76話 赤点じゃダメですか?
だいぶ気温も上がり暑さがきつくなり始めたこの季節。
しかし、もう少しで夏休みが始まると思えば何とか過ごせる。
場所はいつものように文芸部部室。
「それでは皆さんよろしくお願いします」
池田先生は瑠璃を除く文芸部3人にお願いをしていた。
「わかりました。何とかできるだけやってみます」
僕たちが先生から頼まれていたことは外でもない瑠璃の成績アップだった。
夏休みが近づいてくると、必然的に期末テストがやってくる。
それが終われば、夏休みが始まるので仕方ないと思えば特に憂鬱さは感じない。
その期末テストで瑠璃に勉強を教えるのを、頼まれたのだ。
彼女なにを隠そう、小説を書くこと以外の能力がからっきしだ。
というか、どうやってこの学校に入れたのか不思議なレベルで成績が悪いのだ。
みんなに見られているというのに、コソコソと部室から逃げ出そうとする瑠璃。
「おい、見えてるからな。逃げられるとおもうなよ」
「ギクッ」
僕は瑠璃の制服の首元を掴むとさっきまで座っていた椅子に改めて座らせ直す。
「たかだか、1、2週間勉強したくらいで成績が上がるわけないんですよ。なので今更勉強しても無意味なのです。その次のテストで頑張るので見逃してください」
「そうやって後伸ばしにするからどんどん大変になって行くんだろ」
「瑠璃君。たかだか1、2週間と言ったね?」
「はい、そんな短い時間で私の頭がよくなるとでも?」
「なるさ」
皆越先輩は自信満々に告げる。
確かに、ほとんど勉強しているように見えない先輩なら超効率的な勉強法を知っていても不思議ではないが。
「そんな勉強法があるなら僕にも教えてくださいよ」
「ああ、構わないよ」
「なら、私も教えてもらおうかしら」
「ならば、皆越家秘伝の勉強術を教えてやろう。まずお前たち、ワークブックは持ってるな?」
「ありますよ〜まあ、今まで使ったことなかったですが」
「ほう、それなら好都合だな。まずはそれをノートに写して100回解く。それが終わったら、次はノートに写して100回解くんだ。そしてさらに100回解く。これを1セットとして100セット。計300回やったらあら不思議、君はもう成績上位者だ。どうだ簡単だろ?」
「ねえ、泰。簡単って何だったけ?」
「僕もわからないです……」
「そんなの全然楽できないじゃないですか!!」
瑠璃は、そう叫ぶと教室から目にもとまらぬ速さで逃げ出していった。
「しまったな。冗談のつもりだったんだが……」
冗談だったのかよ。割と言いそうなことだったから信じちゃったよ。
僕と弥久先輩は、同じことを思い唖然としていた。




