98話 負けちゃったらダメですか?
「え、なんで……」
僕の頭は思考停止していた。
ビーチバレーで勝利したのは皆越先輩、瑠璃ペアだったのだ。
試合が始まって最初の方は、割と拮抗していた。
しかし両者ともに数点取った頃、
「さて、では体も温まってきたしそろそろ本気を出すか」
皆越先輩は気合を入れるように右肩を回す。
いやいやいや、今まで良い勝負だったよね。
これより強くなるってどういうこと?
まあ、今まで強さが同じ位だったのは良いとしよう。
でも、僕たちのチームが弱いのはおかしくないか。
僕の予想通り先輩2人の実力は同じくらいだった。
予想と違ったのは瑠璃だ。
彼女、いかにも引きこもりでどんくさそうなのに、意外と運動ができる。
悔しいながらも、僕以上にビーチバレーはうまかった。
すると結果は言わずもがな。
僕たちのチームの負けに終わったのだ。
「なんで……だ」
両膝をついてうなだれる僕。
「ほら、たまたま今日は運が悪かっただけよ……」
そういう弥久先輩は僕と目を合わせてくれない。
「そんな風に腫れ物に触るように扱われると、理不尽に罵声を浴びせられるよりくるものがあるんですが……」
「瑠璃も少しやりすぎちゃったかもしれませんし……元気を取り戻してください」
「やめて、僕のライフはもうゼロよ」
2人が逆効果ながらも僕を慰めている間、皆越先輩は勝利したことを喜びはしゃいでいた。
なんだか先輩らしい。
「でも、瑠璃ってもしかしてビーチバレーでもやっていたのか?」
当然の疑問だ。
僕が見る限りではこの中でも1番うまかったのでは無いかと思うくらいだ。
それならば昔、部活などでやっていたのかもしれないと思うのが普通だろう。
仮に、部活でやっていなかったとしても多少経験していたとしてもおかしくない。
むしろ、経験が無いほうがおかしなほどだ。
「どうしてそんなこと聞くんですか?えっと、今日が初めてでしたけど?あ、でも楽しかったですよ」
ああ、そりゃ楽しかったでしょうね。あんだけ圧勝すれば。
「どうしたんですか、そんな顔して」
僕はお前のせいだと言ってやりたがったが、流石にそれだと八つ当たりになるので必死に理性を保った。
「ほら泰、生きていたらきっと良いこともあると思うの」
「もう、本当にやめてください。惨めになります」
皆越先輩はまだ勝ったことが嬉しいのか1人で騒いでいた。




