95話 海に行ったらダメですか?
青い海、白い砂浜。燦々と輝く太陽。
僕は今真夏のビーチに来ていた。
ちょうどシーズン真っ盛り。
それだというのに人は僕たち以外には見当たらない。
「ここって穴場かなんかなんですか?」
不思議に思って、企画した皆越先輩に聞いてみる。
「穴場…というのかは知らないが、一応うちのプライベートビーチだぞ」
「えっと、プライベートビーチってあの?」
「ああ、そうだが。……どうかしたか?」
ビーチなんて本当に持っている人いるんだ……
ちなみに、弥久先輩と瑠璃の2人は前もって知っていたのかさして驚く様子はない。
「……瑠璃、あいつは放っておいて着替えに行くわよ」
「泰の着替えを見るまで私はここから動きません」
バカなことを言っている瑠璃を先輩が引っ張っていってる。
そもそも、僕もいくら人がいないと言ってもこんな開放的な場所で着替えるわけがない。
だから一生そこで動かないで居ろと言いたいところだ。
「私も着替えてくるな。ちょっと遠いがあっちの更衣室を使ってくれて構わないから。では後でな」
去りながら後ろ向きに手をひらひらとさせる皆越先輩。
先輩を見送った後僕も彼女らが向かったのとは別の更衣室へ向かった。
僕は日に照らされながら5分ほど歩き更衣室についた。
数字で表すとそうでもないように見えるが地味に長い。
足場が悪いので尚更遠く感じたというのもあるかもしれないが、そんな事よりも、
「なんか広くね?」
そう、このビーチやけに広い。
「(いやいやいや、これ個人で所有するようなものじゃないでしょ)」
まあ、よく考えてみたらお嬢様的なところも垣間見えたので今更驚くことでもないのかもしれないが。
しかし、それを持ってすら広かったので許してほしい。
驚いてばかりでも仕方ないので、さっさと着替えを済ませて戻った。
分かれた地点まで戻ると、すでに着替えを終わらせ3人が待っていた。
「遅いわよ」
不満を垂れているのは弥久先輩。
「弥久、日焼け止めちゃんと塗ったか?」
弥久先輩を心配しているのが皆越先輩だ。
瑠璃はと言うと、すでにバテているようでパラソルの下で突っ伏していた。
「遅いって言われても……」
「まあ私たちは服の下に水着来ていたからな。それよりどうだ、私の水着は」
ひらりと一周して見せる皆越先輩。
制服の上からでもスタイルが良いのは分かっていたが、水着だとそれが顕著に表れる。
回った影響で先輩を追従するように閃くパレオ。
風になびくストレートヘアは、太陽をキラキラと乱反射してよりきれいに見える。
僕は思わず顔をそらしてしまう。
「(反則だろ……)」
「その、もしかして似合ってなかったか?」
先ほどまでとは違い不安そうな表情になる。
「いやいや、そんな事全然ないですよ。めっちゃ可愛いと思います!」
「ふふふ、お世辞でもそれは嬉しいな……」
「お世辞じゃないですって」
皆越先輩をほめていると横からデコピンが飛んできた。
ちなみにかなり痛い。
「何…するん…ですか……」
デコピンとは思えぬ痛さに頭を抱える。
「あんたがゆかりに鼻の下伸ばしてるからでしょうが」
「僕はそんなだらしない顔していません。」
本気でそんな事言ってるのかと、半目で見てくる弥久先輩。
カバンからコンパクトを取り出すと、それを開いて向けてきた。
「ふむ。なんという美青年」
「微青年ねハイハイ」
「そんなこと言ってますけど、先輩のその水着は何ですか?小学生ですか?」
弥久先輩が着ている水着はワンピース型だ。
まあデザイン的にはそれほど幼稚なものではないのだが、先輩が着ると何だか「お可愛らしいですね。特に胸元が」といった感じになっている。
そんなことは間違ても言葉にはしないが。
「あんたが何考えてるか当ててあげようか#」
顔を引きつらせている弥久先輩が怖い。
「おかしいな、お可愛らしいなんて言ってないはずなのに」
「やっぱりそんな事考えてたのね」
次の瞬間グーが飛んできて僕は砂浜に沈められた。
少しの間意識を失っていたようで、気が付くとパラソルの下で寝ていた。
「あ…意識が戻ったようですね……」
目線の先には、瑠璃の顔があった。
声には覇気が感じられないが、僕も人のことを言えたものではないだろう。
それにしても、さっきのことが思い出せない。
弥久先輩がやけにニコニコしているのだけは分かる。
きっと僕は、ワインソムリエもびっくりなほどの饒舌で先輩をほめちぎったのだろうと思うことで納得した。
「泰、私の水着はどうですか……?」
瑠璃の水着は、シンプルなビキニで素材を引き立てている。
まあ、僕の好みではある。
だがしかし、
「良いんじゃない?」
それを悟られないようにそっけなく答えておいた。
だというのに、満足げにほほ笑む瑠璃。
案外僕の心の内側もばれているのかもしれない。
「それより、大丈夫か?」
誤魔化すという側面もあったのだが、心配しているのも本心だ。
「ああ、ちょっと日に当たってくらっとしちゃっただけです。でももう大丈夫です」
それは本当に大丈夫なのだろうか?
「さてっ!遊びましょう!」
さっきまでのは仮病だと言わんばかりに元気に立ち上がる。
それがいけなかったのだろう、ふらついてしゃがみ込む瑠璃。
「もう少しだけ休むか……」
「そうですね……」
2人肩を並べてもう30分だけ休憩した。




