海辺の孤児院
コツ…コツ…コツ
ユリスは洞窟の中を歩き上へ上へと行く事でついに地上の明かりを見つけた。
ユリスは走って外に出ると鳥の鳴き声が聞こえ、太陽の暖かさが体を照らした。
「おっ、出てきたな」
ユリスが声の方を見ると、青いローブを着た黒髪の男がユリスを見て笑いかけた。
この試験を始める前にペギンと呼ばれていた男だ。
「ペギンさん、どうぞ」
ユリスはペギンに近寄り青いボールを渡した。
「今回、あんたが最初の合格者だ」
ペギンはボールを受け取り何かサインを入れそう言った。
あたりを見渡すと怪我を負い座りこけている、冒険者達の姿があった。
どうやら他の人達はうまく行かなかったらしい。
ユリスが他の人達を見ているとペギンが話しかけてきた。
「ところで、名前はなんて言うんだ?
メモを取っておかないとあとで誰がクリアしたのか分からなくなるから教えてくれ」
ペギンはペンを持ちユリスに聞く。
「はい、ユリス・アラフェルです」
「ユリス・アラフェルと」
ペギンが書き終えると今度はユリスがペギンに質問をした。
「ペギンさん、あの…次のA級やB級はどんな試験をするんですか?」
これは、ユリスが今回の試験を経験して思った疑問だった。
「んー、これと決まってるわけじゃ無いんだが…まあ、間違いなくもっと強い魔物や面倒なトラップを仕掛けるだろうな。
あとはトーナメント制なんてのもあったかな」
ペギンはそう言い終わると上を向いて言った。
「なっ三太郎」
ガサガサ
上で音がし木の葉が落ちて一人の黒ずくめの人が降りてきた。
その格好は忍者姿で顔は見えず目だけ見える。
しかしその尻尾と耳は飛び出しふさふさしていた。
犬の獣人だった。
「はい! っていつから気づいてたんですかペンさん!?」
三太郎は忍者服から顔を手で出しペギンを見た。
「いや、感だな、それに試験者一人にマンツーマンで付くって話だっただろ…それより……」
ペギンは三太郎を見つめ間を作った。
その間の静けさには風の音が聞こえるほどだった。
「三太郎……お手」
ペギンはそんな中唐突にそう言い手を三太郎へ差し出した。
三太郎は無意識なのか手をすっとペギンの手に置く。
再び静けさが三人を包んだ。
「って僕は犬じゃありませんよ!!」
言葉ではそう言っているのだがセアムが遊んでいるときに尻尾を振るように三太郎も尻尾を振っていた。
「まあまあ…ほれ、おにぎり、食べるだろ?」
「あ…ありがとうございます」
ペギンはもう片方の手で腰からおにぎりの包を取りおにぎりを一つ三太郎に渡した。
「ほら、ユリスも食べな」
ペギンは包の中にあった一つを自分の手にそして最後の一つをユリスに渡した。
「ありがとうございます」
ユリスはこの料理を食べた事が無かったので三太郎を見ると手でつかみもぐもぐと美味しそうに食べていた。
まるで餌付けだ。
ユリスは三太郎を真似て食べてみた。
それはもちっとした歯ごたえで噛めば甘みが出てくる、そして塩これがとにかく美味しく感じユリスは感動を覚えた。
…
ユリスがノエルの帰還を待ち大きな岩に座って待っていると
ようやくといった様子で松明の明かりが洞窟内に照らされ、ノエルとセアムが姿を表した。
…
無事、C級の試験を終えた、ユリス達は王都へと戻っていた。
パンテーロでは相変わらずの賑わいだ。
ユリスはセアムの背の上で人混みを進んでいると人混みの中に黒ずくめの目立つ人と褐色肌の女性を見つけた。
ライエールとS級冒険者のフィオだ。
彼らは飛竜討伐が終わり、マーレから帰ってきたらしい。
ユリスは二人を見ていると黒ずくめの男に子供がぶつかるのをユリスは見た。
それもただぶつかっただけじゃ無い、子供はライエールの財布からなにか金色に光るものおそらく金貨をくすねていた。
ユリスはすぐさまセアムから降りる。
「ノエル! ごめん、セアムをお願い」
「ちょっ、ユリスどこ行くんだ!?」
ユリスは困惑するノエルにセアムを任せスリをした子供を追った。
子供は手慣れた様子で小さな体を活かし人混みを駆け抜けていく。
ユリスは人混みを躱しながらそれについて行く。
子供はやがて大通りから外れた路地へと入り走って行った。
ユリスも路地に入ったが子供はおらず見失ってしまった。
ユリスはあたりを見渡しどこに行ったのかと見たが分からない。
取り敢えず、道沿いに進む事にしユリスは人気の無くなった路地を進んでいった。
ザザー、ザザー
ユリスが少し進むと何か音が聞こえた。
足を少し早め路地を行く。
すると街の家が無くなり、海が視界いっぱいに広がった。
目の前には小さな岬がありそこにはマーレで見たような教会が建っているのをユリスは見た。
「凄く、綺麗」
ユリスは木の柵から岬の下を覗き波が打ち付けられている様子を見た。
反対側には港が広がり砂浜が見える。
おそらく、ノエルが言っていた港だろうとユリスは察した。
ユリスは波型来たり行ったりするのを何時までも眺めていられると思うほどその光景に目を奪われた。
崖を見れば緑の草原そして青空が広がりそこには雲が点々と流れている。
ユリスは何時までもそれを見ていたかったがそうも行かないのでしょうがなく、岬の先にある孤児院へと向かった。
「…曇り…まるで空は彼女の心を表しているかのようだった…」
ユリスが窓に近づくと、白髪で白目の女性が物語を子供たちに聞かせている所だった。
「ああ…なぜあの人は今日も来ないのでしょう」
子供達は黙りその話を聞き入っている。
「彼女、海姫は彼との思い出である指輪を抱き、泣き続けました。
しかし…それでも待ち続ける彼はやって来ません。
そんな毎日が幾重にも続き彼女の涙はやがて島を沈めてしまう程になってしまいました。
そうして、アトランタは滅び、今も海姫と彼の思い出の場所、そして指輪は深く…深く 海の底に眠っているのです」
ユリスは窓から覗き途中からの話だったが聴き入り子供たちと同じ様に拝聴していた。
「マザー 海姫さんは今でも彼の事を待ってるの?」
物語を語った女性に子供が手を上げて質問する。
それを優しい笑顔で微笑み彼女は答えた。
「そうね、きっと歌姫さんは待ってると思うわ」
そう子供に優しく言った。
「マザー、窓に誰かいるよ」
一人の子供がユリスに指を指し子供達が一斉にユリスを見た。
ユリスは少しどうしようかと思ったが中に入っていく事にした。
中に入ると好奇心旺盛な子供たちがユリスを囲んだ。
「どうしたの?」
「遊ぶ?」
子供達はそれぞれの事を言い収拾がつかない。
「皆、お客様の邪魔をしてはだめですよ」
女性がそう言うと子供達はユリスから渋々離れ自分たちで遊び始めた。
「どうも、はじめまして? ですよね?
私はアリマ・エトワールと申します」
ユリスはアリマから差し出された手を見て握った。
「ユリスです」
ユリスがそう言うとアリマはユリスに訪ねた。
「今日は、どのような御用でこちらにいらしたのでしょうか?」
ユリスはそれを聞き子供を探して見つけた。
道中でスリをしていた子供だ。
「実はあの子について話があるのですが、外であの子と一緒にお話できませんか? ここでは、なんですので…」
アリマは首を傾げたがユリスの言われる通りその子を外へ連れ出して来てくれた。
窓を見ると子供たちがこっそり覗こうとこちらを隠れているつもりで見ている。
連れて来れれた子供は何事かとキョロキョロしながらアリマの手を握っている。
ユリスは話を早く終わらせてしまおうと単刀直入に切り込んだ。
「実は貴方がライエールさんのお金を盗んでいる所を見てしまったの」
ユリスはかがみその少年と目を合わせてできるだけ優しくそう告げた。
少年はフンと首をそらしユリスの顔を見ないようにした。
「違うもん 貰ったんだもん」
少年はそう言い金貨を見せた。
しかしユリスの目にはぶつかって盗んだようにしか見えなかった。
ユリスが何かを言う前にアリマがしゃがみ話し始めた。
「シャハル…私の目を見なさい。
母さんとの約束…覚えてる?」
アリマが手を差し出すと少年シャハルは金貨をそこに置いた。
「すいませんユリスさん。
うちの息子がご迷惑かけまして」
アリマはそう頭を下げユリスに金貨を渡した。




