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WORLD 光ノ書  作者: PEN
15/53

牛の魔物

 「あなたの相手は、私だ」

 そう言いユリスはミノタウロスを見た。

 ミノタウロスは怒りに吠え走り出す。

 ユリスは修道女とは別の道へと走り出し牛の化物を誘導した。

 魔物はだんだんと足を早めユリスに向かい突進した。

 ユリスはぎりぎりの所で交わし建物へと突進させる。

 パラパラと小石が飛び魔物は壁を壊して頭を振り唸ると再びユリスに向かい走り出す。

 ユリスはあまりに復帰が早かった為突進を受けざるおえなかった。

 ユリスは剣で角を抑え自らが後ろに飛び退る事で衝撃を軽減した。

 コボルトとの戦いが脳裏をよぎる。

 ユリスは飛ばされ倉庫が並んでいる広場へと体制を崩しそうになりながらも着地した。

 あたりは暗かったが、ざわざわと騒ぎを聞きつけてか松明を持った人達が街からこの広場へと出てきた。

 次の瞬間、ミノタウロスが再び闇の中から現れユリスはとっさに剣で受け流した。

 火花が暗闇の中で飛び散る。

 すぐさまあの突進が来て再度、受け流す。

 ぶつかる衝撃音は次第に加速してゆき周りを囲む人達は続々と増えて来ていた。

 暗闇から出てくるミノタウロスは厄介で何処から来るのかが分からず、反射し弾くのが精一杯で反撃のしようが無い。

 「どこ…」

 やがて松明の光がついにミノタウロスを捉え村人達が恐怖しおののいた。

 「今っ!!」

 ユリスは受け流すのではなく体を横にずらして突進から交わしすれ違いざまもう片方の角を切り落とした。

 魔物はうめき、頭を抑え震わせた。

 周りにいる人達の悲鳴が歓声へと変わる。

 ユリスは魔物に振り返り止めを刺そうと武器を構えようとした。

 しかし、油断したその瞬間ミノタウロスは突進しユリスもろとも倉庫の壁を突き破り中へと引きずり込んだ。

 ユリスは壁にぶつけられそのまま倉庫の中にある積まれた物の中に放り込まれ白い煙を立てて姿が消えた。

 「くっ」

 倉庫の壁が古く弱い箇所で助かった。

 ユリスは立ち上がり体中についた白い粉を払い魔物を見た。

 そこには倉庫に置いてあった大剣を取り上げるミノタウロスの姿があった。

 剣を構え相手の出方を伺う。

 魔物は大剣を引きずり石の床に火花を走らせながらユリスに向かって来た。

 ユリスも走り出し魔物の大剣を交わし胸に一撃そのまま回転し足に一撃を見舞った。

 魔物は速度を緩めず倉庫の荷物の中へ転がり山を崩し、白い粉で倉庫の中を満たした。

 魔物は怒り、落ちてきた木箱を払い除け周りの物を無差別に攻撃しさらに白い粉を充満させるとユリスを見た。

 今度はユリスが先に走り出した剣を下から上へ薙ぐ魔物は大剣を盾にして防いだ。

 火花が散ったと思った次の瞬間そのほんの小さな火が膨れ上がり倉庫内は炎に包まれた。

 とっさに腕で顔を守ったが、後方に飛ばされる。

 粉塵爆発、あまりの急な出来事に頭がついていかない。

 剣が離れユリスは石の地面を転がされる。

 外にいた野次馬は大きな爆発音に驚き中から出てきた金髪の少女に注目が集まった。

 「死んじまったか?」

 「あの魔物はやったのか?」

 「ギルドの連中に連絡しろ!」

 口々に話しだし広場は騒がしくなった。

 ブルルルルル

 大きな不気味な怒号が広場の話し声を収め、炎から角の無い牛の頭がぬっと現れ人々を戦慄させる。

 ユリスはピクリとし手を地面に付き起き上がった。

 剣は無い。

 どうするか、ミノタウロスはすでに走り出そうと見を低くしている。

 ついに走り出しユリスは何か手は無いかと、あたりを見渡しはっとした。

 ユリスの中に一瞬閃くものがあった馬鹿げた無謀な作戦だが今はこれしかない。

 

 ユリスもミノタウロスに向かって走りだし途中にあるミノタウロスの角を拾い突進の力と合わせ大剣を振り上げた瞬間、胸に突き刺した。

 ミノタウロスは後ろざまによろけるのをユリスは見逃さない。

 ユリスは飛び後ろ回し蹴りで角を蹴った。

 角は深くえぐり込みミノタウロスはそのまま生気を失い、大きな音を出して倒れた。

 「大丈夫ですか!?」

 ユリスが振り向くとそこには修道女とアイラが駆け寄って来る所だった。

 「早く、こちらへ」

 ユリスに肩を貸し修道女はあの教会へと足を進めた。

 人だかりがミノタウロスの方へと集まって行くのが見える。

 「早めに立ち去った方がいいです」

 修道女は黒いフードが脱げ白い髪がなびいてユリスの頬に当たる。

 …

 ユリスはその夜、宿には戻らず子供たちと同じ場所で眠り夜を過ごした。

 「おはようございます」

 ユリスは重たいまぶたを開け修道女を見た、白い瞳が自分を見つめている。

 「すいません、でももう起きませんと食事が無くなってしまうと思いまして」

 そう言い修道女は子供たちを見てにっこりと微笑んだ。

 ユリスは体を起こしてそれを見ると子供たちが少ないパンを分けて遊びながら食べている姿が目に映った。

 赤髪の子供がそこから離れユリスに近づきパンを渡した。

 アイラだ。

 「昨日は、ありがと…逃げてごめんなさい」

 そう言い踵を返し子供たちの中へと戻っていった。

 修道女は微笑み子供達を見つめる。

 「いつも、こんなふうなんですよ。

 みんな元気で優しい子達です」

 ユリスは疑問を口にした。

 「そういえば、親の姿が見えないけど」

 レイラの事が頭に浮かんだ。丁度同い年位の子供たちだ。

 「私がそうです。

 ここの子供達は皆、何かしら問題を抱えています。

 最近で言えば戦争、それに貧困に病そして親がそれを放棄した時、子供たちは救いを求めてここに来ます」

 ユリスは聞いた事を後悔した。

 そんな事が本当にあるなんて、子供の頃ユリスが大人達に言われた記憶を思い出した。

 …

 「外に出て旅に出たい?

 やめときなさい。外の世界は君が思った事の無いような残酷な世界だ」

 ユリスは絵本を握りしめ続けた。

 「でも見て、これは絵だけどこんな景色が広がってるんだよ?」

 大人達はため息をつき言う。

 「ユリス、戦争を知っているかい?

 ついこの前までこの近くの国でそれが起こっていた。

 私は知っている、それが以下に残酷で愚かな事かそれを外の住民は平気で行う。

 100年もすればすぐにその痛み、悲しみを忘れ人はまた同じ事を繰り返す…そんな野蛮な奴らなんだよ。

 外の世界は危険だ」

 他にも誘拐、殺人や奴隷の事なんかも外へ旅に出たいと言うたびに聞かされた。

 ユリスは信じられなかった。人とはそれ程までに残酷に慣れるものなのかと。

 きっと大人達が嘘をついて私を外に行かせないように、私にいじわるしているのだとそれは物語の中の話で現実では無いのだと、心の何処かでそう子供の頃は思っていた。

 ユリスはレイラの件や目の前の子供たちのことを思い理解に苦しみ拳を強く握った。

 「…………」

 その言葉に修道女はそれに何も反応も無かった。

 重い空気をパンっと言う音がさらった。

 「さて、そう言えば、ユリスさん私の名前、知りませんでしたよね、私はヘレナと言います」

 どうして自分の名前を知っているのか不思議だ…言った覚えがない。

 「情報収集は得意分野ですので」

 ヘレナはユリスを見て手を合わせ笑顔で言った。

 …

 ユリスはそれから孤児院の手伝いをする事にし、子供達と共に荷物を運び教会の奥の倉庫へと置いた。

 そこには食料や荷物が置いてあり高い窓から太陽の光がさしている。

 奥にある木箱が目にとまった。

 近づくと木箱には黒いカラスのマークがついていた。

 異様に興味が惹かれ開けようと手を伸ばす。

 「お姉ちゃん、ノエルって人が来てるよ」

 ユリスは手を引き外へと向かった。

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