69話 エドワード・H・マーカムじゃダメですか?
僕が、通っている学校は泰やゆかりとは違うが、至って普通の高校だ。
9歳の頃に母の母国である日本にイギリスから移り住んできた。
母は日本人だと言ってもどうやら海外の血も入っているようで、そのためか僕の見た目は思いっきりヨーロッパ系だ。
だからといって、特に敬遠されることもなく楽しく過ごせている。
こんな見た目の違う僕でも変わらぬように扱ってくれる友達に感謝だ。
休み時間のこと。
「エド君今日の放課後とか予定開いてる?」
今日の放課後は最近できたハンバーグ屋さんに泰と行く約束をしていた。
「今日はちょっと厳しいかな。先約がいるから。ごめんね」
「うんん。全然いいの。それより今度予定開いている時とかある?」
「えっと、今週末なら開いてるけど」
「そうなんだ。なら、土曜とか付き合ってくれないかな?」
「と言われても……」
「お願い。1回でいいから」
かなり真剣な表情で頼み込まれたので悩んでしまう。
「分かった」
結局僕は折れてしまった。
スマホを起動して、予定を打ち込む。
どうせなら、風邪でも引いてしまいたいと思ったのだった。
「それでどうだと思う?」
僕が話しかけているのは、親友の泰だ。
今はお店につき注文も済んでいる。
後は、運ばれてくるのを待つだけだ。
「いや、どうって言われても」
「僕は少なからず彼女が僕に好意を持っているんじゃないかと思っているのだけど……」
「はっーー、良いですね、モテる人はっ。えぇ?自慢ですか」
「自慢というわけではないんだけど。ほら、好きな人がいるから相談をしてきてるって可能性もあるじゃないか。それだと、なんか悩んでいる自分がばかばかしいというか」
悩みを告げると、さっきまでへらへらしていた泰が真剣な表情になる。
「うーん。でもそれはないと思うけど。さすがに好きでもない相手に休日呼び出すかな?僕なら校内、あるいはそうじゃなくても学校の近くくらいにちょっと呼び出すと思うけど。それに、好きな人がほかにいたとして、その人に誰かと歩いているとことか絶対見られたくないし」
確かにそうだよなと思いながら頷いてみる。
「そうか……それなら憂鬱だな」
自分に好きな人がいる状況で、誰かから好意を寄せられるのは、例えその人を何とも思っていなかったとしても結構来るものがある。
「まあ、僕はその手のことで力になって上げれそうにないから、がんばれとしか言いようが無いな」
「応援してくれるだけでもうれしいよ。ありがとね」
会話が一段落したのを見計らったかのように、料理が運ばれてくる。
僕たちが選んだのは、1番人気とかいうスペシャルハンバーグだった。
ハンバーグを眺めていると、泰がフォークとナイフを渡してくれた。
それを受け取り、肉に切れ込みを入れる。
初めにじゅわっと肉汁があふれ出し、少し遅れてとろけたチーズが流れてくる。
見ているだけでもおいしいそれを一気に口の中に放り込む。
「ほぉふっ」
出来立ての熱さに少し驚きながらもかみしめると、あれだけ流れてというのに、まだどれだけ隠し持っていたんだというほどの肉汁が口の中に広がる。
つづく秘伝のスパイスが良いアクセントとなって病みつきになる。
ご飯との相性も抜群で、表現は古いかもしれないが、ほっぺたが落ちそうなほどというのがぴったりだ。
「並んだ甲斐があったな」
「そうだね」
1時間ほどの待ちがあったが、それを持て余るほどのおいしさだった。
僕たちはしっかり味わいながらも一気に食べ終えると今日は解散することにした。
「じゃあ、まあ、がんばれよ」
「うん、自分なりにやってみるよ」
「僕としては、エドがその子に惚れてくれたら、ライバルが減って嬉しんだけどね」
そうはならないと知っているくせに、まったく意地悪だ。
帰路に就くとき胃が重たかったのは食べすぎたせいだと言聞かせた。
数日たって、予定していた土曜日。
残念ながら僕は体調が絶好調なのだった。




