訪ねたが

 忘れてたとばかりに手でこっちと合図し森の中に二人で戻り話を続ける。

 「それで?」

 フィアナとユリスはチラチラとコボルトの様子を確認しながら話した。

 「えと、依頼を見て…」

 フィアナがすぐにその言葉を拾った。

 「なるほど、コボルト討伐の依頼か」

 ユリスは少し首を傾げた。

 「そう…かも」

 ユリスは腰のポーチに手を伸ばし折り畳まれた依頼書を差し出した。

 

 コボルトとは書いてなかったが討伐依頼である事は分かる。

 「ふーん」

 フィアナは依頼書を少しまじまじと見ると、ユリスにすぐ返した。

 その後、値踏みする様にユリスを見るとニヤッと笑い言った。

 「まあいいか、猫の手も借りたいところだしな。

 よし、その依頼協力する。

 私に考えがあるから手伝ってくれ」

 フィアナはそう言い拒否は受け付けないとばかりに問答無用でユリスの手を握った。

 

 「ちょっと…待て」

 ガサっと音と共に2つの影が現れそれに反応しユリスとフィアナがそこを見ると、そこにはノエルが立っていた。その後ろにはセアムもいる。

 ノエルは息を切らしゼイゼイと横腹を抑え木にもたれかかった。

 「どうしたの?ノエル」

 ユリスがノエルに小声で訪ねると、ノエルはポツリ、ポツリと言葉を続け話す。

 「ユリス…を連れ…戻しに 来た。このっ犬っころめ 追いかけ回しやがって」

 ノエルは後ろにいるセアムを見ると、より一層疲れた顔になった。


 「ここは危険だ、帰ろう」

 ノエルは再びユリスに言った。

 しかしユリスはそれに首を振りノエルを見つめる。

 「ありがと、でも助けなくちゃ」

 それから、ユリスはノエルに事情を説明した。

 話が終わりそれでもノエルは逃げようの一点張りだった。

 「冷静に考えろ。

 もう手遅れだ、あの人達を助けようだなんて、自殺しに行くようなもんだぞ」

 それを聞きフィアナはつんとした顔をしてノエルに言い放つ。

 「じゃあ、あんたはとっとと帰りな」

 ノエルはその言葉に口を出しかけたがそれを飲み込み、ノエルは黙り込んだ。

 フィアナは時間がないとユリスに伝えこの場を離れた。

 「あなたは逃げて大丈夫、私達でなんとかするから。

 セアム、ノエルをお願い」

 ユリスはノエルの肩に手をかけそう呟きその後、ユリスはフィアナを追いかけ走り出した。

 

 「それでどうするつもりなの?」

 ユリスはフィアナにすぐ追いつき、走りながら聞いた。

 「ああ、さっきも言ったけど考えがあんだ」

 

 少し森の中を走ると開けた場所に出る事ができた。

 マーレ街道だ。

 獣道を抜け道に出るとに3匹のコボルトと遭遇した。

 「突っ切るぞ」

 

 フィアナは腰から小さいナイフを2本、右手指の間に引っ掛け取り出す。

 「ふっ!!」

 フィアナはその2本のナイフを同時に投げコボルト2匹に命中させた。

 ユリスはそれを見て驚き私も負けないとばかりにフィアナを追い越し、奥の1匹の喉を斬り裂いた。

 その剣はまるで空を切っているかのように抵抗なく振られ、シュンという音が聞こえると同時にコボルトの体が崩れ落ちる。

 「やるな」

 フィアナはユリスを口笛で茶化しながら倒れた二匹にとどめをさし、走ってりユリスを追いかけた。

 フィアナを横目で見てユリスも鞘に剣を収め走り出した。

 …

 ユリス達が去った森の中

 「ああ、分かってるさ」

 ノエルはしつこく鼻でつついてくるセアムを手ではらった。

 全く自分自身でも分からねえ。

 いつもだったらとっくに逃げ出してるはずだ。

 今回の依頼は明らかにリスクが大きすぎる。

 冒険者をやっていて長生きするこつは臆病な事だ。

 臆病さが自分を慎重にさせる。

 しかし今ノエルはそれが出来ずにいた。

 そうして逃げつづけるのかパンテーロから逃げた時のように?

 ノエルは頭の中で自問自答を繰り返す。

 それでも戦おうと思うと脚がすくむ。

 「俺に何ができるってんだ」

 そうだユリスのやつに任せとけばいい。あの大勢のコボルト相手に?

 ノエルはどうすべきか迷いに迷った。

 …

 「おい団長、これ助かるんだよな」

 ベルナードは四人とも縛られ手足も動けなくなっている状態でそう聞いた。

 「あ? 大丈夫だ、フィアナがなんとかしてくれるだろ…多分」

 団長のべスターは笑みを浮かべそう答えた。

 明らかに心配そうな表情を隠して。

 「ここで死ぬのは嫌っすよ」

 小さな背の低い男がそう言いながらもがくので縄が引っ張られ痛い。

 「やめんかヘズ。

 ここで縄を抜け出せてもあいつらに殺されるだけじゃて。

 今はフィアナを信じるしかあるまい」

 白髭を蓄えた老人が落ち着かせる様にそうヘズに話した。

 「でもよペッグ爺さん。

 さすがにこんだけいちゃあフィアナの奴もお手上げだろ」

 ベルナードが顎を動かしコボルトの集団を指し話を続ける。

 「だいたい、修理の時にキャラバンに武器を置いてきちまうとは」

 ベルナードが唸り後悔を口にした。

 「まあ、しょうがねえだろ。過ぎちまった事だ。

 問題は次どうするかだ」

 自分含む団員四名が縛られている柱の周りをコボルトの集団が囲んでいるのを再び見て苦笑いを浮かべた。

 すると集落の家の一つから灰色の巨体が現れた

 「おい、あれみろ」

 べスターが見たものは普通のコボルトより大きく身の丈が人間より大きいコボルトが立っている。

 体は傷跡だらけで筋骨隆々の身体付きだ。

 「なんだありゃ、でかすぎねーか」

 ベルナードが驚きそれにべスターが頷いた

 「おそらくただのコボルトじゃ無いな 特殊個体 もしかしたらここらじゃ有名なやつかもな」

 「ネームドかよ、そりゃ笑えねーな」

 縛られた四人組はその個体がズシズシと近づいて来るのを見て、ずしりと胃に重たい物が落ちたかの様な感じがした。

 なんとか逃げ出せないか、そう考えていると遠くの方からこちらに向かって喧騒が近づいてくるのに気づいた。

 ベスターがこれに最初に気づいて笑う。

 「フィアナの野郎、やっとおっ始めやがったか」

 

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