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WORLD 光ノ書  作者: PEN
17/53

畑荒らし

 ユリス達はその後ギルドを出て街の城壁外に来ていた。

 街を見ると城壁に囲まれており壁しか見えない。

 「ユリス、何やってるんだ?」

 ノエルが街の方を見ていたユリスに聞いた。

 「ううん、なんでもない」

 今はシャールとボルカと話し合った結果ノエルがパーティーの指揮を取ることになった。

 パーティーとは冒険者が複数人で仕事を行う際に作られるグループのようなものらしい。

 ノエル達は壁沿いに建てられた馬小屋に向かい歩いていた。

 そこでは冒険者達が馬の飼い主と思われる男に話しをしているのがあちらこちらに見えた。

 「だから、今日はもう予約が入ってんだ」

 「そんな、こっちは稼ぎ時なんだぞ」

 「金が無いなら他を当たるんだな」

 沢山の馬の交渉人がいる中ノエルはその中迷いもせず一人の髭を蓄えた男性のもとへと向かった。

 シャールは不安そうに言った。

 「すいません…私配送依頼をよくこなすので馬貸しには詳しいのですが。

 その人はぼったくりで有名ですよ、他の方にしたほうが…」

 「いや、あの人で決まりだ」

 ノエルは交渉中の男に迷いもせず近づいた。

 「この、ぼったくりが。今他のとこが駄目だから来てやってんのに。

 足元見やがって」

 「んで、払うのか払わないのかどうすんだ」

 「はっ、お前を相手にした俺等が馬鹿だったよ」

 冒険者達はそう言い去っていった。

 「あの、やっぱりやめたほうが」

 ノエルはシャールの話を無視し男に話しかけた。

 「サボナーさん、最近の馬の調子はどうですか?」

 サボナーはノエルを見てしかめっ面だった顔がぱっと変わった。

 「おーノエルじゃねえか、なんだ帰ってきてんなら言えばいいのによ」

 サボナーはそう言いノエルに肩を回した。

 「ちょうどいい酒があるんだちょっと馬を肴に飲み交わそうぜ」

 サボナーはそう言い豪快に笑った。

 「いえ、今は仕事に向かう前なので、終わったら付き合いますよ」

 「なんだ、お前らもか?

 ノエルの仲間なら大歓迎だ、ちょうど今、絶好調の馬がいるぜ」

 …

 「すごいですね、ノエルさんあのぼったくりのサボナーさんと交渉してたったの一エルクなんて」

 サボナーに馬二頭と屋根のない馬車を借り馬を走らせている。

 「あの人は別に金が欲しくてぼったくってるわけじゃないさ。

 馬が好きなだけさ、馬をよく理解も共感もしない奴に高くかしてんのさ。

 そうして、逆に理解してくれる人にはああやってその分、還元してくれる」

 シャールとボルカは関心しノエルに馬の事や馬貸しについて質問攻めにした。

 彼らのような馬貸しをよく使う冒険者にとってはとても有益な情報だったらしい、シャールは紙を取り出しメモっていたしボルカはまるで首振り人形になったかのように頷き続けていた。

 サボナーの馬は力強くセアムといい勝負ができそうなほどに早い。

 途中、馬を借りた冒険者達を次々抜かし驚かせていた。

 その中にいたボーネは悔しそうにユリス達を見て馬を無理に叩き馬を怒らせて落馬しているのを遠くで見た。

 

 やがて馬車は麦畑に囲まれた道に入り小さな家が五つほど集まっている集落の広場に止まった。

 ノエルは馬を柵に繋ぎ藁をやった後依頼書を手に一つの民家に一人で向かった。

 …

 ノエルが出てくるとノエルは移動しながら話すと言い、それにユリス達は続く。

 「今回、狩るシュープだがまず注意事項がある。

 よく初心者向けと言われているがあまり舐めないほうがいい。

 あいつらは臆病で向こうからは襲っては来ないが追い詰めれば突進したり噛み付いてくる。

 俺の作戦としてだが、罠を張ろうと思う普通の冒険者なら追い駆けるだろうが効率が悪い。

 少し最初に手間がかかるが柵を利用して追い立て、それをユリスが待ち構えて止めを指す。

 これで行く」

 そう言われ四人は早速と木を取りに森の中へと向かった。

 シュープは羊のような毛に包まれた小さい馬の様な外見で木を集めている間にもチラホラとよく見かける。

 作物を食べ、踏み荒らし、地面に穴を掘るため麦畑がところどころ荒れている。

 昼頃にようやくトラップが完成した。

 柵はVの字に作られユリスはVの字の下に空いた部分で待機するようにと言われた。

 シャール、ボルカ、ノエルが麦畑に入っていきしばらくすると三人に追われたシュープが次々と柵に道を阻まれユリスの方へと姿を表した。

 ユリスは目をつむり白いネックレスを握り深呼吸した後目を見開きシュープの頭を次々と切り落として行った。

 やがてその場はシュープの山となり運ぶのになん往復もしなければならなかった。

 最後の一匹をシャールが運ぼうとした時森の中からバキバキという木が折れる音と共に一匹の魔物が姿を表した。

 それは以前ユリスが討伐した事のある魔物で二本の大きな牙を持っている。

 ゲシュライだ。

 ゲシュライは死体となったシュープの血を嗅ぎつけたようでこちらに近づいてくる。

 シャールは体が震えシュープを落としその場に座り込んでしまった。

 ノエルは息をのみ震える手で剣を引き抜いた。

 ユリスもまた剣を抜きシャールのもとまで走りゲシュライの前に立ちはだかった。

 「シャール、動ける?」

 シャールは恐怖の表情でユリスにしがみつき首を振った。

 シャールは腰が抜けてうまく動けないらしい。

 「やめてください、私なんかの為に。

 戦う気ですか!? 私を置いて今すぐ逃げてください!!

 私はなんとか逃げますから」

 ユリスは少し振り返りシャールに微笑んだ。

 「大丈夫、私があなたを守るから」

 再びゲシュライと向かい合いユリスは剣を構える。

 今回はセアムがいない為少し不利な上、ゲシュライは完全に警戒しており不意は付けそうもない。

 お互いに止まり出方を伺う。

 ノエルとボルカもまた立ち止まりいつでもシャールを助けられるようにと構えた。

 ついに時は動き出しゲシュライが牙を向いてユリスにへと襲いかかろうとした。

 ユリスはそれを見て走って近づきゲシュライの噛みつきを避け首元を掴み回るようにしてゲシュライの上に跨った。

 「ごめんね」

 ユリスは剣を両手で構えゲシュライの首に深く刺しこんだ。

 ゲシュライは声を上げることも出来ず息絶えたように白目を向き倒れ込んだ。

 ユリスは背から降りて剣を抜きついた血をゲシュライの毛で拭き取った。

 その光景を理解できず三人は驚愕していた。

 あの恐ろしい魔物が一撃で死んだ。

 ノエルもユリスが直接、魔物を仕留める所を見た事が無かった。

 「これ程…だとは」

 「へ?…終わったの?」

 「ありえない…」

 シャールはまだ立てずにいた為ユリスは全員の反応に気づかず、シャールに手を差し伸べ起こした。

 「大丈夫?、怪我はない?」

 ユリスは呆然としているシャールを見て顔の前で手を振り意識があるか確かめていた。

 「ユリス、ずっと疑問に思ってたんだが何者だ?」

 ノエルが近づきながら聞こうとした…が、それは大きな咆哮によりかき消された。

 ユリス以外の三人があたりを見渡す中ユリスは空を見上げ、それを見た。

 飛竜だ、大きな翼を羽ばたかせ円を描き飛んでいる。

 ついにそれは滑空を始めた。

 「皆、急いで離れて」

 ユリスはシャールを肩に担ぐようにして持ち上げ走り出した。

 次の瞬間に飛竜はユリスとシャールが居た場所にズシンと重く降り立ち、今一度、咆哮を発したビリビリと鼓膜が振動し痛い。

 飛竜を見ると尾がユリスめがけて迫って来ていた。

 ユリスはとっさに身をシャール共に放り麦畑の中に姿を消した。

 ノエルは呆然としているボルカに飛びつき押し倒す事でなんとかそれを交わす。

 ユリスは倒れたまま起き上がらず飛竜を見た。

 戦ってはいけない全身がそう叫んでいる。ユリスはシャールの上に被さる事が精一杯だった。

 飛竜はユリス達に目もくれずゲシュライを足に掴むと炎を空中に撒き散らした後羽ばたいた。

 その風は小麦畑を波打たせ、大地にある小石を飛ばせた。

 飛竜はついに飛び森の上空へと飛び立ちやがて山の向こうへと消えた。

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