84話 放任したらダメですか?
流石に中学生の範囲となれば問題なかった瑠璃だったが、今日やっている高校の範囲にはかなり苦戦しているみたいだった。
「そろそろ休憩を入れた方が良いんじゃないですかね」
連続で勉強していても疲れてきて効率的によくない。
そこで提案してみた。
「そうね、少し休憩を入れましょうか」
その言葉に瑠璃も肩の力が抜けていくのがわかった。
瑠璃は頑張っている方だと思う。
しかし、モチベーションがもうそろそろ限界なのは簡単にわかる。
それは先輩方もわかっていたのだろう。
「瑠璃君。今回のテストで良い点が取れたら、泰君が何でも願いを聞いてくれるそうだ」
「はぁ!?」
先輩相手に思わずそんな声を出してしまう。
「何だ、ダメだったのか?」
それくらいどうしたと言う顔で言ってくる皆越先輩。
「ダメでしょ!何で僕がそんなことしないといけないんですか」
「そりゃ、泰君がまだなにもしていないからだろ。それとも、これより何か良い意見でもあるのか」
「それは……」
ここ数日考えていたのだがどうにも思いつかなかった。
それに、この皆越先輩の意見より効果がありそうなものとなるとさらに難しい。
「泰が、なんでもか〜なににしましょうかね〜」
「まだするとか言ってないからな」
「おや、なら代わりの案でも出してもらおうか」
数日考えて思いつかなかったことが、数秒で思いつくわけもなく、僕はそれを受け入れるしかなかった。
「よし決まりました。泰へのお願い事。そうなれば、勉強をしないといけないので私は帰りますね。では!」
勢いよく飛び出していく瑠璃。
彼女のやる気はみて取れたので、誰も止めるものはいなかった。
止めたところで、より良い勉強法があるわけでもない。
ましてやそれが原因でせっかく出たやる気を落としてしまっては仕方がないだろう。
部活の帰り道。
太陽が沈みかけの通学路を1人で歩いていた。
そしてふと思いつく。
何で僕はこんなに必死に勉強を教えようとしているのだろうと。
よく考えてみれば、たとえ瑠璃が悪い点数をとったとしてもそれは、瑠璃のせいであり僕のせいではないのではないだろうか。
それに、今回のテストで瑠璃が高得点をとると、僕にとっては害ですらあるのだ。
ならば、邪魔まではしないまでもこのまま放置で良いのではないだろうか。
そう思った僕は明日から、放課後瑠璃を捕まえるのをやめた。
連れて行かなかったら何と言われるかわからなかったし、テスト準備期間に部活に出る意味もなくなったので早々に家に帰り自分の勉強に勤しんだ。




