57話 蒼井瑠璃じゃダメですか?2
それでは、高校時代の私は一体どのような私だったのでしょうか。
答えは単純明快、今までと変わらないただのぼっちです。
人はそんなに簡単に変われませんしね。
もし簡単に変われるのでしたら今頃みんな大統領になってます。
え?日本なら首相?そんなのは些細な問題なのでツッコマないでください。
そんなことはどうでも良いのです。
話を戻します。
高校でも相も変わらず、小説ばっかり書いてた私でした。
中学まででしたら、そういう奴で通っていたのですが、高校は違います。
みんな知らない人ばかりです。
彼らは自分を守るために群れようとします。
同時に合わせない者を排除しようとするのです。
その標的に選ばれたのが私、蒼井瑠璃でした。
その日もいつもと同じように小説を書いていました。
すると1人の女子、名前は何でしたっけ?その方に書いていた小説を取り上げられて、散々馬鹿にされました。
自分の創作物に対して何か言われるのは慣れていたつもりですが、やはり面と向かって言われるのはきついです。
そんなとき泰が助けてくれました。
言いたくても言えなかったことを言ってくれました。
とっても嬉しかったです。
自分のため、いいえ違いますね、自分のような作者たちのために本気で怒ってくれました。
泰自身も作者なので、ただ頭にきただけだったのかもしれませんが。
それでも良いのです。
そんな泰が私にはかっこよく映りました。
動画を撮っておいて寝る前に毎日鑑賞したかったくらいです。
そして気付いたら私は、泰に自分の気持ちを伝えてしまっていました。
後悔はしていません。だって本当のことですから。
人というのは包まれていない感情にさらされると、自分の心の殻もとけちゃうみたいです。
まあ結局、振られてしまいましたがまだ諦めません。
おっと、私としたことが、これだとあの出来事だけで泰を意識したみたいではありませんか。
順番がおかしくなりましたが続けましょう。
実は、私が泰を認知したのはこれが初めではないのです。
もちろん、クラスにいることは知っていましたよ。
いくら他人に関心がない私でもそれくらいは知っています。
ではいつから雪本泰という人間を、モブとしてではなく登場人物として認識したのでしょうか。
正解は、そう、皆さん知っての通り文化祭です。
文化祭で私なんかは、教室にいるのが気まずく、いろんな人がいないところを探して徘徊していました。
当日は、外部から人が来るのでひと気のないところを探すのは骨が折れました。
やっとのことで部室棟の隅までこれば、何とそこには文芸部の小説が売っていたのです。
これは運命ですね。
もちろんどうせ暇だったので買いましたよ。
すぐに読んでみました。
内容は結構ほのぼのとした感じでした。
日常系というのでしょうか?
私が気になったのは、内容なんかじゃありません。
内容に関しては、酷いものでした。
文章がぐちゃぐちゃで、とても人に見せられるようなものではありません。
構成も、詰めがあまいといった言葉がちょうど良い感じでした。
しかし、その小説には何故だか引かれるものがありました。
しばらく誰かの書いた小説なんて読んでなかった私ですが、これを読んだとき感じることがあったのです。
小説にはその人の中身が文章になって見えてきます。
私がその小説から見た作者は、小説のことが大好きだということがわかります。
それと、これが誰かに対して書かれていることもはっきりと。
稚拙な文章ながらも人の心を動かすには十分なものだったのです。
これは、私にはできないことです。
自分以外のために何かをできる人は多くはいません。
皆周りの目を気にしすぎるからです。
それを押しのけて、実行に移すためには強い動機が必要なのだと思います。
それを泰は持っていました。
私には無いものを持っていた彼は、輝いて見えました。
私が泰を意識し出したのは、ちょうどこの時からです。




