6話 図書室じゃダメですか?
最近は部室でラノベを読むことが多かったので、たまには普通の文学小説も読もうと放課後1番に図書室へ向かった。
図書室に入り、適当に本を手に取る。学校の図書室ならではの破れかけた為、何度も補修された本だ。
何人もの人の手に渡り、それぞれの物語があると思うと感慨深いものがある。
「泰君?」
後ろから皆越先輩らしき声が聞こえ振り向く。
そこには先輩が立っていた。
「君はここで何をしているんだい?」
「何って、最近部室の本ばかりだったのでたまには別のを読もうかなと……。そういう先輩は?」
「私かい?私は部室に置けなくなった本を学校の書庫に置かせにもらいに来たんだよ」
もしかして、あれ以上の本があるのか……
「先輩、書庫って?」
「ん?ああ、こっちだよ」
そう言って先輩は歩き出した。ついてこいの意だろう。
防火扉のような鉄扉のとこまで来た。
先輩はカギを制服のポケットから取り出し、ロックを解除する。
ドアノブをひねると、ギギッと重たい音を立てて扉が開いた。
そこには、部室の10倍はあろうかというラノベが並んでいた。
「先輩これ、なんですか……」
「何って、本だが」
先輩はそういうがそんなことは分かりきっている。
「違いますよ。僕が言ってるのはこの量のことです」
「毎日読んでると部室に置けないほどに増えてな。大抵は私のポケットマネーだから、もって帰っても良いのだが多すぎて大変なので寄付という形で置かせてもらっている」
一体1日どれだけ読めばこれだけ増えるのだろう。
池田先生も凄いが皆越先輩もたいがいだと思う。
「それにしても2年も経てば、かなり増えるな」
「(に、2年……)」
「さて、そろそろ部室に戻ろうか」
「そ、そうですね……」
泰はその動揺そのまま図書室を出るのだった。
「遅かったわね」
部室へ着くと既に桜田弥久は既に来ていた。
「ちょっと書庫へ行ってたらちょうど泰君とあってな。ちょっとコレクションを自慢していた」
「弥久先輩は図書室とか行かないんですか?」
「えー、図書室?あそこ私の好きな本置いてないんだよね」
確かに弥久先輩がラノベ以外を読んでいるとこを見たことないかもしれない。
「それに、人前で読んだり借りたりしたくないというか。何読んでるか見られるのが恥ずかしんだよね」
本棚を見ればその人の性格がわかるというように、何を読んでるか知られるのは心の中を見られているような感覚なのかもしれない。
「皆越先輩も図書室で借りたりしない感じですか?」
「私は別に抵抗なく借りれるが、もうすでに読んだ本しか図書室にないからな。最近はめっきり学校の図書室を真の目的で利用してない」
「そういう泰はどうなのよ」
図書館自体は好きだ。
ただし、最近は部室の居心地が良くここにいることが多くなった。
「中学の時はよく行ってましたよ。最近はめっきり行かなくなりましたが」
「弥久先輩はともかく県立図書館とかだったら蔵書も多いですし、そういうところは利用しないんですか?」
「図書館か?たまには行ったりはするが。まあ、足しげく通うほどではないな」
「それに、本はできるだけ買いたい性分なんだ。好きな作家さんへの敬意としてな」
「それ、わかる気がします。」
アイドルファンがアイドルを応援するように、読書家だって作家を応援したい気持ちはある。
それが本の購入という形なのだろう。
僕自身も、好きな先生の作品は持っていたりする。
大抵はもうこの世にいない人なのだけれど。
「あたしもさ、好きな作品は買いたいんだけどさすがに家に置けないのよね。家族に見られたくないし。本当に好きなのは、いくつかここに置かせてもらってるけど」
「弥久先輩も本を買ったりするんですね。てっきり店員に渡すのを躊躇して買えないのかと思ってました」
「何言ってるの?お店で買えるわけないじゃん」
「え?ああ、通販とかですか?」
「そう。ただ家に直接送ってもらうんじゃなくてコンビニ受け取りだけどね」
「……先輩、何エログッズを買う男子高校生みたいなことしてるんですか」
「そっ、そういえばゆかりは必ず本屋で買うわよね」
弥久先輩は都合が悪くなったのか露骨に話題を皆越先輩に移した。
「そうだな。私は、あの本に満たされた空間が好きなんだ。それに通販だと巡り会えなかった本に出合えるかもしれないからな」
本屋さんにはポップなどで宣伝されている。
そこで興味を持って実際に手に取った経験のある泰には共感できる話だった。
「本屋の話で思い出したのだが、今週末は新刊の発売日だったな。どうだ、買い物付き合ってくれないか?」
「私はパス」
弥久先輩は即答で拒否した。
彼女の事情を知ってるからなのか、いつものことだからなのか、皆越先輩は特に気に留める様子もない。
ならもともと、僕を誘うのが目的だったのだろう。
「泰君はどうだ?予定とか開いてるか?」
「ええ、暇ですよ」
特に予定は決まってなかったので断る理由もないだろう。
ずっと本から目を離さなかった、弥久先輩がこちらを見ていた。
「なんですか?弥久先輩」
「いや何でもない」
皆越先輩に僕が何かするとでも思っているのだろうか?
誤解は解けていたと思っていたんだが……
何はともあれ僕と皆越先輩で買い出しに行くことが決まったのであった。




