キャラバン
ユリスは朝、酒場に来ていた。
「おはようございます」
酒場に入るとカウンターの年老いた男がモップで掃除をしている。
ユリスはその男性に訪ねた。
「あの、冒険者の依頼を見たいんですけどどこにありますか?」
昨日の帰りユリスはノエルに冒険者の事を訪ねていた。
ノエルが言うには冒険者とは大陸にある全ての国、一部は除外するが、協力して作った団体でそこにはA〜Fまでのランクがありそして一番上にS級がある職業らしい。
Aに行けば行くほど難しいが高い報酬が得られる。
説明はだいたいこんな感じだった…と思う。
依頼は通常、冒険者ギルドと呼ばれる場所で受ける。この村ではその役割を酒場が担っているのだとか。
そこでユリスは冒険者の依頼がどんな物があるのか気になり酒場に足を運んだ。
「依頼? ああ、それならそこにあるよ」
老いた男がしわがれた低い声でそう言い、指を指した。
その方向を見ると壁に数枚の紙が貼られているのを見つけた。
「ありがとう」
ユリスはそう言い、紙の貼られた壁の近くまで進んだ、壁にはられた紙を見ると様々な依頼が貼られている。
F
依頼 シュープの討伐
報酬 一匹につき銀貨三枚
F
依頼 屋根の修理(手伝い)
報酬 銀貨五枚
D
依頼 捕食者の調査
報酬 金貨一枚 場合によっては要相談
E
依頼 物資の護送
報酬 銀貨二枚
そして最後に一枚だけボロ紙に書かれた依頼を見た。
依頼 ハーラ街道に…魔物の…を討伐 もしくは追い払う
報酬 ……
ランクは書かれていなかった。
これだ、このランクが書かれていない依頼なら私でもできる。
ユリスはそう思い、そのボロ紙を引きちぎって手にとった。
…
ユリスがいる村から北へ十数キロほど離れた場所、そこでは一つのキャラバンが野営をしていた。
「オメェら起きろ」
早朝、寝ている彼らに声を浴びせる者がいた。
団長べスター・ジャックは水の入った木のジョッキを持ち、笑いながら団員を起こして回る。
「今日はナバト村まで行く。
そこで食料を補給してマーレを経由してパンテーロだ、さっさと準備しろ」
べスターは軽く髭を生やし、少し年の食った男性でその右目には大きな古傷があった。
キャラバンの団員は四人
団員のメンバーは子供の背丈の男性にアフリカ系の色黒い男性。
眠そうにタバコを加える女性
そして白髪に白い蓄えた髭の、大きく腰を曲げた老人の四名だ。
ベスターはそれぞれの顔を見たあと出発だ‼と大声で指示を出す。
キャラバンの面々はそう聞くや否や反応はそれぞれに大きな魔物の引く、屋根付きの小さな家型の馬車が四つ連なった乗り物に荷物を持って乗りこんでいった。
「たく、朝は頭が痛くてたまらん」
日焼けをした様な褐色肌で頭に赤いバンダナ、口に白い筒を加えた女性が頭を抑えながら言った。
「ふぉふぉふぉ、それはお主が毎晩毎晩事あるごとに大酒をするからじゃて、フィアナ」
白髪の爺さんが答えた。
「まあ、なんでもいいけどよ。ちょっとは手伝え」
黒褐色の男性が大きな荷物を手一杯に持ち二人に向かってそうつぶやいた。
白髪の老人は後ろを振り返りヒョイと持っていた杖を振ると荷物は浮き、ひとりでにキャラバンの中へと入っていく。
「オッケー」
大人の腰ぐらいの背しか無い男性が最後尾の馬車の扉を閉め言った。
それに団長のべスターは満足げに頷き力強く言った。
「よし、ヘズ ガラを動かせ」
ガラとは先頭で藁を食べながら待機している大きく鈍そうな魔物の事だ。
「おう」
後ろから走ってきた小さい男が答えた。
ヘズは小さな体の為、団長の差し伸ばされた手を掴み這い上がる。
そうしてキャラバンはヘズの鞭でゆっくりと動き出した。
…
「今日は、屋根の修理の手伝いでもするかな…」
ノエルは酒場に行きいつもの様に依頼を見て、少し違和感を覚えた。
よく見るとそこには絶対いつもあるはずの依頼がない。
ノエルはその瞬間、嫌な予感が頭を巡り急いで酒場のマスターに聞いた。
昨日ユリスに冒険者について説明してやった事を何故か頭に浮かんだのだ。
「すまん、今日ここに背は俺より小さい金髪で青目の奴がここに来なかったか?」
老人は頭をかき答えた。
「ああ、それなら朝一番に来たよ、依頼はどこにあるかって聞いてきたよ」
「なんだって、依頼を探してた!?」
ノエルはそれを聞いて確信し今現在消えた依頼の内容を思い出した。
ユリスの依頼
Bランク
依頼 ハーラ街道に巣食う魔物の群れの討伐 もしくは追い払う
報酬 五十エルク
かなり昔からあるもので誰も手をつけずに居たものだ。
以前、B級冒険者がパーティーを組んで向かったが傷だらけで帰還した記憶がある。
実際はBランクなんてものじゃないはずだ。
ユリスがいくら腕が立つとはいえ、向かえば命の保証はない。
そう思考するとノエルはすぐさま酒場を飛び出した。
「悪い! 馬、借りる」
ノエルは外に出ると門の外に繋いでいた知り合いの商人の馬に飛び乗り走らせた。
「おっおい、待てよノエル」
ノエルは商人の静止を聞かずに走らせ続ける。
ノエルはそのユリスが向かったであろう場所へと向かった。
「頼む、間に合ってくれ」
…
キャラバンは順調に進みゆっくりと道なりに進んで行く。
団長べスターは先頭に座り、風にあたって美味しそうにすんだ空気を吸い込み笑った。
「森の道は空気がうまくていい」
ヘズもまた小さい体で思いっきり息をして団長の言っている事が分かったかのように大きく頷いた。
「ところで団長、この先はどっちの道を行くんです?」
ヘズは座った膝の上に地図を開いて聞いた。
それに団長のべスターは地図に書かれたマーレ街道を指し言った。
「ああ、このマーレ街道は確か…何だったか山崩れかなんかで、とにかく今は通れんらしい。
かなり遠回りだがこっちを使うしかない」
了解とばかりにヘズは頷き鞭を打つ
、その時ガラがおかしな行動を取り始めた。
ブルルル
急にこのキャラバンを動かしているガラがうめき、そして暴れだした。
「どうした!?、落ち着け!!」
ヘズが手綱を引き落ち着かせようとするるが全く効果がない。
「どうした?」
団長のべスターがこの状況に気づき聞いた。
「分からない、いや? まるで何かに怯えてるみたいだ」
べスターはあたりを見渡した。何もないしかしこの感覚は…
次の瞬間大きくキャラバンが揺れた。
「後ろだー!!」
何事かとべスターは後ろの馬車の所を見て絶句した。
そこにはとても大きなサーベルタイガーの様な魔物が馬車に何度もぶつかりながら前に近づき、並走している姿が目に映った。
以前ユリスとノエルが森で見かけた個体だ。
「ヘズ! 走らせろー‼」
ヘズはその声を聞き思いっきり強くガラを叩く。
バシィン
その音と共にガラは先程の走りとは比べ物にならないスピードで馬車四つを引いた。
その速さで後ろに引かれるのをキャラバンの全員が感じ、中の物が床に落ちる。
四つの馬車はガラガラガタガタと音をたてながら走り続けた。
スピードを出し少し距離を離した、にも関わらずそれでも魔物は追ってくる。
「ゲシュライ」
引きつった笑いを浮かべながらべスターは呟いた。
「しかし、なぜこの地域に」
ゲシュライと呼ばれたモンスターは再び追いつき馬車に何度も体当たりを繰り返しそのたびに振り落とされそうなほどキャラバンが揺れた。
少し走り続ける間に前の馬車に団員達が集まった。
一番前の馬車は武器屋になっており武器が置かれている。
団員たちは状況を確認するために前の扉を引き開け様子を見た。
「団長!何事ですか」
「ふざけやがって‼ 私の店がやられてる!」
団長べスターは手を上げそれを止めた。
「総員、持ち場につけ!魔物だ」
団長が大声で支持を出す中ヘズも負けぬほどの声で叫んだ。
「団長、まずいガラが制御できない!」
それを聞き、べスターが前方を向くと二手の分かれ道が見えた。
マーレ街道への道と迂回ルートへの道だ。
ヘズは力いっぱいに右側に引いていたがガラは直進を続ける。
二手に別れた道でキャラバンはそのまま森の中へと続く道。
マーレ街道へと入っていっってしまった。
「この先は」
マーレ街道…べスターは頭を巡らせキャラバンの壁を叩いた。
「クソ!、とにかく行き止まりの場所までは時間稼ぎになるはずだ。
それまでにやつを追い払え」
……
ユリスはフットに場所を聞きセアムに跨ってマーレ街道へ向かいその場所に到着した。
「セアムありがと、ここに居て」
ユリスはセアムを抱きしめ撫でると一人森の中へ進んでいった。
森の中は昨日と変わらず静かだ。 ユリスはマーレ街道に入ると獣道が複数ある事にユリスは気づいた。
確か依頼は魔物の討伐、とにかく敵を見ないことには始まらない。
その事を考えユリスは獣道の中へと進み森の中へと消えた。