治癒師
ノエルは馬を休ませる事なく走らせ続けた。
ユリスの息がだんだんと弱くか細くなっていくのが分かり、涙が視界を邪魔する。
自分の力では今のユリスを救えない。それが一番ノエルの心に深く突き刺さっていた。
「大丈夫だ、俺がなんとかしてみせる」
都市マーレにつくのがやたらと長く一秒一秒が遅く感じられ遠く感じる。
やっと都市のマーレに到着したと思ったら門で人だかりが出来ていた。
ノエルはそれに構わず大声で叫んだ。
「どけえええ!!」
声に反応した人々は慌ただしく道を開けノエルに道を作った。
しかし門の前で衛兵が立ち塞がり進行を妨害した。
「急いでるんだ!!、どいてくれ」
衛兵はこちらの緊迫した状況にも関わらず落ち着いた調子で続けた。
「何者だ、名を言え」
何時もはこんなことして無いのにどうしてっ…。
「俺はノエル、こっちがユリスだ、さあここを通せ!!」
衛兵はニヤリと笑い首をくいとユリスとノエルに向け他の衛兵に命令した。
「おい、こいつ等を調べろ」
「何をっ…」
ユリスとノエルは馬から降ろされ紐を解きユリスとノエルを離す。
ノエルは抵抗したが奮闘むなしくされるがままになった。
「おいっ、やめろ!! ユリスを下手に動かすな毒がっ!!」
衛兵達はユリスとノエルを囲み荷物が無いかと調べ始めた。
しかしユリスとノエルに荷物は無い。
「隊長、こいつら、荷物どころか何も持ってません」
「はあ!?、馬鹿な、いいからもっとよく探せ」
「おい、てめぇら、私のだちに何してんだ」
慌ただしい騒ぎの中一人の女性の声が聞こえた。
そこを見ると頭にバンダナを巻き装飾をやたらと付け口に煙草を口にした女性、フィアナだ。
「フィアナさん、ユリスに毒が。
早く行かないと!!」
「なんの、騒ぎだ?」
団長のべスターも人混みの中から現れ様子を見て状況を察した。
「おい、衛兵こいつ等を通してやれ」
衛兵の隊長と思われる男にそう軽く話した。
「なに!?、貴様なんの権限でそんなっ…う…」
ベスターは落ち着いた様子で懐から紙切れを出し見せた。
「これ、お前なら良く分かるよな。王の紋章だ。
国お抱えのキャラバンの団長の俺がそいつ等の身を保証してやるって言ってるんだが?
まあ、国とやり合おうってんなら話は別だがな」
衛兵の隊長は舌打ちをしユリスとノエルを開放した。
ノエルは馬に乗って人混みを掻き分ける、より歩きの方が早いと思いユリスを背に抱え走り出した。
ギルドを通り過ぎるときにボーネに遭遇した。
「なんだ、今日はメリソスの双子岩の方に荷物運びじゃ無かったのかぁ? お嬢ちゃんは虫の息じゃねえか、途中、シュープにでも襲われたのか?」
笑うボーネを無視し走る。只々走る。
やがてノエルはマダム、ジョセリーナの幸福亭へと転がり混んだ。
それを見て、店員をしていたフオとシュイが駆け寄った。
「ジョセリーナさんを、早く!!」
すると扉が開きマダム、ジョセリーナが現れた。
「何事だい?」
ユリスの紫の腕を見てマダムは目を見開いた。
「っ…早くその子を私の部屋へ運びなさい」
ノエルはマダムの部屋に入るとマダムは落ち着いた調子で続けた。
「その子をここにおいて。
シュイ!、この子の服を脱がせるのを手伝いなさい」
ノエルは言われた通りに床にユリスをフオと共に寝かせる。
「男は早く出てお行き!!
時間がおしい」
フオとノエルは急いでその部屋を出ていった。
マダムとシュイはユリスの服を全て取り産まれたままの姿にして寝転ばせた。
「シュイ、魔術の容易しな」
マダムは長細いキセルをシュイに持ってこさせそれを使い空中に円を書き文字を刻んでいった。
マダムが書いていく場所には空中に光る文字が書かれ薄暗い部屋を照らした。
やがてその文字は次第に大きくなって行き、円がユリスを囲み木の床に張り付いた。
「よく、頑張ったわ」
マダムは囁くように呟きキセルを加え息を吸い煙をユリスの体中に行き渡るように吹き付けた。
マダムはそれを終えると手をかざし目を瞑り呪文を黙々と唱え始めた。
「poison,disappear
healyurbody………」
同じ言葉を繰り返していく
すると紫の皮膚が徐々に消えてゆく。
魔法陣は光を放ち始める。
やがてユリスの体は傷を含む全てが元通りとなっていた。
「終わりね、シュイ、この子が起きたらお風呂に入れて上げなさい。
服はそうね、あなたの服でちょうどいいと思うわ」
「あの、マダムは?」
「私は、疲れたから。フオにマッサージでもしてもらう事にするわ。
それに、ノエルの坊やに少し聞かないといけない事があるから」
そう言いマダムは部屋を出て行った。
…
「んん…」
ユリスは薄暗い部屋の中で目を覚ましたふかふかのベットの上で寝ているようだ。
あの魔物はと起き上がり自分の体が布一枚巻かれているだけで何も着ていない事に気づいた。
「あれ?服がない…」
「おはようございます。ユリスさん」
見やるとシュイが心配そうに見ていた。
「おはよ、シュイ。
私の服は…」
「はいあります、しかしその前にお風呂にお入り下さい。
普段はマダム専用のお風呂なんですが、どうぞこちらへ」
ユリスは言われるがままに後に続き扉の中に入った。
すると中は驚いた事に地下へと続く階段があった。
そのまま進むと一人にしては広めの脱衣所がありさらにその奥の扉には驚くほどの大浴場が広がっていた。
ユリスは布を取り大浴場へと進んでいった。
「ふぁあ」
気持ちよくて声が漏れる
大浴場は薄暗くキャンドルに照らされた関節証明が浴場を照らす。
さらにキャンドルからはフローラルの香りが濃すぎず薄すぎず漂っている
。
ユリスは目を閉じて足を伸ばした。
「湯加減はどお?」
ユリスは湯気の中、目を擦り入り口付近を見るとマダムが入ってくる所だった。
チャポンと言う音と共にマダムがユリスの隣に来る。
「全く、あなた本当に運が良かったわ。
あのタラクスの毒を喰らって生き残れた人はほんの一握りくらいなのよ」
ユリスは水滴が落ちてくる石野天井を見つめ黙って聞いた。
「一様毒は抜けたけど、ここ数日はあまり無理し無いようにね。
体の生命力を利用させてもらったからその分をこうやって養わなきゃ」
マダムは湯を手ですくい垂らした。
「お風呂を上がったら、食事を用意してるから食堂に向かう事それと、フオに頼めばマッサージしてくれるからお願いするといいわ。
私は、疲れたときいつもそうしてるの」
そのまま二人は湯船にしばらく浸かり大浴場を出た。
火照った体に冷たい石の部屋は気持ちがいい。
ユリスはマダムに言われた通り服を着てみた。
ここの宿の女性用、作業服、鏡の前に立つとメイド姿のユリスがにっこり笑っている姿を鏡が写しだした。




