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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
変化する文芸部
53/216

53話 象を見ちゃダメですか?

「動物園といえば、象さんです〜」


 と言いながら、瑠璃(るり)は象の居る檻へと一直線に向かっていった。


 腕を引っ張られている弥久(みく)先輩は当然として、僕と皆越先輩もあとをついていった。



「本物はやっぱり大きいわね」


 弥久先輩は象を熱心に観察していた。


 瑠璃も必死に象を見ている。


「ですね。人間のとは比べ物になりません。ぞうさんって言われるくらいですからね」


 普通、動物を人間と比べ物にならない、などと言うだろうか。


 いや、確かに言うかもしれない。


 でもそれは状況次第だろう。


 普通象を見るとすればまず、どこを見るか。それは長い鼻だったり、高い頭だったり。


 しかし瑠璃はといえば、明らかに目線は下の方へ向いている。それも、後ろ足の方に。


 弥久先輩は気づいてないようだが、そこを見て大きいとか言うモノは1つしかないだろう。



「そうか?私はもっと大きいと思っていたんだが」


 瑠璃の下ネタに参加する、皆越先輩。弥久先輩を揶揄(からか)ってやろうという魂胆(こんたん)なのかもしれない。


 そうとも知らずに弥久先輩は、


「いや大きいでしょ?何見てるの」


「ナニ見てるって嫌ですね、分かってるじゃないですか。ぞうさんですよ」


「もしかして、弥久ホンモノのぞうさん見たことなかったのか?」


「あるに決まってるでしょ。幼稚園の頃おんなじ組の男子と見たもん」


 瑠璃と皆越先輩に脳内を汚されているせいでもう、そういうセリフにしか聞こえない。


 というか流石に不憫に思えてきたので耳打ちで教えてあげた。


「弥久先輩ちょっと耳貸してください」


 嫌そうにしながらも、「何?」と言って僕の口元に顔を寄せる弥久先輩。


「この2人がいっているのはですね・・・・・・ってことなんですよ」


「ーっ!?」


 途端に顔を赤らめる弥久先輩。


「なんで泰、()っちゃうんですか。これから面白くなりそうだったのにぃ」


 ふてくされる瑠璃。皆越先輩はといえば、こちらは割と満足そうにしていた。


「ばっ、バッカじゃないの!最低!泰を置いて2人とも次いこ」


 僕は弥久先輩にビンタをされると1人その場に取り残された。



「僕、何もしてないよな……」


 世の中には傍観者であったほうが良いこともあると、1つ勉強になった。




 取り残された僕が3人を必死に探すと、今度はサーバルキャットを見ていた。


 瑠璃は懲りずに、


「大きいですね〜」


 とまた言っている。


 弥久先輩は、学習したようで、


()()、大きいわね」


 と言っていた。主語は大切である。僕も今後主語を大切にしようと思う。



「うわ見てください泰!」


 瑠璃の指す方を見れば檻の上の部分から、餌であろう肉がぶら下げられていた。


 かなり高い位置にあり、瑠璃は疎か、僕ですら手を伸ばしたらギリギリ届くらいところだ。


 そんなところにある餌をサーバルキャットはいとも容易げに一飛びで捉えた。


「すごいですよ、あの、()()()()()()()。1m、2m余裕でジャンプしてますよ」


 どこかで聞いたことあるセリフを興奮げに言っていた。



 しばらくサーバルキャットの餌やりを見て次にいこうかとしていた時、突然大きな雷がなる。


 空を見上げてみれば、黒に近いねずみ色の怪しい雲が迫ってきていた。


 僕たちは、急いで動物園唯一の屋根付きの施設に駆け込む。


 すると同時、滝のような雨が降り出した。


「ギリギリだったな」


 皆越先輩の言う通り、もう十数秒遅れていたら濡れていたかもしれない。


 しかしそれよりもだ、


「今降ってもチケット割引にならないじゃん!」


 僕の心の叫びが漏れた。


 世の中同しようもないこともあるが、やるせない気持ちになることもあるのだ。


 そのことはもう諦めた。

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