79話 グダグダな展開じゃダメですか?
紙を目の前にした皆越先輩が嬉々とした声で言う。
「それでは、言い出しっぺの私から始めようとするか」
彼女はさっきまで触っていたシャーペンを2回ノックして芯を出すと、まだ何も書かれていない用紙にペンを走らせ始めた。
「そうだな、手始めにこんな感じはどうだろうか。よし書いたから次は瑠璃君の番だ」
瑠璃は「はい~任せてください~」と自信ありげに受け取ると少し考えた後書き始めた。
「皆越先輩、速かったですね。もうすでに考えていたんですか?」
「いいや、今思いついたやつだよ。と言ってもよくある展開を書いただけだがな」
そうこうしているうちに、瑠璃から今度は僕へ紙が回ってきた。
なになに、
皆越【何でもない何時もの朝、私は玄関から飛び出した拍子にいすゞのエルフに吹っ飛ばされた。】
まあよくある展開と聞いてどうせこんな事だろうなと思った。
でも方向性が明確なのでこれから続けやすくもあるので、良い始まりなのかもしれない。
瑠璃【ちゃんちゃん】
「(は?)」
一瞬理解が追い付かずもう一度読み直す。
しかし、だからと言って結果が変わるわけでもなく、
「おい、瑠璃。これだと終わっちゃうだろが!話聞いてたのか!?」
僕は、瑠璃のこめかみへこぶしをめり込ませる。
「痛たたたたっ!ちょっと、痛いです!」
涙目になってきてさすがにやりすぎたかと思って、手を放す。
「なんなんだよこれ」
僕は、書いてある文章をはじめから、読み上げた。
「あんたね……」
あきれた声を上げる弥久先輩。
一方、皆越先輩は楽しそうに笑い声をあげている。
「わわわ私は、ただ泰を試してあげようと?」
「何で疑問形なんだよ。そもそも、お前のためにやっているの忘れたのか。もしかして、教科書の書き取りの方が良かったのか?」
「それだけは絶対にやです。次から真面目にするので勘弁してください。次から」
今回の文を変更する気はないらしい。
まあ、1度だけなら許してやるとしよう。
それにしても、ここからどうやって続けるか……
また新しい物語を始めるのも選択肢としてはありかもしれないが、それは何だか負けた気がする。
それに瑠璃がニヤニヤしながら見ているのにそんな事やりたくなかった。
ならばどうするか……
僕は、思考を巡らせた後ペンを持ち続きを書いた。
それを弥久先輩に渡す。
どうしようもなくなった時、それを解決する方法は大きく分けて2つある。
まず1つ目は、自分が成長する方法。
少年漫画でよくあるあれだ。
そして2つ目は……
紙を受け取った弥久先輩の顔が引きつる。
泰【その瞬間、そんなコントような効果音がリアルに聞こえてきた】
何か困難にぶつかった時、それを先延ばしにし無理やり誰かに押し付ける。
これが2つ目の方法だ。
「(本当にごめん。弥久先輩)」
僕は心の中で謝罪をするが、見たこともないような目で睨まれているのから察するに通じてなさそうだった。
5分くらい経っただろうか。
先ほどまで目を閉じて考えていた、弥久先輩が顔を上げペンを取った。
ようやく考えがまとまったみたいだ。
長い時間考えていた文章をさらさらと数秒で書き上げると、次の番である皆越先輩に渡していた。
ようやく1周が終わったが、すでに先が思いやられる展開となっていた。




