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WORLD 光ノ書  作者: PEN
24/53

小鬼の宴

 ナバト村の外は緑の蠢く軍勢に囲まれていた。

 残った若い人々はあちこちと動き回り村を防衛していた。

 「急げ!水だ、門と壁に染み込ませて、火矢を防ぐんだ!」

 「矢が無くなった、こっちに追加を持ってきてくれ!!」

 村の中では男達に加わり二人の少女が行き来している。

 「はい!今すぐ持っていきます。

 レイラ!あっちをお願い」

 「分かった!」

 フットは矢を次々と放ち門に近づくゴブリンを射抜いていた。

 「次から…次へと…きりが…ねえぞ!」

 ゴブリン達は手に手に武器を取り火矢で応戦してくる。

 水で壁を湿らし燃え落ちるのを防いでは居るがいつまで持つか分らない。

 ゴブリン達は門を斧やハンマーで壊そうとじわじわと近づいてくる。

 「くそ!! 矢じゃあ埒が明かねえ。

 決死部隊!! 外に出て押しかえす!!」

 フットは門の上から降りながらそう大声で叫び冒険者を集めた。

 「いいな!! 深追いして孤立だけはするな!

 俺が先陣をきる! 勇気のある馬鹿野郎は俺に続けーー!!」

 門が開くと同時にフット率いる冒険者は門の外へと飛び出し怒号と共にゴブリンを蹴散らした。

 中でもフットの迫力は凄まじく、戦斧を両手で持ち、まさに鬼人の如く周りのゴブリンを吹き飛ばした。

 冒険者達もその奮闘に勇気づけられフットの周りには近づかず離れずで奮闘した。

 しかし倒しても倒しても次々と湧いてくるゴブリンに体力を奪われていく。

 冒険者達は徐々に後退し始めた。

 「いいかー!! 今俺達がここを死守、出来なければこのナバトは略奪され焼き尽くされる!

 中にいる残された家族も含めてだ!

 今! ここで!俺達は引くわけにはいかん!!」

 フットは再びあらん限りの力を振り絞り戦斧を横に薙ゴブリンを吹き飛ばし冒険者を鼓舞した。

 『うおおおおおおお』

 冒険者達もそれに反応しゴブリンの波を再び押し返し出した。

 しかしそれもあまり持たない。

 圧倒的な数で攻めてくるゴブリンに対し冒険者は圧倒的に少ない。

 蓄積されていく疲労、傷 それが積み重なりフットは後退せざるを得なかった。

 その時、ゴブリン部隊の後方で騒ぎが起こった。

 森の中から緑のフードを被った一団が林を馬に乗り現れ矢のごとくフット達に向かって斬り進んできた。

 その先頭にいるのはヌサルだ。

 「門を開けろ!!」

 フットはすぐさま合図を出し門を開いた。

 ヌサル達はゴブリンの後方と前方に被害をもたらし門の中へと入って行った。

 フットもゴブリンの勢いが弱まったのを感じ自らも冒険者を引き連れ門の内へと入った。

 フットは嫌そうな顔をしてヌサルのもとへと歩いて行った。

 「どうゆう風の吹き回しだ、山賊ヌサルがこんな所に…」

 ヌサルはフットを見据え馬からおり、地面に膝まずいた。

 「私達は、いずれかの恩を返すためこの戦いに参戦する事に決意した」

 それに続きヌサルの人達も跪きフットを見た。

 「クソが、理由はどうとか知らねえが、俺はお前らのやった事を忘れた訳じゃねえ!! リリファを殺ったお前らをこんな状況じゃなきゃ…」

 フットの話を遮りレイラが前に立ち話を遮った。

 「この人達じゃない!! お母さん…を…殺した人は…この人達じゃない。

 それに…お母さん…お父さんが死んじゃってから…言ってた…私達は…他の方法で…分かり合わなくちゃいけないって!!」

 レイラは目に涙を浮かべ途切れ途切れに話し続ける。

 「…もう…たくさんだよ…もう誰かが傷ついたり…いなくなったり……もうたくさんだ!!」

 言い終わり、泣き崩れるレイラにフットは下を向き、何かを飲み込むようにぐっとこらえレイラを抱き寄せ、ヌサルを見た。

 「すまなかった、この子の言うとおりだ。

 俺が馬鹿だったよ。

 こちらからお願いする。

 このナバトを共に守ってくれ」

 「承知した」

 ヌサルは起き上がり早速と部下を各場所に指示を出し向かわせた。

 「レイラ、久しぶりですね。

 私を覚えていてくれたこと、本当に感謝します。

 そして本当に申し訳無いことをした事、謝罪として、友として、この命に変えてでもこの村を守りましょう」

 ヌサルはそう告げ自らも弓を取り出しながら門へと向かった。

 …

 ユリスは風を切り進み。

 谷に差し掛かった、以前この場所でレイラを助けた事が昨日の事のように感じる。

 「レイラ…村の皆」

 ユリスはそう呟き振り落とされぬよう、セアムに捕まり言った。

 「セアム、私達の事はもう考えなくていい、本気で走って」

 ノエルはまだ早くなるのかとぎょっとしユリスに結びつけたロープだけで大丈夫かと不安になり自らもしっかりとセアムに捕まった。

 セアムはスピードを更に上げ少しして川辺の村フルスに差し掛かった。

 ユリスはそれを見てセアムを止め燃えて煙を出す村の中へセアムを誘導した。

 「酷い…」

 村の中は殺戮と略奪された後で至るところに村人の亡骸が無造作に転がっている。

 建物は焼け落ち、最後まで諦めなかった証拠にゴブリンの死体が転がっていた。

 「お婆さん…」

 ユリスはセアムから飛び降り目を開けまま座り血を流している老婆に急いで駆け寄った。

 死んでいる…

 ユリスは老婆の目を閉じ、自らも目を閉じて祈った。

 この場にもう生きている魂はいない。

 そう悟りユリスは急いでセアムに乗りこの村を出た。

 …

 ナバトは今頃…ユリスは嫌な考えを振るいさろうと頭を振りナバト村を目指す。

 平野を抜けやがて太鼓の音そして煙が村の方面から聞こえそして見えた。

 ユリスは剣を抜く。

 ナバトの村が見えユリスは言葉を無くした。

 「嘘だろ」

 ノエルが口を開き呟く。

 ナバトは緑の軍勢に囲まれ今にも崩れ落ちてもおかしく無いと思える状況だ。

 ユリスは剣を下げセアムに言った。

 「セアム、私を信じて」

 ユリスはセアムを走らせ緑の波へと後ろから突き進む。

 一方、フット達は燃えだした家の消火、そして防衛を続けていた。

 ゴブリンの軍勢は攻撃をし続ける。

 ヌサルの人達も村人や冒険者と共に戦い水を運んだ。

 レイラは食事を作りセーラと共に皆に配って回る。

 メドは負傷した兵士の治療をしていた。

 「よし、そろそろ出るぞ!

 門に集まれ!!」

 ヌサルとフットが呼びかけ人々が集まる。

 定期的に出て戦わなければ、門が破れるためだ。

 「フットさん!!、ゴブリン共の様子が変です」

 フットは急いで自らの目で確かめようと門の上に登り見た。

 遠くで緑の海が割れ切り開かれていくさまが。

 「冗談だろ、お前ら!急いで外に出て門付近を守れ!

 うちの息子とユリスのやつが来るぞ!!」

 フットは門をおりすぐさま門の外へと飛び出した。

 ユリスとセアムの戦いは凄まじいもので、ユリスはゴブリンを次々に切り裂きセアムに寄せ付けず、セアムは目の前のゴブリンを噛み殺し踏みつけ進んでいた。

 その猛攻にゴブリンはすくみたじろぎ恐怖の色を顔に浮かべた。

 やがてセアムは門の近くまで来た。

 「こっちだー!!」

 フットは大声を上げ戦斧を振り回し道を切り開く。

 ユリスは門に近づくとセアムから飛び降りフットとヌサル率いる決死隊に加わり加勢した。

 フットの戦斧でゴブリンは吹き飛び、ヌサルの弓で遠くのゴブリンが射抜かれ近くの敵を短剣と弓で対処する。

 ユリスは剣を自由自在に操り次々と斬り伏せ続けた。

 「よし!!

 もういいだろ! 引き上げろ!!」

 決死隊は次々と統率された軍隊の様に門の内へと戻り最後にフットが入った。

 「ユリスお姉ちゃん」

 ユリスが戦いを終えナバトに入ると小さな影が行きよい良くユリスに飛び込んだ。

 「レイラ、無事で良かった」

 ユリスは安堵しレイラを抱きしめた。

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