52話 楽しみにしちゃダメですか?
バスが動物園に到着し、降りるとそこにはすでに皆越先輩と弥久先輩は来ていた。
「先輩たち早いですね」
「当然よ。待ち合わせ時間に余裕を持つのは」
「何時頃からいたんですか」
「私が泰君の来る15分前くらいでその時にはもう弥久は居たな」
すると今が30分前なので、少なくとも45分以上は前から居ることになる。
「もしかして、興奮して早く目が冷めたんですか」
「ち、違うに決まってるでしょ。遅刻しないためよ。あんたたちも、もっと早く来るべきだわ」
そんなことを言ってるが、僕たちですら十分に早いと思う。
大体まだ開園前なのに、何をして待てば良いのだろうか。
暇を持て余したので飲み物でも飲もうかと近くの自販機まで行く。
「瑠璃なんか飲むか」
「良いんですか!なら、どれにしようかな〜」
指を指しながら少しの間考えている瑠璃。
迷った末、選んだのはお汁粉だった。
なんというか、らしいなと思った。
僕は無難に缶コーヒーでも選んでおく。
飲み物を持って、2人が待ってるベンチまで戻る。
「結局、雨振らなかったですね」
せっかく雨が降ったら入園料が半額になるというのに、今日は雲ひとつない青空が広がっている。
これだと通常料金になってしまって、なんだか損した気分だ。
開園時間が近づくにつれて、まばらではあるが人が増えてきた。
「意外と皆こんな時間から並ぶのね」
「1番に来て並んでた人が何いってんですか」
「別にいいでしょ私のことは。私が言いたいのは、思ったより動物園って人気があるんだなってこと」
「そうですね〜。割と人気はあるとは思ってましたが、開園前に並ぶほどとは思っていませんでした」
「そういえば、瑠璃はなんで動物園に来たかったんだ」
瑠璃が行きたいと言ってから少し気になっていたことだ。
特別知りたいといったわけではなかったが、暇つぶしにはなるだろうと思って尋ねた。
「え〜、理由ですか?まあ単純に動物が好きっていうのと、今度動物園の回やるのでその取材ですかね」
概ね予想通りの答えが帰ってくる。
しかし、瑠璃は更に続ける。
「でも、1番大きな理由としては、みんなで楽しく遊びたかったからです」
僕たちにとびきりの笑顔を魅せてくる瑠璃。
いつも1人で小説を書いている彼女のことだ。きっと今までこうやって一緒にどこかへ遊びに行くということもなかったのだろう。
それが今は大勢とは言えないまでも少なくはない人数で動物園に来ている。
彼女にとっては、それがとても嬉しいことなのだろう。
僕は雨がふらなくてよかったと思う。
なぜなら、雨が降っていたらこの無邪気な笑顔も傘が邪魔をしてしまっていたかもしれないのだ。
しばらくして、入場ゲートの方がざわめきだす。
時間を見てみれば9時になっていた。
それぞれチケットを買い入園する。
瑠璃は「どこから行きましょうか!」と言うと、弥久先輩の手を取り奥の方へかけていった。




