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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
蒼井瑠璃デート編
89/216

88話 ラッコじゃダメですか?

 水族館の入場ゲートを超えるとそこには入場者を出迎えるように10メートルは優に越す水槽があった。


「おっきーですね!」


「本当に大きいな」


 太陽光を取り入れる構造になっているらしく、深さのわりに意外と中は明るい。


 銀色の魚がその光を反射してきらきらと輝いて見えた。


「イワシでもこれだけ沢山いると見ごたえありますね」


 瑠璃は楽しそうに水槽に張り付いている。


「ああれ見てください、サメですよ。でも同じ水槽に入れてて食べられないんでしょうか」


「確か食べられるはずだったような。どこかで数が少なくなるから足すとか聞いたことある」


「へーそうなんですね」


 さっきから2種類の魚にしか注目してないが、この水槽には多くの種類の色とりどりな魚が展示されている。


 さながら海の宝石箱のような光景だ。


 近くに立っている説明書きによると、この水族館で最も多くの種類が飼育されているらしい。


「奥にはどんな魚がいるんでしょうかね?」


「奥には確か熱帯魚とか海獣とかいるみたいだな」


「海獣ですか?」


「ああ、ラッコとかペンギンとかいるみたいだよ」


「この奥にはあのかわいいやつらがいるんですね!今すぐ見に行きましょう!」


 そう言うや否や館の奥へと駆け出していく。


 僕は見失わないように慌てて追いかけた。




 目的の生き物がいる水槽についたようで、瑠璃は立ち止まってくれた。


 休日なので、客入りもそこそこある。


 もう少しで見失いそうだったので助かった。


 万が一の時は携帯があるが、それでもはぐれないに越したことはない。



「おい、そんなに走ってはぐれたらどうするんだ」


「うーん、そうですねー」


 何か考えている様子の瑠璃。


 そして考えがまとまったのか右手を前に出してきた。


「なに?この手は」


「何って、わかってるくせにぃ~つなぐために決まってるじゃないですか」


 こいつは何を言っているのだろう。


 僕が瑠璃と手をつなぐとでも本当に思っているのだろうか?


 なので、差し出されたその手は無視した。


「ほらラッコ見るためにここに来たんだろ」


「まあそうなんですけど……」


 不服そうな瑠璃。


「ちょっと手をつなぐくらい良いじゃないですか……」


 明らかに聞こえるように独り言を言ってくるが勤めて無視する。


 すると諦めたようで、素直にラッコを見始めた。



「ぷかぷかと気持ちよさそうですね」


「僕もあんな気ままに生きていけたらどんなに良いか……」


「せっかくの水族館で現実を思い出させないでください。……虚しくなります」


「…………」



 社会で疲れた心を癒すかのように、ラッコをただ眺める2人。


「あ、あれ見てください」


「ん?」


 瑠璃が指をさすので、自然とそちらの方に視線が流れる。


 そこにあったのは2匹仲良く浮かびながら手をつないでいるラッコだった。


「そういえばラッコって、寝てるとき離れ離れにならないように手をつないで寝るそうですね」


 記憶を掘り起こせばそんなことを聞いたことがあるような気がする。


「ヘーソウナンダ」


「はぐれないように手をつなぐそうですよ」


「ソウナンダ」


「むぅ 泰の意地悪」


 なんか膨れているが、逆にかわいい。


 僕は惑わされないようにそっぽを向き、1人先を進んだ。

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