64話 桜田弥久じゃダメですか?5
カランコローンと心地よい音を響かせて、入ってきたのはおばちゃんという言葉がぴったりな人だった。
私も何度か見たことのある人だった。
「いらっしゃいませ」
私は予め教えられたとおりにお冷を持って注文を取りに行った。
「あら、もしかして新人さん?」
ややおっとりした、優しい声だ。
聞いていると包まれている用で安心する声だった。
「はい、今日から働かさせてもらってます」
「大変かもしれないけどがんばてね」
「ありがとうござます」
応援の言葉がもらえてやる気が出た。
その気持のままカウンターへ戻る。
「それで弥久ちゃん注文は」
うっかり注文を忘れた私だった。
それから午前中は数人が来るくらいだった。
忙しいと聞いていていたからどんなものかと覚悟していたのだが……
そう思ったのもつかの間。
12時を回ると一気に客足が増え忙しくなった。
「注文お願いします」
「はーい、ただいまー」
料理を運び終わると、呼ばれたテーブルのもとへと向かう。
「季節のパスタとアイスコーヒーお願いします」
「かしこまりました」
注文を受けるとそれをマスターに伝え、今度は別の注文を取りに行ったり、出来上がった料理を運んだりした。
私がカウンターとテーブルを何十往復もした頃になると、少しずつ人が減って、やがて落ち着いた。
「大変だったでしょ?これを1人でやるのは大変だからね。弥久ちゃんが来てくれて助かったよ。また、夕方頃になると忙しくなるから、今後に休んでおいて」
マスターは、賄いでナポリタンを出してくれた。
やっと一息つけた。
午後からも頑張ろうと気合を入れ直した。
夕方の客は昼ほどではないにせよ多く、店内は賑わっていた。
慌ただしく客をさばいていれば、いつの間にか終業時間がやってきたのだった。
「弥久ちゃんそろそろ上がっていいよ」
私はマスターより一足先に仕事を終え、カフェを出た。
家に帰れば気が緩んだのか取るものも取らずソファーの上でそのまま寝てしまった。
なれないことをやったからなのか、学校に通うのと比べ物にならないくらいに疲れた。
1,2時間位たったあたりで目が冷めた。
本来なら、この家には私以外誰もいないので、私が晩御飯も作る必要がある。
しかし今日は、マスターが弁当をもたせてくれていたので、その必要がなっく助かった。
この疲れている状態で、ご飯まで作らないと行けないとなると骨が折れる。
マスターが作ってくれた弁当を食べながら、今日のことを思い返す。
当然大変なことがいっぱいあったが、それでも初めての体験をすることは楽しかった。
特に、常連おお客さんから激励の言葉をもらったり、お礼を言われたりするのは頑張る力をもらえた。
弁当を食べ終わると、お風呂に入る。
そして、疲れている体を早めに休めることにしたのだった。




