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WORLD 光ノ書  作者: PEN
10/53

レイラ・ハート

 レイラは帰ると今日の事はまるで無かったかのように普段通りに振る舞っていた。

 

 「おはよう、ユリスお姉ちゃん」

 早朝、下に降りるとレイラが走り、飛びついてきた。

 ユリスは驚きながらもそれを抱きしめ頭を撫でる。

 レイラは幸せそうに目をつむり抱きしめる力を強めた。

 「よお、ユリス」

 声を聞き顔を上げるとフィアナが木のフォークを持ち食事をしていた。

 「他の奴らは寝てる、団長は別みたいだけどな」

 口に食べ物を運びながらフィアナは言った。

 ユリスも席に座りレイラから食事を貰う。

 今日の食事はいつもと違い豪華な物だった。

 魚の塩焼き、ポトフそれに平パンが一個。

 「うわぁ」

 美味しそうな料理に思わず声が漏れ、さっそくとまずパンにかじりついてみた。

 「硬い…」

 その光景を見てフィアナはパンをちぎりスープにつけて食べるのをユリスに見せた。

 「こうやって食うんだ」

 それを見てパンをちぎりスープに浸してそれを真似て食べた。

 食べるとスープが絡まりパンが柔らかくなっている、それにスープの味が加わっていた。

 「美味しい」

 ユリスはこれほど美味しい料理を食べたことがない。


 スープには野菜がありそれに肉も入っている。

 なんと言ってもこのスープがいい、いつもは薄く感じてしまうがこれはほんのりとした刺激と言えばいいのか?味がある。

 「美味しいだろ、そのスープ。

 塩に鶏肉それにハーブを加えてみた」

 声のする方を見るとべスターが料理を運んでいるのが目に入った。

 「あっべスターさんありがとうございます」

 レイナはベスターを見て頭を下げた。

 「いいって事、ほらレイナちゃんも食べな団長特性メニューだ」

 ベスターは料理を置き椅子を引いてレイラを座らせた。

 レイラは少し遠慮しながらも勧められおずおずと食べた。

 一口食べると目を見開き驚いた。

 「何これ⁉」

 レイラは夢中になってスープをぺろりと飲み干し、魚は、とかぶりつきこれもガツガツと食べ、たちまち皿の上は骨だけになった。

 「あっ」

 後に残されたのは硬いパンだけだ。

 ベスターはあまりの食べっぷりに笑いながら、カラ皿を取り厨房に向かいスープを入れて戻って来た。

 「べスターさん、どうやってこのスープを作ったんですか?」

 レイラはベスターの持ってきたスープを見ながら聞いた。

 「ああ、まず鳥の骨とハーブあと野菜クズを強火で茹でてだな………そんで野菜と肉を炒めて最後に塩を使うんだ」

 「塩ですか」

 レイラはなんとか覚えようと指を折りながらながらそれを反復する。

 そんな姿にユリスはクスっと笑い、空になった皿を集めそれを厨房へと運んでいった。

 …

 昼 ユリスはセアムを門の外に連れて行き、丘の上で温かい太陽に照らされながらセアムを撫でている。

 その下ではフットとノエルがあーだこーだと怒鳴り合いながらキャラバンを修理している。

 それを眺め、ユリスは日向ぼっこを楽しんでいた。

 「違う、ここがこーなってこうだろ」

 「親父、そうじゃねえこうだ!!」

 少し高い丘の上から見る村はとても綺麗だ。

 木が黒くなりボロボロだがユリスにはそれが綺麗で落ち着く光景だと思った。

 太陽の光をチラチラと反射する屋根や水たまり…。

 何より平和そうに村の皆が行き来して話したりしているのを眺めるのはとても心地がいい。

 ガタンと音を立てて村に向かう荷車を引く馬が一頭、その荷車にはセーラが乗っている。

 腕の傷が治り、普段の生活に復帰したようだ。

 ふぅと息を吐き、セアムを枕に一眠りしようかと、もたれかかる。

 セアムのお腹は毛で覆われていて柔らかい。

 セアムもまた、ユリスに顔を近づけ寄り添うように目をつむった。

 …

 しばらくの間、眠っているとセアムが顔を舐めユリスを起こした。

 「んん…」

 目を開け起きるとレイラとフット、ノエル、セーラがこちらに歩いて来ているのが見えた。

 「お姉ちゃーん、ご飯持ってきたから食べよー」

 レイラが元気そうに手に持つバスケットを揺らしながら近づいてくる。

 

 ユリスは腕を伸ばしあくびをしながら上半身を起こし、風を感じながら皆が来るのを待つ。

 レイラはユリスの正面に座りユリスにもたれ掛かった。

 セーラとフットが横に座り、ノエルは…と言うとセアムに顔を舐められ、セアムと格闘を繰り広げていた。

 セアムはノエルが気に入っているようで尻尾をぶんぶんと振りノエルに顔を近づけている。

 

 「セアムが遊びたいって」

 ユリスはノエルを見て、クスリと笑いながらその光景を眺める。

 レイラはユリスの回された腕を掴み片手で楽しそうにバスケットからパンとチーズを取り出していた。

 「おっ、うまそうだな」

 フットはバスケットを覗き込もうと体を持ち上げる。

 ユリスはセーラの綺麗になった腕を見て言った。

 「セーラ、もう怪我は大丈夫なの?」

 「はい、ユリスさんの魔法薬のおかげでこの通りですよ」

 セーラは大丈夫とばかりに腕を伸ばして見せた。

 フットはそれを見たあとしみじみと村を見て言った。

 「本当に感謝したりないぜ。

 嬢ちゃんがいなかったら、セーラは今ここに居なかったんだからな。

 それに隣村のやつから聞いたんだがレイラも助けてくれたんだって?」

 フットは村をそのまま見たまま続けた

 「…全員この村じゃあ家族見たいなもんだ、本当に感謝しても足りないくらいだ。

 もちろん嬢ちゃんも、もう家族も同然だ」

 フットは笑いユリスの肩を叩いて言う。

 その後も全員で話に花を咲かせ笑いあった。

 この時間がずっと続けば良いのにユリスはそんな事を思いながらそれぞれの顔を見ながら思った。

 ようやくセアムから開放されたノエルは昼食を終えるやいなや再びセアムに襲われなすすべなく捕まって下敷きにされた。

 笑い、その後もセアムやレイラと遊んでいると楽しい時間はあっという間に過ぎ、空はいつの間にか赤やけになっていた。

 

 ユリスは唐突に遠くに見える山々を見ていると思いを掻き立てられた。

 あの先には何があるのだろうかと。

 その時ユリスは迷ったここの暮らしは楽しい、しかし私がやりたい、知りたい事は他にある。

 世界を見て回る、それが幼い頃からのユリスの夢だ。

 

 ユリスは皆を見ると全員に向けて言った。

 「私、明日この村出るね」

 さり気なく言ったつもりの言葉だった。

 その言葉に反応しレイラの手がユリスの手をぎゅっと強く握った。

 レイラは不安そうな顔でまるで引き止めているかのように手を握り、離そうとしなかった。

 「どおして?、この村で…一緒にいて」

 レイラが泣きはじめた事にユリスは驚いた。

 「レイラ…」

 ユリスが屈むとレイラは抱きつき強く、強く抱きしめてきた。

 「お願い、…行かないで…」

 そんな二人の顔を赤い太陽が照らす。

 ユリスはレイラに優しく話した。

 

 「ごめん…でもね、私には夢があるの、世界をこの目で見て…感じて、旅をしたいの」

 フットはレイラに困り果てた顔をして頭をかき。

 セーラはレイラの肩に手を回し体を寄せ頭をなでた。

 その夜、部屋の中でユリスは悩んでいた。 ここに残りたいと言う気持ちが確かにあり、ユリスを迷わせる。

 確かに、ここにいるのは心地がいい。

 しかし旅をやめるつもりは無い。

 

 …

 世界を見て回るそれがユリスの子供の時からの夢だ、何度もそう思うが。

 それでもレイラの顔が頭をよぎる。

 しばらく頭を悩ませていると扉からノックが聞こえた。

 扉を開けると、そこにはフットが立っていた。

 「すまん、少し話したいことがあってな」

 フットは部屋に入り扉を閉めて続けた。

 「レイラの事で話がある」

 フットは部屋を行ったり来たりした後口を開いた。

 「まずはレイラの親の話をするか」

 フットは項垂れながら言葉を続けた。

 「レイラの父は戦死、母は三年前に山賊に襲われて亡くなってる」

 フットは苦々しいと顔に出しながら続ける。

 「それで私が、親代わりをした…つもりだ。

 本当にあの子は強い子だよ。母親が亡くなったあと、少ししてすぐに店を開いた。 

 私がこの店を守るんだって言ってな」

 フットはこの事を他の誰かに話した事はなく、ユリスに話す事で肩の荷が下りるような気がして話を早めた。

 「レイラの母のリリファ・ハートは正義感が強く勇敢で無鉄砲な所があった。

 そして優しく弱っている者お腹を空かせてる奴を捕まえてきては無償で宿に泊まらせてた」

 ユリスは何も言わずフットの話を聞いていた。

 「それが皮肉なことだ、それが災いしリリファはこの世を去っちまった。

 俺があの日ついてやってれば…」

 フットは天井を見上げ見て首を振った。

 「すまん、こんな話をする気じゃ無かったんだが、話がそれちまった。

 本題だが頼みがある、お前さんこの村にのこっちゃあくれねえか」

 その言葉にユリスは少し困った表情をした。

 「すまん、無理なのは分かってるただ最近のレイラを見てるとな」

 フットは涙ぐみ袖で目を拭った。

 「レイラはきっとお前さんの事を母親と被せてんだと思う。

 あんなに素直に笑ったり甘えてる姿を見るのはリリファが死んじまう前ぐらいなもんだからついな」

 フットは頭をかきユリスを見て一息ついた。

 「いや、すまなかった。

 今のは忘れてくれ、ついお前さんがこの村にもし居てくれたらって思っただけだ」

 フットは腰を上げて扉へと向かった

 「ほんと、俺何しに来たんだかな」

 フットは悩み事が消えたかのように笑い。

 「まあ、レイラの事は心配すんな。

 俺がしかりしねーとな」

 そう言ってフットは扉を閉め出ていった。

 翌朝 ユリスは荷物をまとめ、旅の支度を終えて下に降りた。

 レイラに最後の別れをしようと姿を探すがどこにも居ない。

 「おかしいな…」

 すると上から音が聞こえて来る音がした。ユリスはその音がした方へと見たが下に降りてくる姿はフィアナのものだった。

 寝ぼけ眼で階段を降りてくるフィアナはあくびをしている。

 「おい… ユリスいるか⁉」

 ユリスとフィアナは声がした方を見ると、ノエルがフラフラとよろけながら扉に倒れこむのが見えた。

 ユリスはノエルに駆け寄った。

 「ノエル‼ どうしたの!?」

 ノエルは鼻が痛むのか鼻を抑えている。

 見るとノエルの鼻から出た血が固まり顔にベッタリとついていた。

 「すまん、俺のせいだ…俺の」

 ノエルは涙を噛み殺す様につぶやく

 「ノエル 何があったの?」

 「あいつらだヌサルの奴らリリファさんだけじゃ飽き足らずレイラを…」

 ユリスの胸にとても嫌な予感が走り昨日のフットの言っていた事を思い出した。

 「レイラがどうかしたの⁉」

 ユリスはノエルの肩を揺すり先の言葉を急かす。

 「顔に傷のある男に連れ去られた…止めようとしたが…逆にやられた。

 おまけにこの症状はドルミル草だ…視界と平衡感覚がおかしい…気おつけろ…」

 ノエルは全て言いきったと力が抜け倒れ込んだ。

 すると一枚の紙切れがノエルのポケットから落ちた。

    捜索依頼

 リリファ・ハートの捜索

 

 指名 ユリス・アラフェル

 依頼 レイラ・ハート

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