72話 エドワード・H・マーカムじゃダメですか?4
僕が放った玉は、思い通りの軌道で転がって行った。
それがまずは、左側のピンを正確に捉える。
勢い良くあたり、ピンは弾け飛ぶ。
そして、もう1つのピンの方へと回転しながら横へ移動する。
うまくいった、そう思ったのだがあと一歩のところで届かず、結局倒すことはできなかった。
「惜しかったですね、泰くん」
「…………」
僕はショックで何も言えない。
コトリはそれを察してそれ以上何も言わず、ただ見守ってくれていた。
少したった頃。
「もう1回……」
「しょうがないですね。良いですよもう1回だけ」
それからもう1ゲーム始めた。
ただし、もう無理に勝とうということはしなかった。
楽しむことを優先したのだ。
それを察してくれたのか、コトリも手を抜くと言ったら聞こえは悪いが、僕のノリに合わせてくれたみたいだった。
僕は3ゲーム目にしてやっとボーリングを心から楽しめた。
ボーリング場からでて、その通り沿いを歩いている。
「結局負けた」
「私は勝ちました」
「こっちは凹んでるのに、それはないよ」
コトリは楽しそうにニコニコと笑っている。
「次は映画を見に行きましょう」
あれだけ再戦を申し込んでおいて、断るわけにも行かないだろう。
「分かったよ」
「やったっ」
喜ぶ彼女を見ると悪い気はしない。
しばらく歩けば、目的の映画館にたどり着いたようで、
「ここです。さて、何を見ましょうか」
映画館に掛かっているポスターを2人で一緒に眺める。
「何か見たいのとかある?」
こういう時は恋愛映画とかが定番なのだろうかと考えていると、
「私これがみたいです」
コトリが指を差したのは、なんとゾンビ映画だった。
「なんかあれだね……」
「どうかしましたか?」
「いや……なんでもない」
正直言ってこういうときにゾンビ映画なんてムードも何もないような気がするが、別に僕が気にすることではないだろう。
席はもうすぐ始まる直前だと言うこともあり殆ど埋まっていた。
殆ど2つ並びの席がなかったが唯一、一箇所だけ空いていた。
「いやー良かったですね。ばらばらになっちゃうのかと思って焦りました」
「そうだね。それにしても、はしゃぎすぎてポップコーン落とさないようにね」
コトリがジャンプするたびにあふれ出しそうになり危なっかしい。
というより、少しはこぼれている。
椅子に座ると、ちょうど映画が始まった。
上映中は隣のコトリが五月蠅くてあまり集中できなかった。
内容はまあ、面白かった、かな?
だからと言って、ぜったい年頃の男女が2人で見るようなものではないのだが。
「面白かったですね」
「うん。それでさ……」
「あ、次はここ行きたいんだ」
スマホを見せてくるコトリ。
僕は、また話をする機会を逃してしまった。
カフェに行くらしいのでそこでどうにでもなるかと楽観的に考えておくことにした。




