97話 ビーチバレーじゃダメですか?
ちょうど僕たちがスイカを食べ終わったころ、1人の老人がやってきた。
皆越先輩がじーやと呼んでいた人だ。
「ああ、すまないね。ありがとう」
先輩に何か渡したかと思えば、じーやはまたどこかへ行ってしまった。
「先輩何もらったんですか?」
気になったので当然聞いてみる。
「これか?これはほら、」
先輩はそう言うと手に持っていた物体に、口を付けて息を送り込んだ。
すると、その物体はみるみる膨らみやがて球状になった。
赤や黄色、青などビビットな色合いをしたビーチボールだ。
「スイカを食べている間に取りに行ってもらってたんだ」
先輩はそのボールを僕の方へトスしてきた。
僕は慌てて受け止める。
「ダメじゃないか。手で持つのは反則だぞ」
「いや、そんなこと言っても……」
突然投げてこられたら普通持ってしまうだろう。
一般人にそんなアスリート並みの反射神経を求められても酷というものだ。
「まあいい。これでビーチバーレーできるな」
皆越先輩は嬉々として立ち上がる。
他の2人も意外とやり気のようでストレッチを始めていた。
仕方なく僕は、砂浜に線を引き簡易的なコートを作る。
ポールはそこら辺にあった棒を、網はタオルをつなげてその棒に結び付けておいた。
「さて、チームわけだが……私と瑠璃君。泰君と弥久でどうだ」
どうだと聞いたというのに意見を求める気はないらしく、さっさと自分のコートへ向かう。
「私は泰と一緒が良かったんですがっ」
さっそく反論したのは瑠璃だった。
「何?泰君と一緒が良かったのか。でもそれだと彼の顔が正面から見えないが本当に良いのか?泰君が一生懸命頑張るのきっとカッコいいと思うけどなー」
「皆越先輩そこまで私のことを考えてくれていたんですね。一生ついていきます」
瑠璃が、皆越先輩の手下になった。
そもそも瑠璃のことなんて一切考えてないだろう。
反対のコートに移動するより、瑠璃を丸め込んだ方が楽だと判断しただけだと思う。
先輩はそういう人だ。
僕もコートに入りいよいよ始めようとする。
「私何も言ってないんだけど」
それに不満を持った弥久先輩が口を出す。
「部長命令だ」
適当な理由をつけられ、反論することが馬鹿らしく思えたのか先輩は素直に僕と同じコートに入ってきた。
そして、試合は始まった。
男は自分1人。
この勝負はこちら側が圧倒的有利なはずだ。
それに先輩2人は同じくらい運動できそうだが、問題は敵チームの瑠璃だ。
これで負けたとしたら、僕は瑠璃より運動音痴ということになりかねない。
つまり負けるはずのないゲームなのだ。
僕は圧倒的勝利をつかみ取るために勝負に意気込んだ。




