85話 良い結果じゃダメですか?
あれから特になにもなく、期末テストがやってきた。
瑠璃がちゃんと勉強していたのかは定かではないが、放課後すぐに帰っていたは下駄箱の靴がなくなっていたのでわかっている。
部室に行くには昇降口を通る必要があるのだが下足に履き替える必要はないので部活に行っていたという可能性もないだろう。
普段は放課後ともなると(放課後に限らずとも)ベタベタとくっついてきたのだが、ここ最近はそれもなかった。
あれだけ鬱陶しく感じていたのに、今になると何だか少し寂しいのは不思議なものだ。
だからと言って、それはそれで構わないと思うのだが。
何はともあれ、あと5分もすれば1時限目のテストが始まるだろう。
先ほどまで寝ていた瑠璃も、今は起きてその時を待っていた。
「始めっ」
先生の歯切れの良い号令と共に最初のテストが幕を開けた。
テスト期間は午前中だけで学校が終わるのだが、瑠璃の態度に変化はなくこれまで通りだった。
そのまま3日がたち、テストが終わる。
「雪本さん」
テストから解放された僕は、帰って残りの半日を楽しむため早々に帰る準備をしていたのだが池田先生に呼び止められた。
「どうかしたんですか?」
「あら、自覚がないのですか?あなたたちのおかげで蒼井さん今回のテスト点数良さそうだったので。まだ、今日の分は採点終わってないみたいですが、それでもこの分だと問題ないでしょう」
「勉強ちゃんとしてたんですね」
「?? どう言うことですか?」
「ああ、それは・・・」
僕はこれまでの瑠璃の行動を大まかに説明した。
「なるほど、そうでしたか。それにしても彼女が自ら勉強に勤しむなんて。どんな餌で釣ったんですか?」
餌と言う言葉を聞いて冷や汗が出てきた。
「どうしましたか?顔色が悪いようですが。大丈夫ですか?」
「あ……いえ、だいじょうぶです……」
ヤバイ、不味ったかもしれない。
瑠璃との約束のことだ。
いや、僕は認めてはいないのだが、彼女はなにが何でも言うことをきかせてくるだろう。
そう思うと気が気じゃなかった。
と思っていた時期もあった。
テストが開けてから数日。
もうすでに全てのテストが返却され結果はわかっているといるのに、瑠璃は一向にそのことに触れてこなかった。
僕の悩みは杞憂に終わったららしかった。
「ゆたかぁ〜」
背中に覆いかぶさるように体を預け、声をかけてきた瑠璃。
そんな体勢なので当然背後にはそういう感触があるわけで……
これを跳ね除けられないのも、悲しい男の性なのだろう。
ここ最近は味わってなかったので尚更だ。
「どうしたんだ?」
僕は極めて冷静さを装いながら返事をした」
「ふふふぅ、あれを見てください」
瑠璃が自信気に指差す方向を見れば、そこには学年の成績が張り出されていた。
テストも全部帰ってきたし、そろそろそんな時期かと思い取り敢えず自分の結果を探す。
上から見ていけば3番目のところに雪本泰の字を見つけた。
今回のテストは割と自信があったので予想通り良い結果だった。
他の上位者は誰かとそのまま流し見をしようとする。
しかしその目はすぐ次の段で止まる。
「!?」
あまりの驚きのあまり、思考がしばらくフリーズした。
そこに書かれていた文字は、『蒼井瑠璃』
「えへへ、どうですか?すごいでしょ〜」
さらに横に書かれた合計点を見てさらに驚く。
なぜならば、僕の点数と1点違いだったからだ。
これで瑠璃に負けていたらショックで立ち直れなかったかもしれないが、1点だけでも勝っててよかったと思った。
「さて、では本題です。こんなに頑張った瑠璃にはご褒美が必要だと思います」
「…………」
「ご褒美が必要です!」
ずいっと顔を乗り出して訴えてくる。
「なにが望みだ……」
僕は死刑宣告をされた囚人のような気分で回答を待つ。
そして彼女望みはすぐにわかった。
「私とデートをしましょう!」




