82話 面倒くさい子はダメですか?
放課後になって瑠璃の方を見るといなくなっていた。
どうやらまた逃がしてしまったようだ。
2度とこうならないようにと、ずっと見張っていいたのだがちょっとしたすきを突かれてしまった。
弥久先輩になんて言い訳しようか考えながら部室に向かっていると昇降口のところで立ち往生している瑠璃を見つけた。
今日はうなるような暑さのカンカン照りだった。
そう言う日は決まって滝のようなにわか雨が降るのが常だろう。
さっきまで晴れていたからなのか瑠璃は傘をもっていないようだった。
そうこうしているうちに、瑠璃も僕のことに気付いたみたいだ。
逃げようと反対の玄関の方向に向き直るが、向いた先の天気を見てそれを諦めたようにこっちへ来た。
「今日は最悪です」
「雨が降ったこと?それとも僕につかまったこと?」
「雨が降ったことです。泰につかまったことはむしろ嬉しかったですよ。だって、自分を追いかけてくれたわけですから」
「お前なんか面倒くさいな」
「めんどくさい子は嫌いですか?」
何だかかわいい顔で訪ねてきているが騙されてはダメだ。
ここははっきり言わないと。
「ああ、嫌いだよ」
しかしそれを聞いて、ニヤニヤした表情になる瑠璃。
何だか嫌な予感がする。
気のせいであってほしいが、望みは薄そうだと予感する。
「なるほどなるほど。つまり泰は重い女よりビッチが好きっていうわけですか」
「おい、そんな大声でそんなことを言うな」
慌てて口をふさいだが遅かったようで、周りから変な視線や嘲笑うような声が聞こえてくる。
「チッ、行くぞ瑠璃」
僕は瑠璃の手を引き逃げるようにその場から立ち去った。
立ち去った後に何か言われているかもしれないが、悪口なんて聞こえてなければどうということない。
気にした方が負けだ。
「泰の方から手をつないでくれるなんて、今日は大胆ですね」
「つないでいるんじゃない、捕まえているんだ。だって逃げるだろ離したら」
「逃げませんよ。……ん?」
試しに僕は、手を放してみた。
案の定一目散に来た道を逆行する瑠璃。
と言っても、鈍足な彼女なのですぐに捕まえることができたのだが。
その後、ほぼ引きずるようにして部室へたどり着いた。
ここに来るまで普段より少し時間がかかっていたためか、すでに先輩2人は来ていた。
「遅かt、ってどうしたの。疲れているみたいだけど」
「瑠璃が逃げたので捕まえてました」
「それは……おつかれさま」
とりあえず僕は部室の椅子に座り一息つく。
弥久先輩は、カバンをごそごそとやって何やら準備をしているみたいだった。
おそらく昨日言っていたことのやつだろうと思う。
彼女が準備をしている時間が退屈だったのか、瑠璃が口を開いた。
「そういえば、泰はビッチな女の子が好きみたいですよ」
訂正。口を開いたのではなく爆弾を投下した。
「びびびび、ビッチ!?」
弥久先輩が、準備していた参考書やらをぼとぼとと落としていた。
「違います!勝手に瑠璃が言っていただけです」
「本当?ちなみになんだけど、どういう子がタイプなの。特に他意はないのだけど。知っている先輩とかで例えてくれるとわかりやすいかも」
なんかこいつも面倒くさい。
「少なくとも、面倒くさい子はあまり好きじゃないです」
「え?それ私のことじゃないわよね!?」
「言っていいですか。そういうところです」
弥久先輩は真っ白な灰になった。
「どうだ私は、まあ面倒くさくはあるかもしれんが、けなげに尽くす方だと思うぞ」
「…………」
揶揄っているとはわかっていても、その不敵な笑みには思わずドキリとしてしまう。
「なんてな。それで、読太話はこれくらいにしてそろそろ勉強を始めるとするか」
読太話って……人の恋路をつまらないって言っちゃってるよ。
そもそも、先輩なら気づいてないのかもしれないのかもしれないけど。
ふと弥久先輩を見れば石灰が石化し始めていた。
勉強が始まるのはそれから10分くらい経った後だった。




