世界よりあなたへ
私の世界にようこそ どうぞ読んでってくださいませ
(*・ω・)*_ _)ペコリ
光あれ
何も無い底無しの闇に一筋の光が現れた。
それは瞬く間に広がり世界を照らしそして命を創造した。
世界……私にとって世界とは未知だ。
昔、おとぎ話で聞いたことがある。…この世界は果てしなく広いと。
海と言う巨大な湖…それも向こう岸が見え無い程の大きさの。
陸には視界に収まりきらないほどの山や森、氷で覆われている凍土。大地は果てしなく広い。
信じられるだろうか?
そんなものが存在し世界にはそれが広がっていると。
砂の海に岩の大地そこに人々が集い築き上げた都市達。
世界にそびえ立つ山々は溶岩と呼ばれる水の炎が吹き出す山が存在している。
世界は広い、そんな不思議な場所が数え切れないくらいに広がっている。
感じたいこの目でこの肌で。
少女はそう夢に焦れ、今までいた我が家を抜け出し旅に出た。
……
からっと晴れわたった空、一台の荷馬車がガラガラと騒音を立てながら走行していた。
「お願いもっと速く‼」
手綱を握る手に力が入る。荷馬車に積んであった小麦は崩れ、道に放り出されてもうほとんど残っていない。
馬車を走らせる女性、セーラは今まで感じたことの無いほどの恐怖に襲われていた。
後ろを振り向くと隣を大きな牙を持つ、虎の様な魔物が並走しているのが見る。
その魔物が徐々に速度を上げてゆき、馬車を追い抜き始めた。
セーラは生きている心地がしなかった。
そしてついに魔物が追い越した瞬間、大きな体で飛び掛かかる姿が目に映り、まるでスロー再生を見ている様な感覚に飲まれた。
彼女の悲鳴はあたりに響き、魔物は馬の首に飛び掛かって荷馬車を倒した。
荷馬車が倒れ、まるで自分自身の体が玩具の人形にでもなったかのように転げ出される。
地面に打ち付けられる衝撃で気が遠くなる。
「ううっ」
鈍い感覚の中、なんとか目を開くとあの魔物が馬の首を咥え、こちらを眺めているのが見えた。
獲物が逃げない事を確認しているのだろうか。
逃げ無ければ…セーラは立ち上がろうとした。しかし鈍い痛みがそれを拒絶するかの様に突き刺さり、そうさせてくれない。
思うように動くのが難しい、そんな中、魔物の恐ろしい唸り声が背後に聞こえ恐怖が先程よりもさらに大きく膨れ上がっていく。
「ぐっ…がっ」
彼女の声ともならないうめき声が、彼女の口から漏れた。
少しでもその魔物から離れようと腕を伸ばし、這いつくばりながらでも体を動かす。
彼女の額は落ちた時に傷をおったのだろうか、額にはパックリと割れた生々しい傷口から血が流れている。
「ああっうう」
強く胸を打ったらしく声も、息でさえも難しい。後ろから重いズシリとした足音と共に鼻をスンスン鳴らす音が近づいて来るのが音で分かった。
もうだめだ、近付いてくる…と感じたとき、体中が震え、背後からいつ襲われ…そして殺されるのか、その光景が何度も何度も脳裏に浮かび上がり恐怖が身体をそして歯をカタカタといわせる。
声も出せず、背に恐怖を感じ続け、耐えきれなくなり彼女は草を手で握りしめ目を強く閉じた。
死を覚悟した瞬間だった、しかし彼女、セーラが思っていた瞬間はなぜかやってこなかった。
終わりを待つのがとても長く感じる、その時間を終わらせたのは自分では無い女性の声だった。
「大丈夫?」
魔物が居るであろう背中から声が聞こえた。
「へっ?」
セーラは困惑した。
一体何が起きているのか確認しようとゆっくり、後ろを振り向く。そこにはぼんやりとしか見る事ができなかったが、ぼやけた視界の中、金色の髪をした女性の顔が確かにあった。
セーラは胸にあった恐怖が驚くほどすっと取り払われて安心し、体の力が抜けるのを感じセーラの意識は急に遠くに薄れていき深い眠りへと落ちた。
…
スンスン
顔に風があたるのを感じセーラは夢の中から引き上げられた。
まだ寝ていたい。
「うーん」
セーラは声を上げ、顔に風が当たらないようにと逆方向に寝返りをうった。
次の瞬間、顔に暖かい何かがベチャっと触れ、セーラはびっくりして飛び上がった。
目を開けると、そこには炎に照らされた、大きな狼の顔が間近で覗き込んでいるのがセーラの瞳に写った。
「ひっ」
彼女の悲鳴が夜になり真っ暗となった平野に響いた。
…
ユリス・アラフェルは暗闇の中、近くの小川までいき水を水筒にくみ入れ手戻っている所だった。
声が聞こえたので急いで向かい焚き火の側で倒れている女性を見る、するとそこには相棒でもある巨狼のセア厶が、助けた女性の顔をこれでもかと舐めている所だった。
彼女はキャーと悲鳴を上げ何度もセアムに向かって食べないでと懇願していた。
「セアム 少し離れて」
ユリスはセアムを離し女性を見た。
彼女は体が痛むのか目を力強く閉じ怯えている。
ユリスは彼女が身を縮めているのでどこかまだ痛むのかと思った。
「どこか痛むの?」
セーラは胸を抑えて落ち着き、ゆっくりと目を開けユリスを見た。
彼女は自分と同じくらいの若い歳 に金髪で胸にはネックレスをしているのか白いチェーンが首に見える。
そして何より一番印象的だったのは引き込まれそうな青い目だった。
ユリスはセーラに先程汲んできた水を差し出した。
ユリスの差し出す水を見て受け取る。
よほど喉が乾いていたらしいセーラはグビグビと一息に水を飲んだ。
水を飲み終えるとセーラは落ち着いたようで口を開いた。
「ありがとうございます。
あの、あなたは…?」
セーラは礼を言い疑問を口にした。
「私はユリスそれであそこに居るのがセアム」
そう言い指を指した。
指した方を見ると少し離れた場所で火の光に照らされ、蝶を追いかけている先程の狼が見えた。
セーラはその後しばらく、セア厶を警戒しているようで度々セアムを見ていた。
セアラの姿はまさに巨狼と言った見た目で、襲われた魔物を想起させるには十分過ぎた。
「大丈夫、セアムは優しいから」
ユリスはセーラを落ち着かせるようにそう言った。
その言葉を聞いたセーラはセアムをまじまじと見てようやく、少し笑みがこぼれた。
そこにはセアムが犬の様に舌を出して座っている姿があった。
ユリスは話を続ける。
「それにセア厶が気づいたおかげで助ける事ができた」
ところで名前は…とユリスが言おうとするとそれを察したのかはっとしてセーラが口を開いた。
「すいません私が先に名乗るべきでした。私はセーラ。
セーラ・クリスティです
麦畑で取れた小麦を街に売りに行く途中で…」
そう言いながら少し先にある焚き火に照らされた道端にある壊れた荷車と散乱した荷を見つけ、あの時の恐怖を思い出し体が震えた。
「本当に助かりました…本当に」
そう言い、彼女は泣いてしまった。
「私、ここで死ぬのかと…」
泣いているのを見てユリスはポケットから絹でできた布を取り出しセーラの涙を拭い、セアムはクーンと鳴き近づいてセーラの隣に座った。
「ところでご飯にしない?
きっと元気が出るよ」
ユリスはセーラを励まそうと話を変えた。
「いえ、まだ落ち着けなくて」
昼の出来事がどうしても頭から離れない。
ユリスはそれでもと話を続けた。
「その体だからね何か食べて力つけたほうがいいよ。血もかなり出てたから」
そう言われセーラは手を眺める、それは包帯に巻かれた手だった。
それだけではなく怪我を負った部分にも包帯が巻かれていた。
「これは…」
セーラは起き上がって体を見ようと上半身を動かそうとしたら先程まで大丈夫だったのに急に痛みが全身に走り抜けた。
「いっ」
それを見ていたセア厶は起きない方がいいとセーラに顔を近づけ寝かす。
「まだ動かない方がいいよ。
私が出来る応急処置をしただけだから。
明日すぐ、詳しい人に見てもらった方が良い。近くに治せる人はいる?」
そう言いながらユリスは焚き火で肉を焼き始めた。
「それなら村に腕のいいお医者様がいます」
「医者?…所でその村って何?」
この質問にセーラは一瞬呆けた。
「あなたは街の騎士か冒険者様では無いのですか?」
ユリスは高価そうな剣に軽装の鎧を付けていたので、ユリスの身なりを見て騎士か冒険者だろうと勝手にそう思い込んでいたのだが、どうやら違うらしい。
「騎士?冒険者?」
ユリスは、ぼつぼつとそれを呟いて繰り返した。
「申し訳ありません。ユリス様は何方からいらしたのですか?」
単なる疑問だった、騎士や冒険者と言った単語が通じない。なら田舎から出てきた田舎者と言う簡単な答えなのだが防具はただの田舎者が着ているとは思えない素晴らしいものだ。
肉を焼いていい感じだと見ているユリスを見ながらどこから来たのだろうという疑問が浮かびセーラの興味を誘った。
ユリスは両手の指を組み焚き火に向けて祈りを捧げた。
それが終わると木に刺された肉を両手に持ち近づきながらやっと答えた。
「んーと。オムニアっていう所、結構森の深い所から来たかな」
ユリスは寝ているセーラの隣に座った。
「オムニア?ですかこの辺りにそのような村は聞きませんが」
セーラは当然ながらここらの事は知っている。しかしオムニアなんて場所は聞いたことがなかった。
きっと他の国、イデアル方面から来たに違いないと勝手に納得した。
その後二人と一匹は夕食を頂いた。
ユリスとセーラは食事中、冒険者や騎士について話した。
それをユリスは不思議そうに、そして興味深そうに聞きいっていたのだった。
…
早朝、ユリスは壊れた荷馬車の部品を集め荒く直した。
「まあこれなら持つかな」
そしてその荷馬車にセア厶を繫げる。
「すいません何から何まで」
「困った時は助け合うのは当然でしょ?」
そう言いユリスは動けないセーラをお姫様抱っこの態勢で持ち上げ荷馬車の麦の上に寝かせた。
セーラはユリスが女性と分かって居るにもかかわらずなんだか頬が、軽く持ち上げられ、まるでおとぎ話に出てくる王子と姫様みたいだなとつい赤くなってしまった。
「これなら振動はある程度抑えられるだろうけど多少はするから、痛かったらいってね」
荷馬車には現代のサスペンションの様な道での衝撃吸収部品は無く。さらに道は整備されていない為振動がかなりあった。
……
「この先に都市への中継のために昔作られた村があります」
草原を離れしばらく山沿いの道を進む。
最後に丘を越えるとそこには広大な麦畑がまるで大きな絨毯かのように広がっていた。
それは風が通るたびに波を呼び、太陽がキラキラと雲の間から麦畑を照らす。
美しい景色が目の前の眼下に広がっていた。
「うわぁ」
今まで見たことの無い光景に思わず声が漏れる。
セア厶もまた嬉しそうに足を軽く荷車を運んでいく。
「綺麗…」
ユリスは黄金の草原を見渡し瞳を閉じて暖かな風を感じた。
思ったとおりだ世界は美しい