表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/26

14話 王都防衛戦 その1

***


謁見の間

「皆の者、今この王都は敵襲を受けている! デーテ大臣並び、第一大隊は私に対し反旗を翻した! 他にも今ここに居ないものは敵対したとみなすのだ!」

 ガゼットは手を掲げ、騎士たちに号令を出す。その時だった。

キュィィィィン

 ウィズを乗せたクラリスのバイクが謁見の間に飛び込んでくる。

「ウィズ!」

 ウィズはクラリスのバイクからアローン目がけて飛び降りる。アローンはそれを抱きとめる。

「えと、あの、空の大きな船からいっぱい人が降ってきて、クラリスさん、私と居たんだけど、このまま迎撃に行くって……」

 あたふたしながら、必死に状況を説明する。

「ご苦労! ウィズ君。現在城内にも反乱したオッドナイトが溢れている。ハイナンバーは各部隊を率いてクラリスの援護兼、町の警護にあたれ! ローナンバーはアローンと協力し、城内のオッドナイトを排除せよ!」

 騎士団の中でも一から六までの騎士団をハイナンバー。七から十二までの騎士団をローナンバーと呼ぶ。

 ガゼットの号令を受け、ハイナンバーの騎士たちが謁見の間を飛び出していく。それと入れ替わるようにルークが巨大な剣を抱えて謁見の間に飛び込んでくる。その剣は剣というより板のような形状で鞘にしまわれ、鎖で厳重に封がされていた。

「お待たせしました。えっと、僕はどうしたらいいですか?」

「ルークはここで私とお嬢様がたの護衛だ。じきにここにも敵兵がなだれ込んでくるだろう。ルークよ、存分に力を振るえ」

 ガゼットの激励にルークは最敬礼で返す。

「アローンさん、アローンさんもここでルークの援護をお願いします。私達もルークの実力はよう知らんくて。ぎょうさん敵が来た時にどうなるやら……」

 騎士大隊第十二隊長のアリスがどこかで聞いたことのあるような訛りでアローンに告げる。彼女も女性ながらの隊長騎士で、流れるようなきれいな金髪に、どこかで見たことのあるような面影を感じる少女だった。彼女はそれだけアローンに告げると、他のローナンバーたちと部屋を飛び出していく。

アローンはウィズとレイラにガゼットの隣に居るよう目配せをする。二人もしっかりとそれを察してガゼットの元へ駆け寄る。

 アローンはそれを確認すると大太刀を手に迎撃態勢を取る。

「おい。その剣、飾りじゃないならしっかり構えとけ。いつ敵が来るかわからんぞ」

「はい!」

 ルークは鞘に巻かれた鎖を肩にするりと掛け、意を決して剣を引き抜く。すると、ルークの髪がふわりと逆立ち、ルークの青い瞳が黒色に輝く。

「さぁ、やるぜ! オッサン!」

 先ほどまでの礼儀正しい少年から品性が消える。

「これは……?」

 目の当たりにした不思議な光景にアローンが思わず声を漏らす。

「ふふふ……彼こそが俺の秘密兵器。そして彼のもう一つの姿。その実力はまさに十三番隊の隊長に相応しいものだ。さぁ! 存分に舞え! ビショップ!」

「言われなくてもやってやるゼ! オウサマ!」

 ガゼットの指示に、ビショップと呼ばれた少年は不敵に笑みを浮かべるのだった。

***

城下町

 クラリスは手際よく広場から大通りにかけての避難指示を行っていた。

それでも住人たちはこの異常事態にまだ現実感を持てておらず、野次馬心から空を見上げて唖然としている者、訳も分からず大声を出す者、町は混乱で溢れ返っていた。

「もう。キリがないわね」

 それでも飛空艇から降りてきた敵は銃を乱射しながら町中に参着し住人たちはますます混乱を極めた。

「あぁ! もう!」

 クラリスは住人たちの最前列に立ち、大きく両手を広げる。仰ぐように両手を動かすと敵の銃弾は大きく逸れていく。

「おぉ! 奇跡だ……」

 住人たちは避難の足を止め、クラリスに見入る。

「もう! そんなこと言ってないで早く逃げなさい!」

 クラリスは応戦しながら喝を飛ばす。住人たちはその喝に慌てて避難していく。

 そこへ斧を持った兵士が業を煮やしてクラリスに直接切りかかる。

 クラリスは大きく広げた手を交差させる。すると、斧がクラリスに届く前に兵士の腕が切れ地面へと落ちる。兵士たちも何が起こっているのかわからずにクラリスと距離を取り、膠着状態となる。

「少しは賢いみたいね。でもダメよ。もう許さないわ」

 クラリスは腕を伸ばすと器用に指を折り曲げる。その表情に一切の緩みはない。

「ぐっ、うぉ!」

 兵士の一人が宙に浮き、持っている銃を仲間に向けて乱射する。周囲の兵士は仲間の銃弾によって撃たれ、倒れる。兵士たちもすかさず仲間に向けて応戦し、宙に浮いた兵士は仲間の銃弾に晒され息絶える。しかし、宙に浮いた兵士は息絶えてなお銃撃を続ける。やがて兵士の弾倉が空になるとクラリスは腕を大きく引く。宙に浮いた兵士はバラバラになり、地面へとその肉片をばらまく。

 そしてクラリスはまた腕を伸ばすと、別の兵士が同じように宙へ浮き同じ末路を辿った。

「なんだコイツ。魔術か……」

 兵士たちは狼狽えながら増援を呼ぶ。町中から敵兵が大通りに雪崩れ込んでくる。前から後ろから敵兵がぐるりとクラリスを取り囲む。

クラリスは両手を大きく掲げ、くるりと一回転する。たったそれだけでクラリスに雪崩れ込んだ敵兵は肉片となり、まるで結解のようにクラリスの周囲の地面に血の輪ができる。

「こ、これは!? 糸だ! こいつ、糸使いか……」

「ご名答。……もっとも、それを知ったところであなたたちにはどうすることも出来ないわ」

 敵兵たちはじりじりと一定の距離を保ちつつ、しかし確実にクラリスを包囲していく。

そこへ王都の騎士団たちがやってきて、クラリスへの包囲を崩していく。

「クラリス隊長! お疲れ様です。四番隊のガルフです。自分以下四番隊、六番隊、あと、隊長の二番隊。援護に入ります。ご指示を!」

 四番隊隊長のガルフがクラリスに指示を求める。

「二番隊は私の援護に入りなさい。このまま南門に向けて掃討する。四番隊は東へ行軍。六番隊は西へ向けて行軍。各自、敵兵を一人たりとも逃すな!」

 クラリスの指示により、騎士たちはそれぞれの持ち場へ走って行く。しかし、まだまだ空からは大量の敵兵が降ってきていた。

「もう! 本当にキリがないわ。このままだとジリ貧ね。こうなったら……」

 騎士が空けた敵兵の隙間からクラリスが方位を突破する。それによって、敵兵がクラリスの前方に集中する形となる。

 敵兵が一斉にクラリスたち目がけ銃を乱射する。

「だから、無意味だってわからないの!?」

スパパパパ

 クラリスは両手を広げくるりと回る。前方の敵兵はまとめて肉塊へと変わる。

「ここはあらかた片付いたわ。まだまだ敵は町中に居るわ。急ぐわよ!」

 クラリスが騎士団を率いて前進しようとしたその時。

「あらあら、酷いわぁ。こんなにもバラバラに壊してくれちゃって。こうなってしまうともう、元にも戻らないじゃない」

「酷い人だわ。酷い人。せっかくのお人形が台無しよ」

 前進しようとしたクラリスの後方から間延びした声が響く。

「誰!?」

 振り返ったクラリスたちの前に現れたのは大鎌を携えた赤いドレスの女の子。その隣には白い華美なショットガンを携えた白いドレスの女の子。二人は双子なのか、非常に似通った顔をしていた。

「こんにちは。ごきげんよう。そして……さようなら。私はメルロー」

「こんにちは。お猿さん。そして……さようなら。私はシャルドネ」

「人呼んでミディーライトシスターズ」

「人呼んでミディーライトシスターズ」

 二人は互いに鏡写しのように手を合わせ。ドレスの裾を持ち上げる。

「……騎士団、クラリスよ」

 クラリスは最低限の名乗りを上げる。

「私たちの土人形を台無しにしたのはあなたね」

「隠したってわかるわ。あなた強そうだもん。周りのお猿さんたちとは全然違う」

「あなたの体を粉々に切り刻むのはとても楽しそう」

「そうね。あなたの体を風穴だらけにするのはとても楽しそう」

 二人はニヤニヤしながら交互にクラリスに語りかける。

「た、隊長!」

兵士が異常事態に気付く。

「これは!?」

 先ほどまで血を流して地面に転がっていた敵兵が、みな泥の塊のようになっている。

「うふふ、可愛いでしょう」

「うふふ、可哀想でしょう」

「さぁ、私達とも踊りましょう」

「さぁ、私達とも踊りましょう」

 そう言うと二人の姉妹は、ますます歪に口角を吊り上げるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ