不穏な影
川近くの村 フルスではいつものように今日も朝早くから漁に出かける若者の姿が見られた。
「みんな、今すぐ逃げるんだ」
しかしそんないつも通りの当たり前の日常は唐突に崩れ落ち始めた。
いつも見張りをしている老婆は騒ぎを聞きつけ何事かと高台へと登る。
そこで見た光景は緑色の蠢く大地が行進しているさまだった。
…
「ユリス、話がある。
この街を早く出ようと思っている。
資金もある程度は溜まったし、何なら王都パンテーロでも稼げる」
ユリスは朝の朝食の目玉焼きを美味しそうに食べている途中で止めた。
「なら、少し待って。
孤児院の子供達やヘレナさん、サボナーさん達に挨拶しなきゃ」
「いや、駄目だ。
あくまで俺の感なんだが、俺達は狙われてる。
理由は未だに謎だが間違い無いだろう。
もし俺達が接触すれば、ボーネの二の舞になる可能性がある」
ノエルはそう言いため息をついた。
「おい!ユリス、やっと出来たぞ。
ベルナードの野郎を急かしたかいがあったてもんだ」
会話を遮りフィアナが割って入ってきた。
手にはユリスの服がある。
「えっ!もう、直ったの!?」
ユリスは嬉しそうにフィアナから受け取り抱きしめた。
「これ母さんが作ってくれたんだ」
フィアナは満足そうに頷き笑った。
ノエルはフィアナを見て口を開いた。
「ちょうどいい、フィアナさん以前パンテーロに向かっていると言ってましたよね。
そこでなんですが僕達を連れて行ってもらえませんか?
数日以内でお願いしたいのですが」
フィアナはそれを聞き笑ったまま頷いた。
「ん?、もちろんいいぜ。
こっちもちょうど向かう準備をしてた所だからな。
問題ないだろ、あのでかい犬も4台目の倉庫を片付ければ入るだろうしな」
「それじゃあ、それでお願いします」
ノエルとフィアナは握手を交わした。
その時だった。
ギルドからゴーンゴーンと重い鐘の音が五回鳴らされた。
「緊急招集命令!?」
ノエルは窓からギルドを見た。
…
ユリスは急いで着替え、普段通りの装備となった。
ノエルは大きいカバンを背負いユリスは剣を腰に付ける。
二人は大通りに出て走ってギルドへと向かった。
大通りに賑わいは無く、人はまた少なくなっていた。
ギルドでは昨日の犯人を誰か捕まえたのでは?と言った話や偉い重鎮が殺されたなどといった話が溢れていた。
「シャール!」
ユリスはシャールを見つけ近くへと人を押し分けて向かった。
「ボルカの腕はどう?」
シャールは少しキョロキョロと人だかりを見ながら答えた。
「ボルカの腕はギルドのポーションのおかげですっかり…でも…ううん。
今日は休みたいんだって」
シャールは少し笑みをユリスに見せたあとすぐに人だかりに視線を戻した。
「皆さん、お集まりでしょうか?
突然の緊急招集におおじて下さりありがとうございます。
時間が惜しいので早速、本題に入らせていただきます。
只今、マーレ内で起きている殺人事件に力を注いでいるギルドではありますが。
それとはまた別の問題が発生いたしました。
今から北にある村々から緊急事態を知らせる狼煙が上がった事を確認しました。
直ちに冒険者を派遣し現場を調査してもらう必要があります。
しかし、ほぼ同時に上がり数時間後にまた上がった所を見ると恐らく大きな魔物の群れが飛竜により住処を追われたものと見ていいでしょう。
つまり…」
ルアはためてから重々しく次を続けた。
「ゴブリンの群れが集団移動していると思われます」
ギルド内は小さい悲鳴や、ざわざわと一斉に話始めた。
「そこで大きく二手に別れてほしいのです。
一つはマーレの引き続き捜索、確保。
二つ目は…ゴブリンの討伐です」
ユリスは目をぱちくりさせノエルに迫った。
「北って、どこの村!?」
ノエルは震えながらゆっくりと言う。
「ナバト村がある方面だ…」
ユリスとノエルの動きは同時だったルアの話を聞く時間が勿体なく感じ立ち聞いている人達を押しのけギルドの外へと出た。
「ノエルはここで待ってて。
セアムを連れてくる!!」
ユリスはノエルではとても付いてはいけない速さで走り宿の方へと向かった。
…
「ノエル!、手を」
ユリスはセアムに乗りギルド前で待っていたノエルを掴み走りながら後ろへと載せた。
「セアム!、久々に飛ばすよ」
セアムは久々にユリスを背に載せれて嬉しそうにマーレの街全体に聞こえるのではと言うほどの鳴き声を上げ驚く人をシュルシュルと避けながらスピードをどんどん上げていった。
こんなにもセアムは足が早かったのかとユリスは思った。
セアムは草原を抜け山を越えてゆく。
マーレへと向かった道を凄まじいスピードで駆け戻る。
地面に生い茂る草はセアムの後を追い、木々は次々ト遠くへ置いて行く
もはや今のセアムを追い抜くことはは誰にもできない。
…
ナバト村、普段は絶対に鳴ることの無い鐘が鳴り響き村の住人達は慌てふためき自らの家を荒らし荷物を纏め馬へと向かおうと誰もがしていた。
しかし馬の数は村の人達そして荷物を運べる程の数はいない。
「皆さん落ち着いて下さい。
荷物は乗せれません、老人や子供が先です降りてください」
セーラはこの混乱の中フットとメド、そしてレイラと共に避難指示をしていた。
もう残された時間は無い。
馬ももう残りの一頭となり老人を載せ終えた。
「わしはこの村に残るよ。
この村でわたしゃ育ったんだ」
「後で戻りましょう。
今、死に急ぐ必要なんてありません。
レイラ!あなたも早く乗りなさい」
「いやっ!!、私セーラや他の皆を残していくなんてしたくない。
それに、お母さんとお父さんの残してくれた宿が…」
フットは他の冒険者を集め村の防備を固める指示を出した。
「徒歩じゃあ、もう逃げ切れん。
俺達はここでギルドの助けが来るまで持ちこたえるしかない。
手を動かせ!!」
フットは指示を出し終えると二人に近づき怒鳴った。
「何やってる!!、二人共さっさと乗れ都市カロスに向かうんだ。
急げ!!」
セーラとレイラは同時に答えた。
「『嫌』です」
「私は手伝います!」
「私も!!」
二人はフットの怒鳴り声に負けず逆にてこでも動かないと言った表情でフットを睨んだ。
「かー、くそが!
誰に似たんだかな!
言っとくが遊びじゃあ無いんださっさと…」
フットの声が別の音でかき消された。
太鼓の音だ、それも何重もの。
それと同時に馬が嘶き、走り出してナバト村を急いで出ていった。
「よし、急いで門をしめろもう目の前まで来てる!!」
門の上に登っていた冒険者がそう大声で叫び門は大きな音と共に閉じられた。
フットはまだやってやると息巻き目の前にいる小さい一人とさらに小さい少女を見て愕然とその場に立ち尽くした。
お




