58話 蒼井瑠璃じゃダメですか?3
さっきので終われたらキリが良かったのですが、どうやら尺が余っているようです。
まあ、幸い、泰のことを書くのは苦労しないので問題はないのですが。
せっかくなのでここで、泰の株を上げておこうと思います。
とある日の夜のこと。
私のもとへ泰からLINEが送られてきました。
その内容は「明日、朝早くから教室で会えない?」という簡潔なものでした。
しかし私は飛んで喜びましたよ。
やっと泰も振り向いてくれたのかと思うと嬉しくて夜も眠れませんでした。
次の日は早起きしたのもあって、少し寝不足気味だったのは秘密です。
そう言えば、女の子は秘密があったほうが輝けると誰か言ってましたね。
誰でしたっけ?
学校へ到着した私が一目散に教室に向かうと泰は、すでに自分の席に座っていました。
他に私達以外の生徒はまだ来てないようで、2人だけの空間の完成です。
なんだかロマンティックですね。
私が扉を開けて教室に入ると、泰も私に気づいたようで椅子から立ち上がります。
荷物を置こうと、自分の席へ向かえば泰はこっちに来ました。
そして、私の前の席に後ろを向いて座ります。
いつも、そっけなくしてくる泰(それはそれで良い)でしたが、今日はなんだか違うみたいです。
こういう風に、自分から私の方へ来てくれるのも悪くないなと思いました。
というより、内心かなり舞い上がっていました。
ついに私の気持ちを受け入れてくれたのかと勘違いして……
その後はとりとめもない話をしました。
それは、好きな食べ物の話だったり、最近の趣味の話だったり。
ちなみに泰は、甘いものが好きだそうです。
その日々は数日続きました。
ある休み時間、気まぐれで泰をストーキング。もとい、調査していると泰が下駄箱の方に向かっていきました。
何をしているのかな?などと思い眺めていると、周りを気にしながらそわそわしています。
こ、これはもしかして、好きな子にラブレターを上げようとしているのではないだろうかと、感じた私は、自分が隠れているということも忘れ、飛び出して行きました。
「何してるんですか?」
私は、努めて冷静に問いかけます。
実際はかなり焦っていますが。
「いや、別に何も……」
泰はそう言っただけで何も教えてくれず、どこかへ立ち去ってしましました。
あの動揺、やはり私の予想があったっていたのかと思いました。
事実を確認するべく、泰の見ていたあたりの靴箱をあさります。
そして私は目にします。真鍮色にひかる何かを。
気になって、そっちを見てみると、加納美幸と書かれた下駄箱でした。
加納美幸と言えば私に絡んできた子ですね。
黄色くひかっていた正体は、画鋲です。
なるほどなと思いました。
泰が、こんな陰湿ないじめをするとは思えないので、きっと他の人でしょう。
ならば、今までの泰の行動にも納得が行きます。
感情に任せて、加納さんを怒ったは良いものの、それが原因で彼女が嫌がらせを受けているのに責任を感じていたのでしょう。
私からすれば加納美幸、彼女自身の自業自得と言わざる負えません。
しかし、泰はそうは思わなかったのでしょう。おせっかいな人ですね。
そこを好きになってしまったのかもしれませんが。
だとすればこれまで、朝早くから呼び出していたのは、彼女の机に悪戯されないための対策だったのでしょう。
なぜなら、私の前のいつも泰が座っている席は、加納さんの席だからです。
そうとも知らずに浮かれていた私は、恥ずかしいです。
本当のことを言うと、加納さんがいじめられているのを見るのはいい気味だと思います。
まあ、でも……泰がそうするのであれば、私もそれを見習うだけです。
私は、画鋲を回収すると1人教室に戻りました。




