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WORLD 光ノ書  作者: PEN
3/53

薬草のすすめ

 朝、ユリスは窓の隙間から出る太陽の日差しで目を覚ました。

 太陽は早朝のすんだ空を照らしオレンジ色の波紋を空に写していた。

 ユリスは目をこすり窓を開け顔を出す、すると涼しい風が頬をなでた。

 外を見るとまだ門は閉まり人影は無い。

 しばらく外を見ながら風にあたった後馬小屋を見て、セアムに会おうとユリスは部屋の扉を開け螺旋階段を降りた。

 下に降りるとレイラに遭遇した。

 寝起きなのか目をゴシゴシとこすり髪の毛はボサついていて寝癖がついたままだ。

 「おはよぉうございます…」

 まだ眠そうにふらつくレイラを見てユリスはクスッと微笑む。

 「うん、おはよ」

 「今から朝食を作りますね」

 そう言うなり眠そうな顔をしながらレイラは重そうに体を動かし厨房へと向かっていった。

 …

 セアムのいる馬小屋から帰って来るとちょうど朝食ができているようでいい匂いが立ち込めている。

 

 覗くと昨日と同じような料理が並べられていた。

 ただ違うのは蒸したじゃがいもを潰したものが添えられているくらいだ。

 いい匂いはこれだとユリスは笑った。

 それに少し祈りを捧げる。

 「いただきます」

 そう言い食べ始め、昨日と同じようにユリスは美味しそうに食べた。

 このじゃがいも料理も初めて食べるものだった。

 「おはよう」

 宿屋の入り口から一人の男が入ってきた。

 フットだ彼はご飯をここで全部済ませるらしく、昨日の夜の時もここで食べているのを見た。

 「あっ、フットさんおはようございます」

 レイラは丁寧にお辞儀をした。

 寝癖がついていなかったら本当に子供かと疑ってしまうくらい礼儀正しい。

 

 ユリスは食べ終えても席に残り、フットに医者メドの依頼書を見せこれは何かと訪ねていた。

 「そりゃ冒険者へ依頼するための紙だな」

 知らないのかと少し驚きながらフットはユリスを見た。

 「まあ、俺も若い頃知らなかった事だからな。

 て、言うとじょうちゃん田舎暮らしから抜け出してきたのか。

 まあここも田舎なんだけどな」

 ハハハと笑いながらパンを頬張る。

 「フットさん、冒険者ってなんですか?

 セーラは魔物を倒したりする仕事だと言っていたのですが」

 フットは食事を止め言った。

 「まあ、それもあるがちと違うかな。

 ありゃあ一言で言えば、なんでも屋だな、荷物の護送だったり修理もあるな」

 ユリスは頷きメドの言っていた事を聞く事にした。

 「それであの、ノエルさんをご存知でしょうか」

 「ん?、知ってるも何も俺の息子だ」

 またフットは笑いノエルの話を始めた。

 「最近まで王都のパンテーロにいたんだが最近帰ってきてな」

 フットは天井を見て言った。

 「あいつ、冒険者に憧れて出ていったんだが、そう現実はうまく行かないらしい」

 「冒険者を続けられなかったの?」

 フットは首を振った。

 「いや違う、あいつの夢はS級の冒険者になる事だった。

 最初の頃はFからEそしてDと上がって行ったらしい。

 だがそこまでだったようだ、そこからあいつは手紙も送らなくなったな。

 それが続き、最近ようやく帰って来たってわけさ」

 気のせいかフットはどこか落ち込んでいるように見えた。

 

 ユリスはその後、フットについて行きフットの自宅に向かった。

 「入んな」

 フットの家は門の近くにあり他の家と同じように古くボロボロだ。

 「おーいノエル、客だ!

 お前にようがあるってよ」

 そう叫びユリスに向かって小声で付け足した。

 「まあ、根性は無いがやりゃあできるやつだ、うんと、こき使ってくれ」

 「なんだ親父、朝っぱらから。もう少し寝させてくれ」

 奥から男性の声が聞こえ、レイラと同じように寝癖を付け眼鏡を掛けた男が扉を開けて出てきた。

 大きなあくびをしながら眠そうに扉を閉める。服は寝間着なのかボロでだるんと服が伸びている。

 「ノエルお前に頼みたい事があるそうだ協力してやれ」

 「報酬は?」

 ノエルは眼鏡を直しすぐに聞き返した。

 「タダでやれ、どうせ暇だろ。

 それにこの依頼はセーラちゃんのためにもなるんだぞ」

 フットはセーラと言う名前を強調しニヤリと笑った。

 その言葉にノエルはビクッと反応したのをユリスは見た。

 「どういう事だ。まさか昨日の怪我の件で…」

 「そうゆうこった、分かったらさっさと戻って仕度してきな」

 フットはそう言いノエルを扉の向こうへと追いやった。

 フットは戻るなり囁いた。

 「あいつ、昔からセーラの事が好きでな、駆け引きにだしゃこんなもんよ」

 …

 ノエルは時間がかかるとの事でユリスはセアムのいる馬小屋でノエルが来るのを待った。

 セアムはユリスが近くにいる事で嬉しそうにハッハっと音を出し顔を舐めようとユリスに顔を寄せてくる。

 「すまん、待たせたな」

 ノエルは先程のダルンとした服とは違いところどころ鉄で守られている装備を着てきた。

 背中には大きなカバンを背負い腰にはあまり使って無さそうな奇麗な剣がぶら下げられている。

 

 ユリスはセアムをひとなでし言った。

 「それじゃあ行ってくるね」

 セアムに手を振り馬小屋を離れた。

 ノエルは先頭をユリスはその後ろに続いていく。

 …

 村から離れてどれほど来ただろうかユリス達は村近くの森に入りそのまま細く草が生え散らかった道を突き進みさらに奥へ奥へと進み続けていた。

 「ないな、これ以上はあまり奥に行かない方が良いんだがな」

 ノルエが立ち止まり呟いた。

 「あんた、腕に自信は?」

 ノエルは立ち止まりユリスに振り向いて聞いた。

 「うーん、まあまあかな」

 そう聞き少し考え再び歩き始め話を続けた。

 「セーラが言ってたが、でかい魔物を倒したって。

 どんなやつだったんだ」

 ユリスは昨日の事を思い出し印象的だった部分を想像し答えた。

 「えっと、私も見た事無かったんだけど長い牙があって 大きさはセアムくらい」

 ノエルはその返答を聞き首を傾げた。

 「聞いたとおりだな、その魔物は…しかしなんでだ…環境の変化か」

 ノエルはボツボツと呟き付け足した。

 「もし遭遇したら頼む」

 その時のノエルの目はなぜか少しどこか睨んでいるようにも見えた。

 

 それからしばらく探索をしながら森の中を歩いていると何かの気配を感じた。それはかすかな音、葉がなにかにぶつかりさざめく音。

 「止まって」

 ユリスは小声でノエルを静止させた。

 「どうした」

 ノエルもユリスが何かに気づいたことを察知し体を低くして小声で問いかける。

 「何かいる」

 ユリスは目を閉じ音に集中した。

 ガサ ガサという音は東の方角から聞こえる。同時に葉が擦れる音の大きさやタイミングでこれはかなり大きいのでは無いかと推察した。

 獣は鼻がきく、もう気づいているかもしれない。

 そうユリスは思い風向きを読み取った。風はユリスから獣のいる方角へとかすかながら吹いている。

 まずい。

 ガサガサと言う音は静かにゆっくりと聞こえる。だが確かに音は近づいて来ていた。

 「ノルエ、この近くに開けた場所はある?」

 ここで剣を使えば木々が邪魔になる。

 「いや、ここら一帯は木々だらけだ、ない。

 なにかいるのか?」

 ユリスはそれに頷いた。

 「うん、それも大きい私達を襲おうとしてる」

 そう聞くやいなやノエルはユリスに来いと手招きし、そそくさと身を少しかがめたまま小走りに走り出した。

 「こっちへ」

 ユリスもそうであったが、ノエルは小走りで森を移動しているのに足音はとても静かだ。おそらくこう逝った森の中の移動法を心得ているのだろう。

 「ここでいいだろ」

 ノエルは深い茂みの前で止まりカバンをおろした。

 すばやく手慣れた様子でカバンの中からドロドロとした緑色の液体が入ったガラス瓶を取り出した。

 「手を出して」

 ノエルはためらいもなくドロドロした液体の中に手を突っ込みすくい上げユリスの手に乗せた。

 「服で隠せていない所に塗るんだ」

 そう言いながらノエルは顔や手に塗りたくった。

 しかしユリスは何が何だか分からず呆然とノエルを見ているだけだった。

 「早く」

 ノエルにそう言われユリスもノエルを真似て顔や手に塗った。

 とても青臭くて鼻が痛い。

 ノエルはユリスが塗ったのを確認すると茂みの中へと引っ張りさっと緑のマントで自分とユリスを隠した。

 「いいか、あまり動くなよ。

 あいつら鼻だけじゃなくて耳もいいから服が擦れる音にも気づく」

 それから二人は押し黙った。

 まるでユリスは自然と一体化しているように感じた。

 二人の肌はドロドロした液体を塗りたくった事で緑色となりカモフラージュされている。

 おまけに緑のマントは草に溶け込みよほど近づかない限り見分けがつかない精巧な作りだ。

 静かな森には人の気配など無く鳥のさえずりや風の道筋を葉のかすれる音がこだましす。

 しばらく動かずにしていると二人が隠れた茂みの前を大きな獣が通りかかり茂みの前で立ち止まるのが見えた。

 あの魔物だ、ユリスは息を押し殺し見た。

 セーラを助けた時に遭遇した魔物。

 魔物のお腹はあの時と違い膨れている。

 メスだそれもお腹に子供を宿しているのでは無いだろうか。

 魔物はスンスンと鼻を鳴らしたあとあたりを見渡す。

 何かに感づいたのだろうか。

 しかし少しするとそのまま何もせず去って行った。

 「よし、もういいだろ。

  また会わない内に帰ろう」

 魔物が去った跡もしばらくその場に動かずにいたノエルがようやく口をひらいた。

 ノエルは立ち上がりそれを見たユリスも立ち上った。

 ユリスはカチコチに固まった体をほぐしながら言った。

 「待って、まだ薬草が」

 そう言うとノエルは少し笑いポケットの中から木の実を取り出し笑った。

 「走って距離を取ってるとき群生地があったから帰りそこによれば大丈夫さ」

 …

 ノエルとユリスは群生地によったあとで森を抜けた。

 「ここらへんに川があったはずだ」

 ノエルはあたりを見渡しながらそう言い地図を取り出し確認した。

 先程の行動からも見るにどうやらノエルはここらの地形を事前に調べ、ある程度、把握しているらしい。

 ユリスは顔や手を洗い青臭いドロッとした液体を洗い落としながらノエルに関心した。

 あんなやり過ごし方があるなんてユリスは考えたことも無かった。

 ノエルはあの魔物を相手に争いも無くやり過ごした。

 それにあの危機感の中、探索を続けていた事、それに事前調査。

 こんな事が当たり前の様に出来るなんていったい冒険者とは。

 ユリスは心の中で冒険者への興味が一回り大きくなったのを感じた。

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