61話 桜田弥久じゃダメですか?2
時刻は夕方になりつつも日はまだあまり落ちていない。
梅雨明けの太陽が頬をジリジリと照りつけていた。
泰と別れて自分の家に帰る中、さっき言われたことを思い出していた。
「僕は……皆越先輩のことが好きなんです」
期待していなかったといえば嘘になるかもしれない。
しかし、案の定その期待は打ち砕かれ、粉々になった。
わかりきっていたことだ、今更落胆するほどでもない。
そうやって割り切ることができたなら、どんなに楽だったことだろう。
彼から聞きたくもない告白をされたあと、私の気持ちも知らないで相談までしてきた始末だ。
私だって、恋愛をしたことなんて今が初めてなのだ。
それも泰、彼自身に。
自分でもどうしたら良いのかわからない感情があるのに、他人になんてアドバイスできるはずもなかった。
「へーそうだったんだ」
白々しく答える私。
泰は、そんなことお構いなしに、肯定する。
今私を見てる彼の目が映しているのは、私ではなくゆかりだということが嫌でも分かる。
私を見てほしいという思いは当然ながら彼に伝わることはなかった。
「なら私が、手伝ってあげよっか?」
本当はこんなことを言いたいわけじゃない。
私だって……
でも、彼の望むものを与えて上げてそれで喜んでもらえるなら……いいや、言い訳だ。
私は怖いのだ。
今私が気持ちを打ち明けても、泰は振り向いてくれないだろう。
転ぶと知っていながら、その道を進む勇気がなかったのだ。
家に帰りベッドに寝転がる。
私は嫌なことがあればこうやって考え事をするのだ。
幼い頃から変わらない見慣れた白い景色。
しかし、今は昔と違って少し汚れていた。
そう言えばと思い出す。
私の記憶が正しければ、泰は、ゆかりに直接、想い人がいることを伝えているはずだ。
ゆかりを見る限り、誰であるのかは伏せて。
ずいぶん馬鹿なことをしたなと思う。
何もできないどこかの誰かよりは幾分かましであることは違いないのだが。
泰は知らないだろうが、ゆかりには好きな人がいる。
それは、恋愛対象としてや友達に向けるそれとは少し違う。
そんな風にぬるいものではない。
彼女はその人のことをあまり話さないが、それは話す必要がないと判断しているからなのだろうか。
聞く機会がないのでわからない。
とにかく、そんな圧倒的不利な状況であるとはつゆ知らず、泰はスタートを切っていったのだった。
私もその手助けができればと思っている。




