92話 デートが終わっちゃダメですか?
レストランで昼食を済ませて出てきた瑠璃は、先ほどまでとは違い水族館の限定Tシャツを着ていた。
「いやー、料理も無料にしてくれましたし、服も着替えられて結果よかったですね」
そう、汚された服の代わりにと、間に合わせではあるがお土産売り場に売っていたTシャツをもらったのだ。
青色ベースでタツノオトシゴがプリントされている。
最初はイルカがプリントされていた物を渡されていた。
「こんなの嫌ですー」
当然のことながら全力で嫌がる瑠璃。
普通なら、そんな子供みたいなこと言うなと叱っていたかもしれないが、事情が事情だ。僕もそんなことは言わない。
「すみません、彼女イルカと色々ありまして……」
僕はかわいそうに思って助け舟を出す。
それに店員も何かを察したのか、他のプリントTシャツを持ってきてくれたのだ。
時は再び現在に戻る。
「さて、次は何処にいこっか」
「???」
不思議そうな顔で見てくる。
「どうしたんだ?」
「いえ、意外と今回のデートに乗り気なのかなと思いまして。楽しんでくれてるみたいでうれしいです」
「別にそういうわけじゃないから。ほら、せっかく来たんだからちゃんと見て回らないと損だろ」
「ふふふ、そういう事にしといてあげます」
これ以上何かいても瑠璃が喜ぶだけだと思ったのでもうそのことには触れないことにした。
瑠璃はこれくらいで観念してくれたようでそれ以上に何か言わるることはなかった。
「そうですね。では近くから見て回りませんか?」
特に否定するする理由もないので頷いておく。
向かったのは、チンアナゴや、熱帯魚など小さい生き物が展示されているところ。
その後もふれあいプールなどまだ行っていない所を回り、水族館を後にすることになった。
水族館を出たのが午後3時。
外はまだ明るく、この後どこか行こうと思えば行けそうだ。
しかし瑠璃は、
「今日はありがとうございました。おかげですごく楽しかったです」
「え、もう良いの?」
てっきりどこかへ付き合わされるのかと思っていたのでつい口が滑ってしまう。
「ふむ。もしかして私とまだわかれたくなかったんですか?」
「そういうわけじゃないけど……ほら、暇だし?」
「なるほどですね……ふむ。でも私は帰らせてもらいますね。家でこの幸せをかみしめていたいですし。でもどうしてもというのだったら、また今度行きましょうね」
「え?」
「ダメですか?」
瑠璃が瞳を潤ませ見つめてくる。
こういう事ができるから女の子はずるいと思う。
本気で泣いているわけではないとは思うが、そうされると無下にもできない。
「はぁ……わかった……」
僕がそう告げるとさっきまでの表情は演技でしたと言わんばかりに笑顔になる。
それを見てため息をつく僕だった。




