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WORLD 光ノ書  作者: PEN
45/53

 夜、皆の食事が終わり食器が片付けられる頃、扉が開き全身鎧を着た騎士が4名と頭だけ鎧を着ていない女性の白い騎士が部屋に入ってきた。

 ユリス達が何事かとその集団に目を向けると白い鎧を着た騎士が前に進み話し始めた。

 「わが名はブラダだ、これよりここに王がおいで下さる。

 皆、粗相のなき様に気をつけろ」

 ブラダはそう言うなり騎士たちを壁際に配置し少しして片膝を付き騎士の敬礼の形をドアに向きそれを行った。

 コツ…コツ…コツ

 部屋は急に静かになり、階段を上がる音が部屋の中にまで聞こえる。

 ライエールは本を閉じドアを見て、ライオネルは戸惑い慌て、最終的には女性騎士と同じ格好を取った。

 魔術師は立ち上がり本棚の方へと下がって胸に手を当てる。

 ユリスはと言うと、そのまま座った状態でなぜ、女性騎士のブラダが睨んで来るのかと考えていた。

 すると、扉が開き部屋の中にやせ細り顔色の悪い王が扉を開ける付き添い人の後に続き入ってきた。

 王は部屋を見渡すと手を上げた。

 騎士たちはそれを受け敬礼を辞めて直立不動の体制となった。

 「説明しろ…」

 王が付き添い人の男にボソボソとしわがれた声で呟き中央に置いてある椅子に腰掛けた。

 付き添い人は紙を懐から取り出し広げ、読み上げた。

 「えー、今大会テンペストにおいての戦績、見事であった。

 これにより、ここにいる皆を恒例により、王城での舞踏会に招待する。

 参加する者は相応しい服装をし明後日の日暮れ、王城にきたれし。

 また、付添い人は一人だけ許容する物とする。

 これが、舞踏会の招待状である」

 そう言い終わると付き添い人はくるくると紙を巻き再び懐にそれをしまった。

 「これが招待状です、参加の際はこれをお持ち下さい。

 衣装が無ければ、こちらで貸し出しますのでそのままの服装で来て頂いても問題ありません」

 付き添い人の人は歩きポケットからキラキラした紙をそれぞれ渡した。

 ライエールに渡す際、ライエールが聞いた。

 「仮面も駄目なのか?」

 ライエールは狐の仮面をしている。

 その為に聞いたのだろう。

 付き添い人の人は顔をしかめ言った。

 「しきたり、ですので…」

 「そうか…残念だ。

 だが一応貰っておこう。

 付添い人だけでも問題無いだろ?」

 ライエールは紙を受け取りそう言った。

 「はい、服装をしっかりして頂ければ、問題はありません」

 王の付添人はそう言いもとの立ち位置に戻った。

 「恒例の話は終わったな…」

 王はそう言うと立ち上がり選手に一瞥もせずこの部屋を出ていった。

 騎士達は王が出て行くのを見届け終わるとそれに続き部屋を出ていった。

 …

 翌朝…ユリスは闘技場の中心で4人で並び観客の声援に包まれていた。

 司会はそれぞれのトーナメント戦歴を語り、今日が最終日で優勝者が決定する事を話す。

 それが終わるとユリスは2回戦目の為、大部屋へと戻り、ライオネルの試合が始まるのを待った。

 ライエールもまたユリスの横に立ち闘技場を見ている。

 「ユリス、次の試合、剣を抜き殺す気でこい」

 ライエールはユリスに向くことなくそう言った。

 ユリスはライエールを見て首を振る。

 「剣は抜かない。

 これは、試合だよ?」

 「俺は剣を抜く。

 ユリス…お前は剣術は見事な物だ。

 だが、足りない物がある。

 出来れば実践に近い形でだ。

 俺はそれを教えたい、この先、必要になるだろう」

 ライエールはそう言い終わるとライオネルの戦いが始まる前にその場を去った。

 「ライオネルの試合は見ないの?」

 後ろ姿のライエールにそう聞くとライエールは手を上げ言う。

 「その試合は見なくても分かる。

 炎の魔術に多少苦戦するだろうが、ライオネルが勝利する」

 そう言いライエールは扉を閉めた。

 その後のライオネルの試合はライエールが言った通り、魔術師が最初は押していたが、ライオネルが炎を木槌で受けながら進み、魔術師を拳で倒した。

 ライオネルの戦いはライエールの言った通りの結果となり幕を閉じた。

 …

 闘技大会、テンペスト3日目

 第二回戦

 ユリスとライエールは闘技場に立ち互いを見据え、剣を握った。

 お互いに、ユリスはC級でありながらB級を倒し、ライエールはB級でありながらA級を倒し。

 そしてさらに二人共、騎士国の騎士を負かしている。

 これは偶然か必然か、時は進み遂に二人の試合が始まろうとしていた。

 

 ユリスはライエールの話を聞かず鞘をつけたままの剣で柄を握る。

 対するライエールは剣を引き抜きその赤い模様の入った剣をユリスへ向けた。

 二人の戦いは試合開始の合図が鳴るや、唐突に始まった。

 ライエールがユリスに一瞬で接近し剣を振るったのだ。

 ユリスはあまりの速さに追いつけず剣で中途半端にガードする。

 が、ユリスはその衝撃に耐えきれず横に飛ばされ転がった。

 今の攻撃をガード出来なければかなりの深手を追っていただろう。

 ユリスは背中に冷たい何かが触れるのを感じた。

 死と言う名の恐怖、以前にも何度か直面した恐怖。

 ライエールを見ると

 得体のしれぬ何かがライエールを纏っている。

 殺気…本気できている。

 それは まるで影だった。

 その影は深く冷たい、それはまさに闇だ。

 ユリスは思う。

 彼はなぜこんな暗い中を一人で征くのかなぜ彼は一人、闇を背負っているのか。

 それに気づいたときユリスの感じていた恐怖は霧散し、代わりに一つの思いがユリスの心を満たした。

 この者を救いたい。

 なぜ…そのような事を感じたのか自分でもわからない。

 なぜ…その思いが強くなるにつれ力がみなぎるのか…分からない。

 ユリスはすっとと立ち上がり彼を見つめ、剣を手に取って鞘から剣を引く。

 気づけばユリスは剣を引き抜きライエールの攻撃を防いでいた。

 ユリスは、そのまま斬りを返し反撃する。

 ライエールはそれを弾き後方へとユリスから離れた。

 「やっと、抜いたな」

 ライエールはそう言い再び走り攻撃をした。

 素肌の剣、同士がぶつかり火花を散らす。

 ユリスはそれを受け止める。

 次の瞬間ユリスは腹部に痛みを感じ、壁に叩きつけられていた。

 ライエールが蹴りを見舞ったのだ。

 「かっ…」

 ユリスはライエールの瞳を見据える。

 その目は赤くそして冷たい。

 ユリスは確信した。

 この人は強い…最初の一撃でそう思い今、確信に変わった。

 ユリスは逆に走り出し、ライエールに斬りかかった。

 「手加減をするな…」

 ライエールはユリスが向かってくるさなかそう言うと、なんと片腕でそれも剣では無い手で、ユリスの攻撃を受け止めた。

 

 ライエールは逆手に持つ剣を使わずユリスを再び蹴り飛ばした。

 「うう…」

 壁まで転がるとユリスは直ぐに起き上がりライエールへと剣を向ける。

 しかしライエールは追撃してこずその場で立ちユリスを見ているだけだった。

 手加減をするな……

 ユリスは息を吸い吐いて瞳を閉じる。

 全力で……戦う!!

 ユリスは目を見開きライエール目掛けて走り剣を今度は下から突きを見舞う。

 ライエールはそれを軽く避け、ユリスノ腹部に膝を見舞う。

 ユリスは飛ばされ再び立ち上がり駆ける。

 今度はフェイント一度、振りかぶり斬るように見せかけ、相手の剣を引き出す。

 そして身をかがめ回転し相手の後ろへ、周りそのまま飛び斬りかかる。

 しかし今度もまた後ろ蹴りが飛び腹部へ命中する。

 「あぁ…」

 ユリスは飛び、転がってまたすぐさま走り出す。

 今度は、真正面から斬りかかる。

 攻撃側入るなりユリスは連続で本気の連撃を見舞う。

 ライエールはその攻撃を剣で弾きそして反撃を返してきた。

 ユリスの連撃を剣で弾き更には反撃をしてくる相手は初めての事だ。

 それでもユリスは即座に守りに転じ再び攻撃を再開する。

 しかしそれでもライエールはそれを防ぎユリスと同じように反撃する。

 この連撃の浴びせ合いはお互いに一歩も引かず数十秒それが続いた。

 それを終らせたのはライエールだった。

 足で砂をすくい上げ、大きめの一撃で少しの間を作りユリスに浴びせたのだ。

 ユリスはこれに困惑した。

 こんな攻撃を受けたことはないユリスは目を塞がれ、お腹を即座に腕で守った。

 すると思った通り蹴りが腹部に飛びガードを成功させた。

 「正解だ。

 だが俺が剣を使っていればお前は今頃、死んでいた」

 ライエールはユリスを見つめそう言う。

 ユリスは目を袖で擦り砂を目から取り払ってライエールを見る。

 あいも変わらず、彼はそこに立っている。

 「でも、貴方を信じた私が正解だった」

 ユリスはそう言うと身を低くし笑った。

 ユリスは走り出すと全力を出しライエールの周りを駆け回る。

 空きがあるはずだ…何処かに。

 ユリスは円を徐々に狭め行動に出た。

 フェイントの連続。

 それは一般の観客から見ると凄まじい物だった。

 ユリスまるで分身したかの様に黒ずくめの人間を四方八方から攻撃しているようだ。

 ユリスは汗を流してそれを続け見極めた。

 「そこっ!!」

 ガキン

 ライエールの剣が即座にユリスに反応し捉えた。

 ユリスは剣を持ったまま次に飛んでくるであろう蹴りを見て、蹴りをライエールに見舞った。

 剣は互いに離れ今度は蹴りがぶつかり合う。

 その衝撃に砂は円を書くように舞い、ユリスとライエールは互いに後ろに飛んで離れた。

 「少しだけ、なれてきた…かな」

 ユリスはこの本気の試合に楽しく感じていた。

 自分の攻撃が全く通じない相手。

 それも、相手が手加減し自分が本気の状態でだ。

 ユリスは自分の全力が出せている実感を胸に再び走り出した。

 …

 気づけばもう太陽はもうすでに高く登り昼になっている。

 ユリスは砂の上で大の字に寝転がり空を見ていた。

 もう全身に力が入らない。

 汗が滴り落ちる。

 試合終了の鐘が鳴り響き、ユリスは旅に出て初めて敗北した。

 それなのに…とても心が今の空の様に晴れ渡っている。

 ユリスが雲の浮かぶ綺麗な青空を見ていると赤い目をした狐の仮面がユリスの視界に映り込んできた。

 ライエールは大の字になるユリスを見つめ、懐から試験管に入った青色のポーションを取り出し、飛竜討伐の時のようにユリスにかけた。

 体から痛みがスーッと消え、再び体が動くようになる。

 ユリスは立ち上がろうと手を付き立とうとした。

 しかしどういう事か自分の腕は力を入れても途中で力が抜けて再び地面についてしまう。

 「ポーションは、傷を癒やしても、病気や体力は癒やさない。

 それとこの戦いには関係のない事だがついでに忠告しておく。

 お前はこっちの世界に来るな」

 ライエールはそう言うとユリスの手を取り肩を貸し一枚の金貨、あの烏の紋章が入った金貨をユリスのポケットにすっと入れる。

 ユリスとライエールはそうして観客席の拍手に迎えられ闘技場を後にした。

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