56話 蒼井瑠璃じゃダメですか?
泰に助けてもらってからというもの、毎日がキラキラと輝いて見えます。
今までは日常はとても退屈で、私にとって不要なものだったのです。
でも今は違います。
小説の中でしか生きる意味を見出せなかった私も、それ以外を楽しむことができるようになりました。
これはとっても喜ばしいことです。
過去の自分に自慢してやりたいくらいです。
勘違いされている方が居たらいけないので一応断っておきますが、泰を好きになったのはあの瞬間だけが理由ではありません。
まあ、確かに、あれが決定打になったことは認めざる負えない事実です。
でもしかしですよ、私をそんな安い女だとみくびらないでください。
私が、泰を好きになった理由を1から10までしっかりと教えてあげます。
でもそうですね。
その前に少し昔話をしましょう。
あれは私が今よりも小さく、ついでに胸も全く膨らんでいなかった小学生低学年の頃のお話です。
当時私は言うなれば不思議ちゃんでした。
部活の皆さんから言わせてみれば、今でも変わらないだろうといった感じでしょうが。
それはともあれ、とにかく私は他人と接点を持たない子だったのです。
良く言えば個性的、悪く言えば変人、キチガイ、奇人、いくらでも言い方はありますね。
まあ、皆様の好きな呼び方で読んでいただいて結構です。
そんな私は当然孤立することになりました。
いつも、どこでも、なにをするにしても1人でした。
寂しくなかったと言えば嘘になります。
でも、そんな私でも心の支えがあったのです。
それが、皆様お気づきの通り本です。
この頃はまだ絵本何かを読んでました。
本はいつも色々な体験をさせてくれます。
時にはヒーローに、時には怪盗に、時にはヒロインに……
様々な物語と出会う中で、自分でも作ってみたいと思うのには、さほど時間はかかりませんでした。
自分の好きなように書いて、書いて、書きまくりました。
その頃は他の人に読んでいただくということはなかったのですが、それでも書いているときは自分が主人公になったようで楽しかったのは間違えありません。
次第に書く量は増えていき、仕舞いには授業中にも書く始末。
それは今でも直っていませんが。
それからも毎日毎日まるで版画で写したような、変わらない日々を送り続けます。
書いては寝て、起きてまた書いて。
中学生になると、ネットに投稿をしてみたりなんかもしました。
驚いたことに評判は良く、何だかこんな自分でも認められたみたいで嬉しくなりました。
ただ、自分のために書くというスタンスは変わらぬままでしたが。
この頃の私は、実に多くのジャンルに手を出していました。
書かなかったジャンルはなかったくらいです。
西尾維新並の執筆スピードで書いていたという自負があります。
正直言って、今を除くとするならこの頃が一番楽しかったかもしれません。
それから少し経った頃、Web小説の伸びも最初とは比べ物にならないくらい伸びていました。
ちょっとした有名人です。
ですがしかし、有名になったからこそ自分を否定する人も出てきました。
もちろん、応援してくれる人の方が多いのは知っていました。
それでも、悪いものほど目立ちやすいのは誰もが知る事実です。
それは、私に関しても例外ではありません。
ツイッターをひらけば誰とも知らぬ人から誹謗中傷の嵐。
私は、これは誰かのために書いているわけではない。自分のために書いているのだ。
そう言い聞かせることによって、どうにか自分を保つことにしました。
実際、自分が面白かったらそれでよかったですし。
まあ、そんなことですから、ますます独りよがりな作品ばかり生み出すようになりました。
今思えば、他人に当てて書いた小説が批判されることを恐れての行動だったと思います。
そんな私だったので、中学時代友達と呼べる人はいませんでした。
でもそれでもよかったのです。
空想上の嘘の友達、嘘の物語、嘘の思い出。
それさえあれば生きていけました。
これが中学生までの私です。




