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WORLD 光ノ書  作者: PEN
11/53

旅立ち

 ユリスは持っていた食料品などを放り、宿を出てセアムのもとまで走った。

 その途中フットが慌てた様子で酒場から複数の人を連れ、出てきた。

 フットもこの事を知っているらしい。

 それを無視してユリスは走った。

 セアムのいる馬小屋まで行くとユリスは異変に気づいた。

 馬もセアムもぐったりと倒れている。

 そしてセーラの馬と荷車が無い。

 それと同時にこの場所に来てから、不自然な甘い香りがかすかにする事に気づきユリスは袖で鼻を塞いだ。

 ユリスはセアムに近づき安否を確認する。

 セアムは寝息をたて寝ているだけだ。

 だが、深い眠りについているらしくユリスが触ったり撫でてもなかなか起きようとはしない。

 辺りを見渡すと一点だけ何か燃えた黒く焦げた跡が残っている事に気づいた。

 どうやらこの甘い香りはこれのせいらしい。

 薄っすらとまだ煙が出ている。

 ユリスはその燃え残りを踏み、残り火を消した。

 ユリスはセアムを一瞥しセアムは今動けないと悟ると、そのまま隣にある門へ向かった。

 すると門の扉に夜の間は施錠されるはずのカンヌキが抜け落ちている。

 門を押し、扉を開けると後ろから声がかけられた。

 「ユリス……待て」

 後ろを向くとフィアナに支えられて歩いてくるノエルがいた。

 「待て、俺を連れて行ってくれ。

 俺なら奴らのアジトを知ってる」

 ノエルは袖で血を拭いながらセアムのもとまで行き背負っていたカバンを下ろすとカバンから薬草を取り出した。

 「フィアナさん火をかしてくれ」

 フィアナはそうノエルに言われポケットから銀ケースを取り出すと、その中の赤い石を一つ差し出した。

 ノエルはそれと薬草をこすり煙を出すと寝ているセアムにそれを嗅がせた。

 そうすると突如、セアムはむっと起き上がり目の前にいるノエルの顔を舐めた。

 セアムに何度か舐められたまらずノエルは身を引く。

 「これで行けるはずだ」

 ノエルにもそれは効果があったようで、セアムが歩いてユリスのもとに行くのを見ながらノエルは起き上がった。

 「よし…行こう」

 …

 ユリスとセアム、ノエルは森の中を疾走していた。

 今ではノエルも意識をしっかりと保ちセアムの毛を落ちぬように掴み放り出されないようにしている。

 「そこを曲がってくれ」

 まるで獣道のような道を全速力でセアムは走り抜ける。

 やがて2人と1匹は木々を抜けて、開けた場所に出た。

 そこには大きな洞窟があり、入り口が暗く口を開けユリス達の前に現れた。

 ユリスは躊躇なくセアムに行けと合図を出し、中に飛び込む。

 「動くな!!」

 そこにはユリス達を待ち構える者達がいた。

 中は大きな半形の空洞になっており周りにぐるりと洞窟の空中の壁の部分に、木で足場が作られた拠点に囲まれている。

 それも2層だ。

 そしてそこから二十人ほどいるかと思われる数の人間が弓をこちらに構え狙っていた。

 その全員が緑のフードをかぶっている。

 セアムはそれに唸り声を上げ威嚇した。

 「セアム、ノエルをお願い」

 ユリスはそう小声で、そうつぶやきノエルの静止を無視し、セアムの背から飛び降り、前に出た。

 すると山賊の女性が矢をユリスの足もとに打ち込んだ。

 ユリスに危険があると判断し、唸り声を上げ襲いかかろうとするセアムを手で待てとユリスは静止をかける。

 「貴様らは何者だ!

 なぜこの場所へ来た!」

 ユリスはそう叫んだ女性の声に負けない程の大きな声で返した。

 「私は、ユリス!

  ナバト村から来た!

 人を殺したくはない‼ 

 ここにいる、レイラと言う少女を助けに来た!」

 山賊の女はローブの下で眉を潜め言った。

 「私の名はヌサル、ここの長だ。 そのような者は知らぬ。

 今すぐ立ち去れ!!

 さもなくば殺す」

 その場に緊張が走り重い空気があたりを包んだ。

 しかし突如手を震わせながらもノエルが叫んだ。

 「嘘をつくな‼ 

 俺は見た。

 ここに顔に傷の入った男が居るはずだ!!

 貴様らの紋章もこの目で…」

 ヒュンっと音と共にノエルの頬を矢がかすめた。

 「待て!!」

 ヌサルがそう言い矢を放った仲間を咎めると、少し考えた素振りを見せた。

 「その話を続けろ」

 ノエルは頬から血が流れるのを感じよけいに恐怖で震える手を押さえつけ続けた。

 「あれは間違いなくお前らの印…リリファさんを殺しただけじゃ飽き足らずレイラを連れ去った‼…違うか!?」

 ヌサルはその言葉を聞き手を上げ、拳を握った。

 ノエルは撃つ合図と思い目を瞑った。

 しかし矢を向けていた山賊たちが一斉に矢を下げた。

 「なるほど…だいたい状況は理解した。

 残念だがその男はここには居ない。

 しかしここに来たのは正解だった…」

 ユリスは集団が矢を収めた事で敵意が無いことを感じ、鞘に収まる剣から手をはなし訪ねた。

 「正解とはどう言うことだ!」

 ノエルの言葉をヌサルは無視し全員にこう言い放った。

 「全員聞いたな、シュラムの奴が掟を破った‼」

 それに反応し他の山賊達が罵声や非難する複数の声が周りから上がった。

 「これを許してはならぬ。

 奴を見つけ首を持ってこい。

 レイラは傷つけるな。

 成功者には金をたんまりくれてやる!!」

 [うおおおおおおお]

 その言葉に山賊の全員が雄叫びを上げる。

 ユリスは何がどうなっているのか分からなくなり、ただどうなるかを呆然と立ち見ていた。

 「今すぐ迎え‼」

 その声と同時に山賊達が上からロープやハシゴらを使い、降りてユリス達を無視し奥の部屋へと走っていく。

 馬に跨り再び現れ、我先にと走り抜けて行った。

 女山族長であるヌサルはカロス、マーレ、ブリテン、ベサデロと、それぞれ指を差し叫んで指示を出している。

 ほとんどの山賊が居なくなり、ユリス達が、あ然としていると山賊の長ヌサルが話しかけてきた。

 「手荒な歓迎、すまなかった」

 ユリスはそれに少し警戒しながら近づいた。

 「これは?」

 「なに、リリファの姉御には世話になった、だけだ。

 それより急ぐんだな。

 その場で殺されなかったって事は売りに出す気だろ。

 もしそうなったら流石に取り返すのは面倒なんでね」

 ヌサルは話が終わるとヒューと口笛を吹いた。

 すると軽装備をした馬が現れヌサルに近づき頭を下げヌサルの手に頭を押し当てた。

 ヌサルはその馬の頭を撫でると飛び乗り、ヌサルは出口へと馬を走らせた。

 「なにぼんやりしてやがる!

 さっさと行かねえと手がつけられなくなるぞ!」

 ユリスはその言葉を聞きセアムに飛び乗り言った。

 「セアム、お願い」

 その声に答えるようにセアムは走り出す。

 ユリス達はヌサルの後に続き森を抜け平原へと出た。

 「こっちだ」

 ヌサルはそう言い馬を操り、ユリス達の前方を走る。

 草原の景色がものすごい速さで過ぎ去って行く。

 ヌサルは道に詳しいらしく、時折道ではない道を行き、また道に戻りまた外れる事を繰り返した。

 やがてヌサルは二股の道で止まった。

 「なぜ…止まるんだ!?」

 セアムに必死に捕まっていた、ノエルが息を弾ませながらヌサルに訪ねた。

 「跡だ…痕跡を辿ってる 常識だ。

 なるほど、お前たち運がいいな、私達が当たりを引き当てたかもしれない」

 フッと鼻で笑いヌサルは右側を指した。

 「こっちだ。

 おそらくこの先の谷あたりで見つけられるだろう」

 ノエルは不審そうにヌサルを見てユリスに呟く。

 「あいつら、嘘ついてないか?」

 ユリスはそれを聞いてもヌサルの指し示した方へと進んだ。

 「例えそうでも今セアムの鼻が煙できかない以上信じるしかない」

 

 しばらく走っていると前方に馬車を見つけた。

 目を凝らし見るが荷台に乗っているのは藁だけだ。

 そのせいで乗っている者の顔もよく見えない。

 しかし、セアムに速度を上げさせヌサルを追い越し前へと出る。

 やがて馬車に追いつきセアムは並走をし始めた。

 ユリスが乗り手を見るとあの顔に傷の入った男が座っているのが見える。

 男もユリスに気づき、そしてセアムに恐怖した。

 「て…てめぇ、はあん時の」

 男がそう言う前にユリスは馬車へと飛び移る。

 男はそれを見るや、馬の手綱を掴むのをやめ、座席から弓と矢を取り出しユリスへと躊躇なく弓を射った。

 それをとっさに避けユリスは危うく落ちそうになりながらもそれを躱した。

 しかしその拍子に剣が道に落ちてしまった。

 ユリスはそれでもすぐに立ち上がり男を見る。

 もうすでに次の矢を準備していた男がユリスめがけて次の矢を放つ。

 足場が悪いためユリスはまたもや危うくよけた。

 それを見てノエルが急いで剣を抜いて放ろうとするがセアムが走っている中では剣を抜くこともままならない。

 そこでノエルは鞘のベルトを外し始めた。

 ユリスはなんとか男に近づけないかと近付こうとするがその前に矢が飛びそうはさせてくれない。

 

 ノエルはなんとかベルトを外しユリスに投げ渡そうとした。

 しかし男がそれに気づきノエルに向かって矢を放とうとする。


 ノエルは目をつむった。

 しかし矢は一向に飛んでこない。

 ヒュンっと音がなり矢が飛ぶ音が鳴っただけだった。

 目を少し開けると男の弓の弦が切れている。

 「くそっヌサルの奴らか」

 ユリスが後ろを向くと少し離れた場所から馬に乗り弓を構えているヌサルの姿が見えた。

 「まだだ!」

 顔傷の男は次に剣を取り出し、ニヒルな笑みを浮かべた。

 平地ならまだともかく今の藁の足場では向こうが有利それに武器も無い。

 「ユリス‼」

 声の方を向くとノエルが剣を放おった所だった。

 それはユリスの手に収まる。

 ユリスはすぐさまノエルから投げ渡された剣を抜き男に向けた。

 ノエルの剣は新品同様に刃こぼれも無く太陽に照らされ光を反射する。

 男とユリスはゆっくりと近づき剣を交えた。

 男の剣は正確にユリスの胸に向け突きを放つ。

 それをユリスは横に弾く。

 男は素早く剣を戻しユリスに斬り込む。

 ユリスはそれを再び弾く…が藁に足を取られ体制を崩してしまった。

 「もらった!」

 ユリスに一太刀あわせようと剣を振るった時。

 後方から矢が飛び、男の手をかすめた。

 「いっ」

 剣は男の手から馬車の外へ落ちた。

 ユリスはそれを見て立ち上がった。

 しかし立ち上がると男は藁の中から布で猿轡をさせられた少女を引っ張り出し馬車の外へと落ちるのを腕一本で支えるようにする。

 「動くんじゃねえ! 

 こいつを死なせたく無かったら剣を捨てろ!」

 レイラは涙で目を腫らしユリスを見ている。

 ユリスはそれを見て剣を捨てようとした。

 しかしその時ノエルの叫ぶ声が聞こえた。

 「ユリス‼ まずい!崖だ!!」

 馬車はコントロールを失い崖の縁まで直進して来ていたのだ。

 顔傷の男は手綱を握ろうとするがこの状況ではそれも出来ない。

 もうその崖が目前となった時。

 馬車を引っ張っている馬がいな鳴き、急展開した。

 その遠心力は強く崖にそのまま引っ張られ放り出されそうになる。

 このままだと3人とも崖に落ちるそう悟った。

 その前にとユリスはレイラに飛びつこうと跳躍する。

 男は自らが危険な為レイラから手を離し、崖めがけて体が飛ぶところだった。

 ユリスは飛び空中でなんとかレイラを捕まえ胸に抱き宙を舞う。

 ドン

 と地面にあたりゴロゴロと転がるのを感じる。

 体が止まった事を感じゆっくりと目を開ける。

 ユリスが目を開くと、男が宙をきりもみしながら叫び声をあげ、下に流れる川へと落ちていく所だった。

 なんとかぎりぎりの崖の縁でユリスとレイラは止まることが出来た。

 

 ……

 レイラを助けた事件の後。

 ユリスとノエルはレイラを連れ村に戻った。

 その、途中フットと合流した。

 ヌサルはと言うとレイラを助けたと見るや、唐突に姿を消した。

 それから次の朝。

 

 ユリスはこの世界を見て旅をするという夢の為、以前の計画通りナバト村を去ろうとしていた。

 ユリスは村の人達に見送られそれぞれに別れをつげた。

 しかしノエルの姿がどこにも無い。

 きっと今頃、寝癖をつけてベットにねているのだろう。

 そう思いクスっと笑う。

 最初ノエルに出会った時の事を思い出し、そして少しの間であったがこの村の出来事を思い出し、ながら皆に手を降った。

 …

 セアムに乗るとゆっくり歩きだす。

 

 そんなセアムはなぜか遠くに興味を惹かれているらしく、尻尾をしきりに振っている。

 しばらくするとその理由が分かった。

 ノエルが相変わらずパンパンに詰まった鞄を背負い、こちらに手を振っているのが見えたからだ。

 ノエルはセアムのお気に入りの一人だから反応したのだろう。

 ノエルはユリスが近づくと駆け寄った。

 「頼みがある、旅に俺も連れて行ってくれ。

 ユリス、お前を見て思ったんだ、まだやれるんじゃないかって」

 その問にユリスは笑顔で頷き答えた。

 「良いよ。

 一緒に世界を見に行こ」

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