ユリスの剣
ユリスは朝起きると窓を開け海風を浴び大きな欠伸をした。
街を見るともう街は、起きているようで屋根の煙突からはあちこちと煙が上がっている。
「ノエル、今日は街を見て回りたいんだけど…いいかな?」
ノエルは朝食のパンをスープにつけ食べながらユリスを見た。
「別にいいが、海に行かなくていいのか?」
ノエルはユリスが部屋にいる時は夜から朝まで海を見ていたのでそう訪ねた。
その質問にユリスは頷き笑って、ノエルを見た。
「うん、まだこの街で過ごすでしょ。
楽しみは取って置きたいから」
…
街に出ると昨日と変わらず大通りは混み、人が行き交っている。
ユリスはノエルと共に人混みの中を行き、より騒がしい場所へと進んだ。
パンテーロ商業地区、コロシアム周辺に広がる場所だ。
そこにはポーション屋、錬金屋、魔道具店、装備屋、鍛冶屋が建ち並び、同じ種類の店舗が客足を多く手に入れようと競い合い、外に出ての呼び込みや値下げの旗にポスター、ビラをばら撒き、歩く人に呼び掛け続ける。
「うちのポーションはしっかりと傷に効く上、に安いよー!」
「装具店、装具店をよろしくどうぞー!」
「初心者冒険者向けの安いセットの装備もあるよー!
道具もつけて、15ガロン、15ガロンだ!」
ユリスは辺りを見渡しまず何処に行こうかと沢山ありすぎて迷うほどだ。
「お嬢ちゃん、ポーションはどうだい?
高値だが、薬草何かよりもよく聞くし治りも早い」
ユリスは自分を手招きしている人がいたのでその店に入った。
その店は試験管に入った赤や緑、そして奥の棚に青色のポーションが数本置かれていた。
「お嬢ちゃん、これなんかどうだい?
緑のポーション1本、十ガロン」
店主は太った男性で緑のポーションを手にユリスにさしだしていた。
「一本、10ガロン?」
「ええ、でも、お嬢ちゃんは可愛いから、んーしょうがない一本5ガロンにしてあげましょう。
内緒ですよ」
「1本10ガロンが半分の5ガロン? それじゃあ…」
ユリスが腰につけた袋に手を伸ばそうとした時、ノエルの手がそれを止めた。
「一本、それも緑ポーションが5ガロン?
おいおい、高すぎだろ」
ノエルはメガネをクイと上げて店主を見た。
店主は舌打ちをしポーションを棚に戻した。
「悪いけどな、あんちゃん、うちのポーションは出来がいいんだよ」
ノエルは眉をしかめ店主を見る。
「いや、あんたのとこより向かいのポーション屋の方が出来がいい。
それよりも商業地区から少しはずれたサフィラの方が上等で安価な物を売っている」
ノエルはため息をつきユリスの手を取り引いた。
「サフィラ? あんなおんぼろの小さい店にうちの商品が負けてる!?
ふざけんな!」
ノエルはそれを無視しする。
「ユリス、何か欲しい物が合ったら言ってくれ、俺がいい店、知ってるから」
ノエルはユリスにそう言い店を出た。
その後もユリスは魔道具店に入り棚を見て回った。
勝手に相手を縛るロープに始まり、炎をつける魔石を利用した道具、水を浄化する石、中に沢山物が入る小袋、服や体をそのままで綺麗にしてくれる液体。
そして玉が立ち並ぶ場所には文字で音玉、光玉、炎玉、風玉、水玉、そして匂い玉と書かれたボールが沢山並べられた棚。
マントなんかも置いてあるのをユリスは見た。
そして鍛冶屋には全身の甲冑が店の前に置いてあり、中には壁に剣や盾が並べられている。
それがまるで本棚のように並べられ、壁に立てつけられているので、いくら時間があってもすべて見て回るにはあまりに足り無い程だ。
ユリスは剣のコーナーでノエルと共に剣を見ていた。
すると店の主人と思われるしわ顔の男が棚の奥からやって来てユリス達に話しかけて来た。
「剣を探しているのですか?」
「ううん、剣はあるから」
ユリスが腰にぶら下げた剣を触り見せると店の主人は近づき剣をまじまじと見つめてきた。
「あの…どうされたんですか?」
「ん…いや、この剣なんですが、どこで入手されたのでしょう?」
ユリスは自分の剣を見た。
「これ? 母さんから何年か前に貰ったものです」
「少しだけで良いから見せてくれませんか?
少し…気になりまして」
ノエルは怪しそうに店主を見たが、ユリスはスッと腰から外し剣を店主に渡した。
「はい、いいですよ」
店主はユリスから剣を受け取ると急にそそくさとカウンターへ行きそれをまじまじと見始めた。
「わざわざユリスの剣を借りてどうしたんですか?」
ユリスは店中を見て回り続ける中、ノエルは店主がおかしな事でもしないかと離れずに、カウンターに寄りかかりながら聞いた。
「いや、何…滅多にお目にかかれ無い剣じゃ無いかと思ってね」
店主は棚からレンズの入った小さい筒を取り出し目に当て剣を調べる。
「鞘を見るにかなりの年月がたっているのがわかる。
だがどうだ、この剣の輝き具合。
切れ味…」
店主はノエルにではなくどうやら一人でぼつぼつと呟いているらしく、ノエルが同じ様に剣を覗いても気づいていないほど集中した様子だった。
「それも…エルフ製…間違い無いか…いや、こんな物がうちの店に…いやでも、…それっぽいな」
何やら店主は悩んでいるようで、急に剣を見るのを辞めたかと思えば店を歩き頭を抑えたり、かいたりしていた。
「あの?…」
「ノエル 見て」
ノエルが店主に聞こうとした時ユリスが横から入ってきた。
ユリスは頭に騎士の甲冑を被り頭がすっぽりと鉄で覆われている状態だ。
「これ、かっこいいかな」
声はくぐもり、頭だけつけたユリスは何処か滑稽に見える。
「い…いや、かっこよくは無いと思うが。
それにそれだと、荷物になる上、ユリスの戦闘スタイルには向かないと思うぞ」
ノエルは少し笑うのを堪えそう話した。
「そう?…」
ユリスは甲冑を外すとどこか残念そうに甲冑をもとの場所に置きに棚の向こうへと戻って行った。
ノエルが忘れてたと、宿屋の主人を見ると、今度は自分の右手にユリスの剣を取り光に当ててまた眺めていた。
「ああ、お嬢さん、お願いがあるんだが。
この剣で試し斬りをしてくれないか?」
店主は戻って来たユリスを捕まえ剣を返すと裏口へと手招きした。
ユリスはそれぐらい別に何でもないと何も言わず店主の後についていく。
店の裏庭、そこは店の壁に囲まれた場所で一部屋ほどの広さの庭があった。
中央にはカカシがあり藁でできた人に矢が刺さっている。
「これだ、この丸太を横に斬ってくれ」
店主はポンポンと、経は小さいが自分の背丈はあろうかという試し切り用の木を叩いた。
「こんなの、簡単に斬れるよ」
ユリスは鞘から剣を抜き、近づくと店の主人が離れたのを見計らって横に一閃、そして空中に浮かんだ上の丸太にもう一閃、計2度の力強い斬撃を丸太に放った。
「おお…」
店の主人は駆け寄り切り口を見て唸った。
「間違いない…魔力が通っていないのにも関わらず、この切れよう。
間違いない! それは勇武のうちの一本だ!」
勇武とは…かつて昔、今ではおとぎ話、歌のみで語られている、太古の戦争で使われた武器。
今まで様々な武器が見つかっており、数は少ない。
勇武には今では再現不可能となった失われた技術が使用され、話しによると、様々な効果が付与されていると聞く。
ユリスが勇武について店主に聞いた所、この様な答えが帰ってきた。
「大切にしなさい、まあ、だが…もし売りたくなったらここで売ってくれ100…いや、1000出してもいい」
店の主人はそう言い店から出るユリス達に詰め寄った。
「あと…それの話だが。
本来の力はそんなもんじゃない…と思う。
だが…」
主人はユリスの耳を見て残念そうに続けた。
「恐らくそいつは、エルフじゃ無きゃ、使いこなせねえだろうな。
ま…そのままでも十分強いが…」
店の主人はそう付け加えた。




