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WORLD 光ノ書  作者: PEN
46/53

休息

 ユリスは大部屋へと戻りしばらく休憩した後、シャワーを浴びていた。

 体にはかなりの脱力感を感じ、ユリスはタイルの壁に手をついてシャワーを止めて浴槽に浸かった。

 この風呂はマーレでの宿と比べるとかなり小さい個室用の浴槽だが足が伸ばせる。

 その上横についている蛇口を捻れば泡が吹き出し湯船を泡で包む。

 他にも蛇口があり他には下から泡が出てくる物や上からちょうど肩の部分にかけ湯が出てくる物まである。

 「ふぁーー」

 ユリスは全ての蛇口を捻りお風呂を満喫し遊んでいた。

 中でも電気が流れるのはびっくりした。

 体の腰部分が電気でビリビリとし最初こそ違和感でしか無かったが、今なら分かる。

 色々捻っていると泡にも種類がある事にユリスは気づいた。

 紫の泡はラベンダー、黄色は柑橘、赤は薔薇、青は海を感じさせる爽やかな香り、緑は懐かしい森の匂い。

 ユリスは楽しいひと時を過ごしお風呂から上がった。

 タオルもふかふかしている高そうな物だ。

 ユリスは体や髪を拭き終わると鼻歌を歌いながら脱衣所の扉を開けた。

 するとそこに、一人の女性が机にあるチェスを弄りながらユリスを見ていた。

 ユリスは呆然とし、女性を見る。

 どこかで見覚えがある。

 ユリスが考えているとその声で思い出した。

 「取り敢えず…着替えたら?」

 闘技大会1日目に隣に座っていた女性だ。

 ユリスはそう思いながら、その部屋に置いてある服を取り着替えた。

 

 「そういえば鍵、掛け忘れてたかな?」

 ユリスは着替えが終わると女性にそう聞く。

 「いえ、鍵は掛かってたわ。

 でも、マスターキーを持ってますので」

 女性は手を上げ鍵をぶらぶらとゆらし見せた。

 「貴方と話がしたくてね」

 ユリスはベットに座り彼女を見る。

 「私は、この国。

 アルシーユ王国。

 国王の娘 アミーラ・デジール。

 実は貴方の力を見込んで頼み…。

 いえ、雇いに来たの。

 ユリス・アラフェル、私の剣になりなさい」

 ユリスは少ししてからそれに答えた。

 「ごめん、私今、旅をしてるからそれは無理」

 アミーラはそれを聞き、チェスをクルクルと手を遊ばせながらユリスを見据え見る。

 「そう、それは残念だわ…。

 もし貴方が、私に付いてきてくれるならアルシーユ6勇士と同じ……とまではいわないけれど。

 それに匹敵する地位を貴方に与えても良いと思っているわよ」

 アミーラはそう言いユリスを探るような眼差しで探る。

 人には2種類いる、報酬で動く人間と名誉で動く人間、この者はどちらか。

 ユリスは目をぱちくりとし、首を傾げアミーラを見た。

 「泡でもついてる?」

 ユリスは髪を触り、泡を洗い落とせていなかったのではと探り出した。

 アハハ

 ユリスがそうしていると突如笑い声が聞こえた。

 見るとアミーラが笑っている。

 「参った、お前みたいな奴は初めてだ。

 名誉も金にも興味を見せない。

 ますます、気に入った。

 私は、お前が欲しい」

 「私は上げられないけど、友達にならなってもいいよ」

 ユリスは笑い手を差し出す

 「友か……お前は変わったやつだな」

 アミーラは立ち上がりその手を握ると扉に向かい歩き出した。

 「気が向いたら、私のところに来い…駒は多い方がいい」

 …

 観客席

 ユリスとライエールの試合の事を観客席の人達はこれから、最終戦が始まると言うのにその事を話し合っていた。

 あんな戦いを見た事が無い、や最後の方は互角だったなど様々な意見が飛び交っている。

 観客席は熱が収まらない状態となっていた。

 フィオはまるで自分の事のように自慢げに笑い賭け事のチケットを肴に酒を飲んでいた。

 「フィオさん、ライエールさんがあそこまで強いと知っていたのですか?」

 ノエルはフィオにそう聞く。

 ライエールと言えば、ノエルが以前パンテーロで冒険者活動をしていた際、よくS級について回る取り巻きなどと後ろ指をさされ陰口を言われていた人物だ。

 それがどうだろう、あのユリスを倒し今、最終決戦まで上り詰めている。

 「ライエールが強いか知ってたかだって?

 当然だ、私に戦いを最初に教えたのはあいつとセシルさんだからな。

 もっとも、私に剣の才能はなかったが」

 闘技場ではライエールとライオネルの試合が開始の合図と共に始まり観客は湧いた。

 フィオもまた立ち上がり闘技場の縁に足をかけ酒を片手に叫んだ。

 「お前の力を見せてやれ!」

 試合は急に傾いた、ライエールがライオネルの攻撃を躱わしていると思ったら急に一撃をくらい壁に吹き飛び、動かなくなった。

 「あ…大丈夫ですかね?」

 メリーは心配そうにライエールを見る。

 フィオは先程までの笑いが消え、賭けのチケットをクシャリと潰した。

 「ふざけんな! こっちはお前に賭けてんだ!

 下手な芝居してんじゃねえぞ!」

 フィオはそう怒鳴ったが、無意味と悟ると席に座りチケットを破いた。

 「あんの野郎…」

 ライエールはそのまま動かず、司会が決着と見て試合終了の合図を鳴らした。

 これに観客は大ブーイングをし、これまでの大会にして、初めての批判での終わりとなり。

 

 こうして闘技大会は終了し残るライオネルに静かな拍手と歓声が贈られる事になった。

 …

 次の日の昼

 ユリスが街を歩いていると、人々が口々にユリス、とすれ違いざまに話すようになってしまった。

 中にはサインを求める者まで現れる次第でユリスは少し困惑しながらも、何分文字など書かない為、グニャグニャした文字をデカデカと書き渡す。

 「あんたの試合が一番だったよ。

 それに比べて決勝戦は…はぁ」

 ユリスはそれを何度聞かされたのか分からない。

 今、海辺の孤児院へとノエルと向かっている所なのだがまだ付かずにいる。

 商業施設が立ち並ぶ中心部ではパレードが行われ、ライオネルが出し物の頂上に座り手を振っているのを見た。

 それも全く先に進めなかった要因だろう。

 ようやく海辺の孤児院へと近づき以前の様にユリスは窓から中を覗いた。

 すると中では授業のような事をしている、前でアリマが地面に大きく字を書いて見せ床に座り囲んでいる子供達に何かを教えている。

 「何してるの?」

 ユリスが入って行くと子供たちが振り向きユリスを見た。

 わっと

 騒ぎいつもの様に囲まれる。

 ユリスは子供達の頭を撫でしゃがんだ。

 「ユリスさん。

 これでは文字も教えられませんね」

 アリマは、微笑んで羊皮紙と絵本、ペンを片付けユリスに近づいた。

 「今、マザーに字を教えてもらってたの」

 「ねえ、あれやってよ、狐のお兄ちゃんとやってたやつ!」

 「セアムはー?」

 子供達とユリスが戯れる中、ノエルはアリマの片付けた羊皮紙と本に興味がいった。

 「文字を教えられているんですか?」

 アリマは頷き子供達を見た。

 「この子達には、少しでもいい仕事に就かせたいんです」

 アリマは子供達から目を離しノエルを見る。

 「本当は、学校に行かせてあげるのが一番いいのですけどお金もありません。

 この子達に残されるのは奴隷の方達と同じような安い賃金の肉体労働の仕事や命の危険がある冒険者などの仕事のみ…。

 私は、文字の読み書きや簡単な計算ぐらいしか教えられませんが、少しでも良くなるようにと努めています」

 ノエルはそれを聞き少し考えて聞き返した。

 「確か、教会には教えを望む者がいれば教国でそれを受けられるのでは?」

 もともと、この教会は教国が建てたものだ。

 教えを広め子供達を救う、これが教国の教会の仕事であり努めだ。

 「はい、確かにその方法もあります。

 しかし、それは優れた能力のある子供か神に選定された者のみです。

 それに、私はあの国の教えや習わしはあまり好きにはなれませんので」

 アリマはそう言いながらも子供達を見て何か葛藤するかの様にし、ため息をついた。

 ノエルは子供達を見て思い出した。

 「ああ、そうだ。

 これ、お礼です。

  あなたのおっしゃられた通りにユリスを闘技大会に参加させたのですが、おかげで前より思い詰めている事も少なくなりました。

 資金としてお使いください」

 ノエルはそう言うと一つの袋を渡した。

 中にはガロン金貨が数枚とエルク銀貨が数十枚入っている。

 ノエルの稼いだお金だ。

 「こんなに…」

  教会にお金を寄付する事はよくある行為でよく貴族や金のある冒険者、なんかがやっている。

 中でも仕事を組織する組合は将来の投資として子供達、教会に寄付をする。

 ノエルはそれを寄付するとユリスを見て椅子に座り今日の夜、舞踏会の行われる時間までそこで時間を潰した。

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